エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

悠かなる旅路・精霊の舞 第5部 女神の輪舞曲 第8章 魔女の戯曲

第135節 魔女の策

 剣同士がぶつかり合っている戦いのハズだったが、プリシラの得物は鞭へと変わっていた。 それによる”女神のおしおき”に立ち向かうリファリウス。 プリシラの野望はこの世界の女神になること――それはそれはなんとも言い難い危険な野望である。
 それにしても”女神のおしおき”を受けるリファリウスの様子がおかしい。 いや、いつものリファリウスのことならそれもわかる、フェミストたる女性に優しい気質の彼だからこそ、 女性に手を挙げるとか剣を向けるだなんていうことは絶対に許せないだろう。 それにプリシラはリファリウスにとっては親友――だから戸惑いもあることはわかる。
 だが、今回は完全にプリシラに押し込まれていた。 それがたとえ女性相手でも敵とあらば今まで白黒つけてきていたであろうリファリウスだが、 今はプリシラに押し込まれている。
「プリシラさん、こんなことはやめるんだ――」
 と、リファリウスは何故かその場に膝をついていた。 それに対してアーシェリス、うずくまりながら訴えるように叫んだ――
「何してるんだこの優男! いい加減にしやがれ!  手を抜いているようだが目の前の女は敵なんだろ! さっさとやれ!」
 だが、プリシラが――
「あーあー、うるさいわねぇ、そもそもこの男は私と戦う気は全くないのよ♪」
 なっ!? どういうことだ!? プリシラと敵対する意思がないって!?  すると、プリシラはさらにリファリウスに”女神のおしおき”を浴びせた――
「ほらほらほらぁ♪ リファ様、あんたがしたかったことはなぁに?  私とこのまま戦いをし続けたいの?  本当は私の身体をじっと眺めて鼻の下を伸ばしていたいだけなんでしょ♪  しかも……私のスカートがめくれ上がるのを期待していたりして?」
 そういえば、男が妖魔の女から”女神のおしおき”なぞ食らおうものなら、 その男は快楽を覚えるのだとか……。 確かに、リファリウスは”女神のおしおき”を受けて以降、 プリシラには攻撃しているようなそぶりこそ見せるが実際には全く攻撃を仕掛けていないような気がしないでもなかった。 それどころか”女神のおしおき”を受けたいという行動がにじみ出ており、避けようとすらしなていないような…… まさか、リファリウスに限ってそんな……!
「まさか……!? イヤン♥ リファ様のエッチ♥  私の生まれたままの姿が見たいだなんて♥  ウフフ、正直に言ったら……まずはご褒美をあげちゃおうかしらぁん♪」
 すると……
「プリシラさん……いえ、女神プリシラ様! 私は女神プリシラ様の御身をじっと眺めていたい!  素晴らしい身体を! めくれ上がるスカートを! できることなら女神プリシラ様の生まれたままのお姿をこの目で!」
 な、なんだって!?
「あはははははは! あんたみたいのがそれだけで満足できるハズないでしょうがこの……ドスケベ野郎め♪  本当は私の胸を触りたいしスカートはめくってみたいし、 それに……生まれたままのお姿にいろんなイヤラシイことをしてみたいんでしょうが♪  ほら、言ってみなさいよ! この……ド変態野郎め♪」
「そうだ! 女神プリシラ様の身体に……ああ……っ!  女神プリシラ様にイヤラシイことをしてみたい! 私はド変態野郎だ!」
 もはや滅茶苦茶……完全にプリシラの言いなりになってしまっている……。
「あははっ! 良く言えたわねぇ! 望み通りご褒美をあげちゃうわぁん♥」
 と、プリシラはそう言いつつ、四つん這いになっているリファリウスの背の上に足を乗せると”女神のおしおき”を――
「リファリウス! しっかりするんだ!  お前、フラウディアさんやフロレンティーナさんの時だって全然こういうのが効くようなやつじゃなかったじゃないか!  正気に戻るんだ!」
 と、ティレックスは必死に言うとプリシラは嫌そうに答えた。
「失礼ね、女神であるこの私とその辺の廃棄物とを比べんじゃないわよ。 大体ねぇ、リファリウス様にとってこの私の存在はこの世のどんなものよりも……自分の命よりも大切なものなのよ。 でしょ? リファリウス様♥」
 そんなリファリウスにプリシラはなおも”女神のおしおき”を――
「はい、女神プリシラ様……。すべては女神プリシラ様の仰せのままに……」
 なっ、なんてこった……

「うふっ♥ 遊びはここまでにしようかしら――」
 すると、リファリウスはプリシラの綺麗な脚の前に跪いていた。 その脚の向こうには一枚の短いスカートの布を隔て、邪悪な笑みを浮かべている女の顔が。
「ウフフッ、リファリウス、あなたはこの私の下僕としてこれまでよくやってきたわ。 やっぱりあなたはこの私の下僕の中でも最高の下僕…… そんなあなたに女神の下僕に最もふさわしい者としての望みを叶えてあげるわ……」
 プリシラはそう色っぽく囁いた。するとリファリウス……
「私の望み……女神プリシラ様……否、 この世で最も美しくて麗しくて最高にセクシーで魅惑のパーフェクト・ボディな女神プリシラ様!  以後、私はこの世で最も美しくて麗しくて最高にセクシーで魅惑のパーフェクト・ボディな女神プリシラ様の従順なる下僕として未来永劫お仕えさせていただくことにします!  すべてはこの世で最も美しくて麗しくて最高にセクシーで魅惑のパーフェクト・ボディな女神プリシラ様の意のままに!  さあ――この私めにこの世で最も美しくて麗しくて最高にセクシーで魅惑のパーフェクト・ボディな女神プリシラ様の従順なる下僕としての名をお与えください!  どうか……どうか!」
 するとプリシラは邪悪な笑みで答えた。
「ウフフッ、合格よ。 そしたらもうリファリウスなんて下品な名前は要らないわねぇ?  あなたはこれからこの私の従順なる下僕として私のために尽くすのだから。 そして、その下僕である証としての名をその身に刻みなさい。 さあ、目覚めなさい――女神プリシラ様の従順なる下僕……レムレス――」
 え? レムレスって、あのレムレス?
「レムレス!? プリシラにいつも付き従っているとかいう、あいつのことじゃないのか!?」
 と、フェリオースが言った。 彼自身は面識がほんの僅かでしかないが、 いつもいつも「麗しき女神プリシラ様の意のままに」とか言ってプリシラに付き従っているのが印象的だった。
「ウフフッ、今から私の美しさの虜にして私のための従順なる下僕として生きることを許可するわ。 さあ返事しなさいな、レ・ム・レ・ス♥」
 するとリファリウスは頭を抱えて悶え始めた!
「う、くっ、わ、私は、私はっ――ああっ! う、あっ、うああああっ!」
 そんなまさか!
「リファリウス! 自分を強く保つんだ! お前はお前だ! 誰でもない! こんなところで負けてどうするんだ!」
 ティレックスは必死にリファリウスに強く呼びかけた。しかし――
「そんなこと言ったってムダに決まってるでしょ。だって、彼は既に私の下僕―― この私の喉のみが奏でられる麗しい音色だけが彼が唯一聞き取ることができる音。 今の彼は自分がリファリウスであることを恥じていてひどく後悔しているだけ―― この私の美貌・美声・美香・美触・美味・美感……私が持てるもののみが彼のすべてであり、 私がいいと言ったもの以外は受け付けないのよ……ウフフフフフフ――♥」
 そっ……そんな――