エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

遥かなる旅路・天使の舞 第4部 明日への扉 第5章 誘惑の魔性花

第76節 本土軍の女王様

 アール将軍ことリファリウス、アーシェリスらは彼に事情を聴くため、応接室でその場を設けてもらった。
「そうだね、確かにエネアルド島――またの名をルシルメア大陸エネアルド行政区エネアルド島、 ルシルメアの政治が変わればエネアルドにも少なからず影響はあるってことか。 で、ラスナ先生が気にしていることって言うのは、恐らく、私が話した例の件についてだろうか。」
 ラスナの悩みの発端はすべてアールのせいだったらしい、 それについて、アーシェリスは激しく指摘した。
「ったく、オメーのせいだったのかよ、このトラブルメーカーが!」
 そう言われたアールは笑っていた。
「何を笑っていやがる? てか、その、ラスナ先生に吹き込んだことって一体なんだよ?」
 しかし、そんな折に遠くからアール将軍を呼ぶ声がしたので、アールは話を中断し、声の主と話をしていた。
「本土軍がやってきました!」
「えっ、もう来たの? 予定通りとは珍しい、明日は大雪が降るんじゃないかな?」

 その日のうちに、本土軍がやってくるという手はずだった、もちろん、例の座礁した船についての件である。 本土軍なんてタカビーだから、予定の時間よりも遅れてやってくるに違いない、そう思っていたアールだったが、 その読みは外れたらしい、珍しいことである。
 ガレアの隊員の多くは船が座礁した現場までやってきて本土軍の上陸を待っていた。 船は陸に完全に打ち上げられ、その場に放棄されている状態だった。
 なお、この船の積み荷については後日回収するということらしい。
「そうなのか、そんなことがあったのか――」
 アーシェリスとフェリオースは船の状態を見ながら夜明け前の救出劇について、ティレックスとユーシェリアから聞かされていた。
 そして、海の向こうから本土軍の揚陸艇が接岸すると、本土軍の兵隊たちが次々と上陸してきた。 だが、そんな中――本土軍の兵隊とは場違いな存在が現れ、周囲を圧倒させた。
「なっ、なんだあれ!?」
 ティレックスは驚いていた、驚いていたのは彼だけではなく、その場にいた全員が驚いていた。 その存在は、ボンデージを身にまとったセクシーな服装の女王様のような見た目の女性だった。
「うふふっ、さぁて、アール将軍っていうのはどこのどなたかしらぁん?」
 その口調は甘えたような猫なで声で、セクシーさを助長させていた。 それに対し、アール将軍は臆せず名乗り出た。
「そう、あんたがそのアール将軍なのね――うんうん、いいわねぇ! イケメンは大好きよ♪  なぁるほど、つまりはアール将軍様ってワケね!」
 女王様はアール将軍の顔を嘗め回すように眺めるとなんだか楽しそうにそう言っていた。 それに対してアール将軍は苦笑いしていた。
「ほら! 何をボサっとしているんだい! さっさとアタイらの子たちを回収するんだよ!」
 女王様は激しい口調でそう言いながら鞭を何度も地面に叩きつけると、 本土軍の隊員たちは慌てて49人の遺体を船に収容、そして、生存者も同時に乗船した。
「あっ! そうだ、そういえば――」
 アール将軍は思い出したかのように言うと、女王様が言った。
「うふふっ、なぁに? アタシの名前はマジェーラよん♪ ちゃぁんと覚えといてね、マイ・ダーリン★」
 そう言われたアールは一瞬固まった。だけど、取り合えず、臆せずに何とか話を続けた。
「その50人のほかにもう一人、女性がいるんだけれども、その人は!?」
 それについては本土側に予め情報を伝えたはずだったが、本土側の回答は一切なかった。 そして、この女王様も――
「はぁ? 女ぁ?  まぁったく、私という女がいながら他の女の話をするだなんて、アール将軍様も野暮ったいことするのねぇ。 女なんか知らないし、どーでもいいわぁ。 んでも、優しいダーリンのことだから――アナタの好きなようにすればいいんじゃないかしら?」
 アール将軍は呆気に取られていた。
「うふっ♪ まあそーゆーわけだからアール将軍様♪ じゃあねー♪ CHAO★」
 女王様はウインクをすると、そのまま調子よく乗船、本国へと戻っていった。
「な、なんだったんだあれは――」
 アーシェリスも流石に女王様の存在には引いていた。 一方のアールは何やら考えながら言った。
「簡単なことだよ、また面倒なやつが増えたってこと。」

 あの後、アールはティレックスとアーシェリスたちを先ほどの応接室へと促すとそのまま席を外し、 どこかへと行ってしまった。
 残されたティレックスやアーシェリスたちは話し合っていた。
「さっきの女は一体何だったのだろう? 本土軍の……司令官クラスの人間だろうな、一応部下に命令出していたしな」
 アーシェリスは考え込みながら言った。
「でも、こうなると、やつの悩んでいることもわかる気がするな――」
 フェリオースも考えながら言った、”やつ”とはリファリウスのことである。 それについて、ティレックスが付け加えるように言った。
「アルディアスの女性候補にルシルメアの女性候補、そして、先日の座礁船に乗っていた謎の女性と――」
 それに続けてユーシェリアが言った。
「……ディスタード本土軍の、多分司令官クラスの人と思われるあのマジェーラとかいう人――」
 そして、アーシェリスが言う。
「いきなり4人も話題の人物的な女性が同時に現れると、それはそれで妙な感じだな。 それこそ、ルシルメアの女性候補もいきなり出てきてなんのこっちゃという感じだ、 あっちの女性候補もなんだかいろいろとよくわかっていないようだからな。 面倒なことにならなければいいんだが――」
 流石のアーシェリスも、違和感だらけの女性陣台頭となればリファリウスにもんくは言うまい。
「女性が活躍するというのなら私としては大賛成……だけど、風向きは変な方に行ってほしくないな――」
 最後に、ユーシェリアがそう呟くと、4人はため息をついた。嫌な予感がする4人だった。奇しくもこちらも4人か。

 アールは助けた女性のもとへとやってきた。
「おや? もしかしてそれは、ラミキュリアさんの服?」
 その女性は、ラミキュリアが来ているような可愛らしく、そして露出の多いセクシーな服装をしていた。
「ど、どうですか、私、似合いますか……?」
 女性は顔を真っ赤にしながら恥ずかしそうにそう言うと、アールは答えた。
「うん! とっても似合うよ! キミが着るとお姫様って感じがするね!」
 一方でラミキュリアは女王様と呼ぶに近い装いだった。 その点については、ラミキュリアとしてはアールに言われる分には全く異存はないのだが。 しかし、胸の大きさはこちらの女性も負けてはおらず、そこそこのポテンシャルの持ち主だった。
「どうしても私の着ている服が着てみたいっていうものですから、差し上げたのですよ♪」
 ラミキュリアは楽しそうにそう言った。