一方でアールたち、何人かの遺体を外に運び出していると、
なんと、生存者を一名発見した、それは――
「コンテナ室?」
そこには大量のコンテナが積み込んであった。
「将軍、この中に人がいるのですか?」
アールは魔法の力を使い、生命反応のある場所を特定して探していたのだった。
「うーん、間違いなさそうだね、こっちのほうから反応があるからね。
もしかしたら、船が沈むことをいち早く察知してコンテナの中に逃げ込んだのかもしれない。
コンテナ内なら浸水するまでにある程度時間がかかる、そう判断したんだろうね。」
しかし、それはそれでコンテナの中にしばらく閉じ込められるリスクがある、
まさにそれほどの事態が起きたということだとも言えるかもしれない。
しかし、コンテナはいくつかあり、大半が船の傾きによってコンテナを開けるまでが一苦労、
どうしたもんかと隊員たちは悩んでいた。
そんな中、アールはコンテナの特定ができたようだ。だがしかし、
「残念だけど、該当のコンテナは一番下のコンテナらしいね――」
ということである。そのコンテナ、船の傾きにより完全に水の中に沈んでおり、
さらに傾きによって他のコンテナによって押し込められているものだった。
「まさか、あの中に!?」
隊員たちが驚きながらそう言うと、アールは言った。
「これは早いところ助けないと手遅れになるぞ。そうなる前に何とかしないと――」
すると、隊員の一人が言った。
「わかりました、では待ってください、今すぐ重機を――」
すると、アールはおもむろにお得意の”兵器”を取り出しながら言った。
「重機なんかなくたってこいつがあれば問題ない、さてと――」
それに対し、エイジが言った。
「でも、対象は水の中、それなのにお前、平気なのか?
だいたいそれでこじ開けたとしても、コンテナの中に水が入り込んで――」
すると、アールは自らに空気の膜を纏わせながら言った。
「早いところさっさと助けようか。」
アールがそのコンテナの上に立つと、
そのコンテナの上部にも浸水しないように空気膜が覆われた。
「……便利な能力だな」
エイジは愚痴っぽく言った。
それからアールはコンテナの上から姿を消すと、
再びコンテナの上に戻ってきたときにはその腕に女性を抱えていた。
女性は気を失い、アールの腕の中でうなだれていた。
「さてと、これで生存者は全員ってところだな。
あとはとりあえず、ツイード君らに任せよう。」
そう言いながら、アールは船から出て行った。
「あれ? 女? 本土軍の船の中に女?」
エイジはそう言って疑問に思いつつ、アールに続いて船から出て行った。
そして、ツイードらはそのまま作業を継続、恐らく、生存者はいないと思われるが、
それでも、救出活動を続けていた。
「あれ? 女の人?」
船の外に出て、アールがお姫様抱っこしていた女性を見ながらユーシェリアは驚きながら言った。
「どうやらそうらしいね。
私の記憶だと、本土軍の女性隊員だった人はほぼほぼガレアに移籍しているハズなんだけれども、
なんでこんなところにいるんだろう?」
それに対してユーシェリアも頷きながら言った。
「捕虜ですかね?」
確かに捕虜だったらありうるかもしれない、アールはそう考えた。
「いずれにせよ、本土軍側からのアクションを待つだけだね。
それにさっき、1人の生存者を助けたって聞いたから、後で聞いてみようと思う。」
その日の昼、朝が早かったためか、何人かの隊員は疲れ果て、ぐったりとていた。
しかし、救出活動はまだ続いている。
「乗船名簿の通りだと、乗組員は50名のハズだけど――」
アールは船の中で見つけたという乗船名簿を確認しながら言った、だがしかし――
「残念ながら、どこにも女性らしき人物の名前が記録されていない、あれは誰だったのだろうか。」
本当に捕虜か何かかもしれない、アールはそう思った。
「アール将軍様はお休みにならないのですか?」
ラミキュリアが優しくそう言うと、アールは答えた。
「そういうラミキュリアさんこそ。
私は――落ち着いてらんないのでね、あの女性のことも気になるし、
それに、名簿の50名全員を助けられる様を見届けたいしね――」
「私は、大丈夫ですよ、この身体になってからというものの、
少なくとも1日ぐらいは休まなくたって平気になってしまっていますからね。
だから――今の救出班が出てきたら、今度は私が――」
ラミキュリアはその覚悟していた、だが――
「アール、50人全員を確認したぞ。
近場に5人ぐらい海に投げ出されて溺死していたらしい」
報告に来たのはガレア兵ではなくティレックスだった。
「わざわざ悪いね、こんなことまでしてもらって。」
「いいって、海難救助は何度かしたこともあるし、それこそ、徹夜の作業なんて言うのもザラだ、
まあ、夜の海は危ないから徹夜って言ってもせいぜい見張っている程度が関の山なんだけどな」
さらにティレックスは続けた。
「それより、女性の身元は判明したのか? 名簿にはない51人目なんだろ?」
それに補足するようにユーシェリアが言った。
「他の50人は全員名札と名簿が一致していて――やっぱりあの人の名前だけはどこにもないみたいですね――」
そう言われたアール、どういうことだろうと悩んでいた。
「ラミキュリアさん、本土軍からの返事は?」
「いえ、それがまったくアクションがないのです――」
完全に身元不明、本当にどうにもならなかった。