休暇は終わり、再び任務に就くことに。
しかし、その任務に苦はなかった、むしろ、楽しいことしかなかったのである。
その日は休暇に買った、例のミニスカートコーデに身を包み、再びルシルメアへと繰り出したのである、
あの女性が放ついい香りのオーラ、あれが手掛かりになるんじゃないかと思った。
とはいえ、直接話をするのも気が引ける、フラウディアはルシルメアにある図書館に赴いて調べものをしていた。
すると、フラウディアはそこで気になる内容を見つけた。
そして次の日、あのエロい服装に着替えてローブを羽織ると、ネストレールに話をした。
「なるほど、誘惑魔法か、言われてみれば確かに、そういうものがあると聞いたことがあるな。
だが、それはラミア族の技だったハズ、ディストラード人の、ましてや、お前にそれが使えるのか?」
フラウディアは答えた。
「私にはわかりませんが、ラミア族以外の者でも使えるという記録はあるようです」
それに対し、ネストレールは考えながら言った。
「なるほど、ラミア族かどうかは関係なく、とりあえずやってみなければわからないということか。
そういうことならちょうどよい、実はラミア族については心当たりがあるのだ」
心当たり? フラウディアは訊くとネストレールは答えた。
「現在ユーラルを進軍しているのは知っておろう、で、そのユーラルにラミア族が発見されたのだ」
だが、ネストレールの話とは裏腹に、側近に確認したところ、
ユーラルの件はそれ以降ラミア族云々の話に発展せず、本土軍は苦戦を強いられているそうだ。
「愚かな――これでは我らが野望の話も夢のまた夢、何をやっておるのか――」
それから数日後、フラウディアは休暇を与えられた。
そして、そのタイミングでとある人物が彼女の元へと訪ねてくるというので、
彼女は自宅で待っていた。
自宅はディスタード帝国本土島の領内で、帝国軍従事者のエリートクラスの者のみが住を許される区画にある。
そして、その人物がフラウディアの家の前へとやってきて、彼女の家のチャイムを鳴らした。
「フローラお姉様、お久しぶりです! さあどうぞ、中へ!」
チャイムが鳴ると同時に玄関から飛び出てきたフラウディア、
それに対して訪問者はにっこりとした笑顔で答えた。
「相変わらずねフラウディア、とりあえず、元気そうにしていてよかったわ」
訪問者はフローラこと、フロレンティーナという名の女性、
身長が10cm程度離れていて、年齢もいくらか上である彼女はまさにフラウディアにとっては姉のような存在である。
言っても、それだけで姉のような存在になったわけではないのだが。
流石はエリートの住まう区画というだけあって、与えられたところはそれなりにいい暮らしのできる部屋である。
そんな家の中の様子を見ながらフロレンティーナは言った。
「いいところに住んでるじゃないの」
フラウディアは答えた。
「何を言っているのですか、お姉様の家は隣でしょう?」
彼女らの住居はアパートである。
で、フロレンティーナの部屋は隣の部屋で、同じ間取りのハズだが――
「ここに越してきてから全然住んでいないんだもの。
第一、荷物もまだ全然ほどいていない状態、一晩明かしたことさえないわ」
そういえばそうだった、彼女はこの家に住むことが決まったと同時に配属も決まったが、
その際直ぐに現場へと赴くことになったため、家の間取りすら知らないのである。
「それはともかく、フラウディアったら、相変わらずすごく可愛い恰好をしているわね。
そのミニスカート、すごい似合ってるわよ」
フラウディアの服装はもちろん、あの時にルシルメアで購入したあのコーデである。
お姉様にまで言われたフラウディア、とてもうれしかった。
対して、フロレンティーナの服装は落ち着いた雰囲気の大人のお姉さんのような印象だった。
お互いに適当なところでくつろぎつつ、フラウディアから話を切り出した。
「それで、いつまでここにいられるんです?」
フロレンティーナはため息をつきながら答えた。
「それが、実は今日だけなのよ。
今夜、ユーラルに向けて出発する船で発つことになってる。
ゴレイアスから帰ってきたばかりだというのに……休む暇も与えてくれないのよね」
えっ、ゴレイアスってあのゴレイアス? えっ、ユーラルってあのユーラル? フラウディアは訊いた。
「そうそう、グライム様が失敗したっていうアレよ。
私はただの密偵、ゴレイアスを探るように指示されていたんだけど、
なんか別の司令官様が引き取るとかいうことで、ゲイスティール様から帰還命令を下されたのよ。
でもまさか、それを引き取ったのがフラウディアたちだったなんてね」
他方、フロレンティーナはユーラルについて話をした。
「エルノウズが苦戦しているって言うから、私とドズアーノ様が加わることになったのよ。
もっとも、元々そういう布陣で進軍する予定だったってゲイスティール様が言っていたんだけど、
でもまさか、私が加わることになるなんて思ってもみなかったわ。
だって、他にいるじゃない?
フラウディアはネストレール様もとい、ベイダ・ゲナ様直属だからともかく、マジェーラとかエリューネルとかさ」
それに対してフラウディアは言う。
「エリューネルはグライム様が死刑になった後、私らのところに来たみたいだよ。
ネストレール様の話だと、なんか、超重要任務に就いたと言っていたけれども……。
マジェーラはまた東の国のどこかの交戦部隊に所属していて、あちこち抑え込むために船の上みたい」
フロレンティーナは感心していた。
「へえ、なんだかんだで結構みんな忙しくしているのね。
それに――マジェーラはまた船の上か……」
フロレンティーナは暗い表情でそう呟いた。どうしたのだろう? フラウディアは訊いた。
「マジェーラのこと知ってる? あの子、ずいぶんと酷いことされたみたいよ――」
酷いって!? フラウディアは訊いた。
「フラウディアにはショックを受けると思うから本当は言いたくなかったけれども、
あなたのこれからの任務にも関わってくると思うから、包み隠さず言うわね」
フラウディアは息を呑んだ。そして、フロレンティーナは恐る恐る口を開いた。
「あの子、船の上で船室のベッドの上に押し込まれて犯されたのよ」
えっ、そんなことって!? フラウディアは驚きながら聞いた。
「で、でも私たちって、犯されたって言っても――」
「私たちがどんな存在だろうと関係ないわよ。
だって、ここがどういうところだか知っているでしょ?
周りは男ばかり、たとえ私たちがなんだろうと、女やってる以上男にとっては数少ない極上のエサでしかないのよ。
あなたも身に覚えはあるでしょ?」
言われてみれば――フラウディアの制服はあのエロいセーラー服姿である。
彼女はそれをフロレンティーナに見せた。
「それ、私も同じもの着させられてる。
まったく、あんたもまたずいぶんとヒドイものを着させられたのね。
尻も胸も汚い手で触られ慣れたとはいえ、それでも本当に嫌だわ。
あと、スカートめくりも勘弁して欲しいわ」
そっ、そんなことされるんだ――フラウディアは絶句した。
「そんなことして、その人は罰を受けないんですか?」
フロレンティーナは言った。
「もちろん受けるけれども、ほとんどの場合はなかったことにされるのよ。
私なんかが特にそうね、お前はそういう風に育てられた生物兵器なんだから触られるのが当然だ、
これはただの兵器の動作チェックだなんて言われて諦めるしかないのよ」
さらに酷い話が――
「マジェーラを犯した男もそうよ、あれも兵器の動作チェックにあたる行為なんですって、信じられる!?」
フラウディアは絶句した。
「あなたも覚悟した方がいいわよ、あのロシュムを色で落とせっていう指令なんでしょ?
つまりはそのためにいろいろとやらされるハズだから――まあ、その、月並みだけど、粘り強く生きるのよ?
……お互い様なんだけどね――」