エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

遥かなる旅路・天使の舞 第3部 存在していた物語 第4章 苦悩する者

第66節 女の決意

 その場はいったん落ち着き、2人は部屋の中へと入って話をしていた。
「リオメイラの女王様になったっていうんでしょ? それはむしろ、女として誇るべきところじゃない?  だって、男たちを使役して勝ち取ったわけじゃない? むしろかっこいい女よね!」
 そういわれるが、フラウディアは遠慮がちだった。
「私だってそうよ、ユーラルの捕虜の男たち全員に身体を奪われたんだから。 それでやったことはあんたと同じ――仕方がないわよ、私たちは生物兵器、そうするように作られた存在なんだから。 だからいつしか、生物兵器を卒業して本物になるために希望を捨てないように生きようと思ったワケ」
 なんだか、フロレンティーナは前向きだった。それには理由があったようだ。
「最初はね、私もフラウディアみたいに自暴自棄になっていたことがあったわ。 でも、そんな私に手を差し伸べてくれる人がいてね――」
 それは、フロレンティーナと一緒に現地に赴くことになったドズアーノだという。
「なんかね、彼、昔は傭兵だったらしく、あちこちに出向いていたみたいなのよ。 それで、いろいろなものを見てきたからなのかな、こんな私のことでも結構気に入ってくれたのよ」
 そう、2人は男女の関係、付き合うことになったのである。 しかし当然ながら、フロレンティーナもフラウディア同様に”特定エリート女人プロジェクト”の成績優秀者であり、 つまりは男なのである。
「まあ、年齢はずいぶんと離れているんだけどさ、それでもあいつは理解が良くてさ、 女性としての英才教育を受けているんだったら女でいいんじゃないか、 それにお前は、俺が見てきたどの女性よりも女性らしい素敵な女性だ。 将来女性を希望するんだったら一緒に結婚しないかって、そこまで言われたのよね――」
 なんとも素敵なお話、フラウディアはときめいた。だが――
「確かに、考え方も素敵だし、傭兵らしく、物事はすっぱりと決めるタイプだし、 まあまあイイ男だった――歳は父親ぐらい離れているけど。 でも――ちょっと暴力的なところがね、殴られたこともたまにはあったけれども、 それでもまだちょっとは許せた、一緒になればそのうち変わるかなって。 だけど――正直なところ、人間的には完全にぶっ壊れていて、はっきり言ってサイテーな男だったわね」
 それは――フラウディアとしても残念でならない話だった。
「まあでも、あいつのプライベートを見なければ、一緒にいるうちはそれなりに楽しかったし、 ユーラルにいる間だけの現地妻という役割だけにして、お役御免になったら縁を切ってやろうかなって思って戻ってきたのよ」
 戻ってきたって、まさか――フラウディアはそう聞くと、彼女は答えた。
「ええそう、実はお役御免になったってワケ。今後はあなたと一緒にいることになるわね――」
 それはフラウディアにとってはとてもうれしい話だった、彼女と一緒だなんて楽しいに決まっている。 でも、今の任務はつらい、それだけが気がかりだった。
「辛くてもがんばろ! 本物になるためですもの、ここでめげてばかりじゃいられないでしょ!?」
 それもそうである、そのためにここまでつらい思いをしてきたようなものだから。でも、それはお互い様だった。
「お姉様もね!」
 そう言われたフロレンティーナはお茶を飲みながら考え、そして言った。
「にしてもさ、あの新しいエロイセーラー服、ちょっとひどすぎない?  正直、あれがなければなって思うんだけどさ――」
 えっ、お姉様も着たんだ、あんな服――そう言うと、フロレンティーナは言う。
「着たわよ。でも、フラウディアも着ているんだと思って我慢したわよ。 ま、でも、人前に出てみせるのはイヤだけど、そうじゃなければ全然いいかな――なんて思ってさ、 現地じゃあ休みの間も割とずっとあんな恰好でいたわね――」
 そうなの!? フラウディアは訊き返すと、フロレンティーナは答えた。
「ええ。ずっと着るのは正直勘弁してほしいけど、たまに着てみるのは全然悪くないかな?  ――見てみたい?」
 そう言われると、フラウディアは――
「ちょっと見てみたいかも――」
 ちょっと興味があった。それに対し、フロレンティーナは「その時にね♪」と、 得意げに言って返した、フラウディアは楽しみにしていた。
 でも――そういえば、フラウディアとしては気になっていることがあった、それは――
「で、でもそういえば、お姉様の配属ってどうなるのです? 確かゲイスティール様って先日、不慮の事故で亡くなられたって――」
 それに対し、フロレンティーナはどういうわけか周囲を見渡すと、ひそひそ話でフラウディアに話をした。
「それなんだけどさ、本当は不慮の事故じゃなくて、私が殺しちゃったのよね――」
 なんと! それはショッキングな話だった。