エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

悠かなる旅路・精霊の舞 第5部 女神の輪舞曲 第8章 魔女の戯曲

第132節 魅惑の魔女

 まもなくして、エダルニアの領海内に侵入することになる。 今回はアポなしなのだが、領海侵犯しても巡視艇もなければ誰も来なかった。 おそらくプリシラの取り計らいによるものだとは思うのだが、それだけうまくいっていることなのだろうか。
 そして再びエダルニアの地へとやってきた。 しかしデジャヴだろうか、いつぞやのプリシェリアの時と同じようにエダルニアに入ってすぐ、正面にはプリシラが待っていた。 あの時は森の中でよくわからなかったが、特徴的な黄味がかったライトピンクのロングヘアー、 服装は可愛げな、所謂、フリルのオフショルダーのトップスという、 自らのバストが少々表に出るビキニような服装の上にカーディガンを羽織っていて、 下半身は細くて長い綺麗な脚が映える短いスカート――男心をくすぐりそうだ。 それこそ以前とは違い、スカートはチュールではなくてブルーの普通のウール地だかポリエステルだが、 丈はさらに短くなっているうえに上半身の露出度も高くなっていて、 何人かが彼女のその姿に見惚れていることをティレックスは見逃さなかった。 それこそどういうわけか、あのリファリウスまでもが――今までの彼にしてみれば不思議だった、いや、まさかそんな。 だが、リファリウスはプリシラの胸元をじっと眺めて鼻の下を伸ばしていた、そんな、本当に――
 そして彼女の案内でガリアスがいるらしい重要な施設の中へと入っていった。
「そこで少しお待ちください」
 待たされたのはセキュリティ・ゲートの前だった。 すると彼女はなんと、ゲートを見張っているエダルニウスの兵士たちに何やらこそこそと話をし始めていた…… まさか本当に?
「なんか、恐怖さえ覚えるな。あれが”ネームレス”である彼女の能力?」

 そしてゲートを通過すると、今度はそのまま会議室らしき場所へと促された。 その間、男たちはずーっとプリシラに見惚れていた。 そう、あのリファリウスもやっぱり引き続き彼女の姿に見惚れていたのである。
「とりあえずみなさんをこれからガリアスに引き合わせます。 その前に少し準備がありますのでお時間をいただけないでしょうか?」
 一団はその問いに返答をすると、彼女は甘い香りを残していった。 その香りに漏れなくやられる男性陣――リファリウスも彼女の後ろ姿に見惚れていた――
「あの人、なんていうかその……ラミキュリアさんとかと印象似てないか?」
 アーシェリスは少しぼーっとしたような感じでそう聞いた。 見惚れていたことについては間違いなさそうである。
「すごいだろう? そうさ、あれが彼女の人となりと美貌がもたらした魔女としての能力さ。 彼女にしてみれば男を手なずけるのは至極簡単なことなんだよ。」
 と、リファリウスは得意げに言う、確かに見惚れていたもんな。 魔女ということはつまり、彼女は――
「なーんかひっかかるなと思ったら、プリシラさんもプリズム族だったのか」
 と、フェリオースが言った。そうだ、確かその能力でプリシェリアを支配していた人だったっけ、 ティレックスは思い出した。
 つまりは一定の相手であれば彼女の誘惑魔法に簡単に引っかかるということか。 しかし、ガリアス相手ではどうなんだろうか、簡単にかかるのだろうか、ティレックスは考えた。 もっとも今回は手ごわい”ネームレス”相手だからこその今回のこの作戦なのだが。
「だよな! だよな! やっぱりそうだよな! いいなぁ、プリシラ様――」
 と、シャディアスは完全に鼻の下を伸ばしていた。それに対してイールアーズは言う。そういえばいたのねあんた。
「でも、プリズム族で”ネームレス”とか……面倒が多くなるよな、勘弁してもらいたいもんだ」
 イールアーズはそもそもエレイアの件でプリズム族については完全に苦手意識があった。 気持ちはわからんでもない。
「でもいいじゃないか! 見惚れていればそんなこと考えずに済む! だろ?」
 と、シャディアスは楽観的だった。 イールアーズは呆れ、ティレックスは悩んでいたが、 そのほかの男たちは実際に見惚れていたこともあり、口をつぐんでいた。 一方、恐らく見惚れていたハズのリファリウスはなんだか得意げだった。こいつ、ムッツリ?

 会議室でいろいろと話をしている中、プリシラがやってきた。
「みなさん、大変お待たせいたしました。ガリアスを部屋に呼びつけておきました。 準備が整い次第、行きましょう」
 と、彼女は一礼した。 呼びつけたって、穏便に済ますつもりなのだろうか、それとも問題が大きくなる前に片を付けるということか。 なんたって今回の目的はガリアスの暗殺、彼女を起点に全員で取り入るわけだから、 だからこそ、今回”超級ネームレス”はリファリウスだけということらしい。
 だが、彼女が一礼した際、リファリウスはなんと!  あのリファリウスが鼻の下を伸ばして彼女の胸の谷間をじっと覗いて嬉しそうにしている!
 こんな状態で作戦はうまくいくの!?

 会議室を出てさらに廊下を突き進む。 プリシラのサンダルについているヒールの音があたりにカンカン鳴り響き、緊張も走る……ハズなのだが――
 ティレックスは心の中で「みんな、マジかよ……」と思っていた。 恐らく平常心を保っているのは自分だけで、それ以外は完全にプリシラの後ろ姿に見惚れていた……いや、イールアーズは例外である。
 プリシラの後姿は、もはや私に見惚れなさいと言わんばかりに肩から背中が大きく空いていた。 彼女はカーディガンを羽織っているはずだが、薄手ゆえにカーディガン越しに透けて見える……。 ボトムスは女性特有の腰をクネクネっと動かしお尻を振って歩くセクシーな動きで美尻を強調、 これまでのプリシラにしてみれば際どいレベルにまで短いミニフレアスカートと、 腰の動きに併せたスカートの揺らめき加減……そして、スカート下に映える2本の細くて綺麗な生足―― もはや完全に男の心を回収する気満々といった感じだが、一部を除きいずれの男の心も漏れなく回収されていた。 無論、あのリファリウスさえも彼女の下半身をじっと眺めていて終始鼻の下を伸ばしており、 これが彼であることが信じられないほど嬉しそうな表情を浮かべていた――
 そして今回は応接間ではなく、ガリアスの部屋と思しきその部屋の扉の前で立ち止った。
「ガリアスはこの中です。みなさんさえ良ければ――」
 ガリアス――ついにこの時が来たのか、ティレックスとイールアーズは意気込んでいた。 ほかの男どもは大丈夫なのだろうか? 特にリファリウス、彼女がこちらを振り向くと、こいつの視線は再び彼女の胸元に……
 だが、この扉の向こうに問題のガリアスがいるんだ、ことが大きくなる前に何とかするしかない。