この世で最も美しくて麗しくて最高にセクシーで魅惑のパーフェクト・ボディな女神プリシラ様が君臨するまでのエピソード。
「しつこい女だ、何故私に会いたがる? できればこれを最後にしてほしい、私もこう見えて忙しい身なのでな」
これは”ネームレス”の一団、無国籍小隊プリシェリアが引き揚げてから1~2か月後ぐらいの話である。
プリシラ個人で熱心にガリアスにアポを取っており、ずっと拒否し続けていたガリアスだったが、
あまりのしつこさに仕方がなく設けた場である。
「ガリアスさ……いえ! ガリアス様! 私は感激したのです! なんて素晴らしいお方なのかと!」
そう、プリシラがクラウディアス連合軍で考えている作戦であるガリアス暗殺を利用してガリアスに取り繕おうと彼の元へと訪れていたのである。
「ガリアス様は素晴らしい力を持ちつつ、そしてその力で世界支配を成されるのですね!」
と、プリシラは目をキラキラとさせていた。
「素晴らしい力? ふん、そう考えるやつは多いがな――」
当然、そんなプリシラに対してガリアスは彼女を怪しんでいた。
力があるということはそれを利用する輩もいるからだ、そんなことを言うやつを素直に信用するはずもなく。
それに、プリシラもクラウディアス連合軍の一員ではないのかと怪しんでいた。すると――
「私をあの人たちと一緒にしないでください。
そもそも私は”ネームレス”であるというだけの理由であの人たちと一時的に行動を共にしていただけです。
私の名前はプリシラ、無国籍国プリシェリアは私の国であり、あの人たちとは関係ありません。
しかし、クラウディアス連合軍は直接あなた方とコンタクトをとることを恐れ、私の国を利用したのです」
さらにプリシラは続ける。
「そう、私の国は利用されただけ――あなたの言うようにクラウディアス連合軍はやはり恐るべき存在です。
プリシェリアは今ではほとんど国として成り立っておらず、完全に廃れています。
そんな国ですら利用しようというクラウディアス連合軍、魂胆が見えるようではありませんか?」
そう言われるとガリアスも考えた。
そしてプリシラは、自分が得てきた情報のすべてをガリアスに――
「貴様、本気か?
まあいい、そこまで情報をもらえるというのであればありがたく頂戴しよう。
そうか、”希少価値のリファリウス”とやらはガレアのアール将軍であり、
クラウディアスの特別執行官とやらもやっているのか――」
プリシラの裏切り行為、自分が知っている限りのクラウディアス連合軍の内情を全部リークしてしまっていた。
「ほう、”希少価値のリファリウス”は”フェニクシアの孤児”だというのか。
つまりは”フェニクシアの孤児”は”ネームレス”と同列――つまりは私やお前と同じということだな?」
「ええ、ご明察ですわ」
ガリアスはニヤっとしていた。
「それでなんだ、お前の狙いは何だ?」
「あなたは利用されることはお嫌いかと存じます。ですが、それでも私はあなたを利用したいのです」
「ふん、またはっきりというもんだな、いいだろう。で、どう利用するのだ?」
「ええ、あなたの野望はもちろん世界征服、だから私もあなたと一緒に世界征服がしたいのですわ♪」
そう、プリシラは魔女としての本性をあらわにしたのである。
「話は往々にして分かった。
つまり私を倒すため、かの連合軍は意気込んでおり、お前はそのために遣わされたスパイだな?」
彼女はその話までリークしてしまっていた。
「ええ、そうですわ。ですが、もはやそうはいかないわ。
ガリアス様は理想のとても高いお方――私はガリアス様を選ぶことにしたのよ」
だが、ガリアスは――
「悪いが雑魚に興味はない。
私と共に行くのであればそれ相応の力を持っていてもらわなくては困る、足手まといはかえって迷惑だからな。
わかるだろう? この前、たとえ”ネームレス”が相手でもあのような結果、ましてやお前だって――」
するとなんと、ガリアスの背後から兵士が襲い掛かってきた!
ガリアスは間一髪をかわすと、そこには5人の兵隊たちがガリアスめがけて襲い掛かっていた!
「ガリアス! 死ねっ!」
ガリアスは攻撃をスイスイと交わしていく――が、いったい、こいつらはどうしてこの私に切りつけているのか疑問に思っていた。
そして、考えているうちに別の兵隊がやってきて、ガリアスの喉に剣の切っ先を向けた……
「これはいったい――」
「うふふっ、もういいわ、そこまでにしておきなさい」
プリシラが嬉しそうにそう言うと、兵隊たちはガリアスを攻撃するのをやめた。
「その状態から避けようと思えばよけられるのではなくって?」
プリシラがそう言うとガリアスは目の前の剣に手を当て、そのまま押し返すように退けていた。
「動作が止まるのがわかったから動かなかっただけだ。だがそれにしても、今のは一体――」
するとプリシラは妖艶なオーラを纏いながら話し続けた。
「うふふふふっ、今のは誘惑魔法――
男たちを意のままに操り、私のための生きる屍を作り出すことこそが私の能力。
男であれば、それがたとえ敵であっても敵でないのも同然――いいえ、私のために尽くす従順なる下僕となるのよ。
そう、私の美しさにかなうものなんていやしないのだから。
だから私は、世界征服をもくろむあなたと一緒になるの。
そして私もこの世界を支配するの、この世界の女帝として、女神として――」
ガリアスはその様子に呆気に取られていた。
ガリアス自身はプリシラのその能力に対しては別になんとも思っておらず、プリシラ自身にも特にそこまで関心はなかった。
というのもやはりと言うべきか、ガリアスには誘惑魔法の効果がないようで、それについてはプリシラ自身も確認済み、
無国籍国としてコンタクトした通りだがガリアスは狂人、恐らくその狂人たらしめる何かしらの要素が彼を満たしているのだろう、
その点についてはプリシラ自身が恐怖している点である。
だが、それとは別にガリアスは異性を従えるプリシラの能力には関心を示していた、
なるほど、そういうことなら――この女にエダルニウスの男兵士を与え、事をこなしてみるのがいいのではないだろうか、と。
それにこの女は”ネームレス”、誘惑魔法で異性を従える能力を持つというのであれば力の大小など関係ない。
そう、今のデモンストレーション的なものを見るに、その気になれば国一つを奪える能力を持っているのだからこれはこれでありだ、
つまりはガリアスは強力なカードを手に入れたと考えていたのである。
ということでガリアスとプリシラの利害は一致し、力を組むことで話が付いた。
以後、プリシラはエダルニウス軍の司令官となるのと同時にその拠点であるエダルニアを根城とすることにした。
こうしてプリシラはガリアス側に寝返ることになった。
協力関係を結び、ガレアのスパイである立場を利用する逆スパイとしてリファリウスたちと定期的に連絡している中で様々な情報をガリアスに漏らし、
そしてエダルニウス軍の作戦を遂行していった。
そう、ガリアスの指令により、実際にプリシラの魅惑の力を用いて、
小さな国だが国1つ、そして2つと次々と侵略しているのである、
それについてはすでにクラウディアス連合国側でも察知していることだったがまさかプリシラが寝返ったなどとは夢にも思うまい。
そしてついに――プリシラはあの作戦のことをガリアスに漏らした――。
「うふふっ、ガリアス様、そろそろあいつらがやってくるわ」
「リファリウスか、いよいよヤツが来るのだな。それで、私は何をすればいい?」
プリシラは自分の作戦の内容を話すと、ガリアスはそれに協力すると言った。作戦については御覧の通りである――
「うふっ、やったわ! すごくうれしいわ! ガリアス様、ありがとう♪」
プリシラは楽しそうに言った。
「ふん、楽しそうだな。まあいい、ヤツについてはお前の好きなようにするといい。
お前の下僕だというのなら好きなように回収するといい。
確かに、ヤツをこちらの手駒とできるのであればそれに越したことはない。
プリシラよ、そうと決まったらヤツを確実に回収するのだ――」
ガリアスはすでにプリシラを信用していた。
そしてガレア軍の作戦は決行され、魔女プリシラの裏切りによりエダルニウス軍の勝利となった。