エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

悠かなる旅路・精霊の舞 第4部 遠き日々 第7章 天命

第126節 今後

 ”インフェリア・デザイア”がなんなのか、エンブリスの残した”回帰への道”とは?  話をしたところで何が分かったわけでもなく、結局、今後については何も定まることがなかった。 とはいえ、唯一確かなことはあった、それは――
「とにかく、”イーガネス”というのを斃すことですね。 そうすればセラフィック・ランドは救われるのですから、それは間違いないということですね!」
 と、ディスティア。つまり、話を聞いたところでその結論だけは変わらないということである。ただ――
「あと、エンブリスの残した”回帰への道”というのがどこかにあるということぐらいか、 あることがわかっていてもどこにあるのかがわからなければないのと一緒なんだけどな」
 ヒュウガがそう言うとリリアリスは頷いた。
「あのエンブリアヌスでさえもさっぱりって言ってたわね。 でも、エンブリスの残した回帰への道というぐらいだから、 エンブリスが作ったものの中にそれが隠されていることは確かね――」
 だが、ヒュウガは――
「言っても、この世界はまさに”エンブリア”だからな、 つまりはエンブリスが作ったものだらけだ、どこを探せばいいんだ?」
 そう言われてみればそうだ、それではどうしようもない。するとリリアリス――
「いや、そうでもないかもしれないわよ。 後でまたオルザードに確認してみるつもりだけど、なんか、途中でエンブリスが登場していないような気がするんだけど、気のせい?  エンブリスはみんなに褒められて奉られたって……最初は現人神かよって思ったわ。 でも既に亡くなっていて、彼の功績を讃えて祭られたって言うことならしっくりくるわ、みんなでエンブリアの意思を継ごうって。 それが世界を創造するっていうプロジェクトの継続ということならまさに発起人たるエンブリスは神として祭られることとなった――そういうことじゃあないかしら? それこそ、エンブリア創世とも密接に関係するクラウディアスを創造したときの件とかはどう?  クラウディアス創造に貢献したのは初代エミーリアとレミーネアの2人よね? その時のエンブリスは?」
 クラフォードは気が付いた。
「ん、そう言われてみれば確かにその通りだな。 それをあくまで神話でおとぎ話だからで済ませるのならともかく、 それでも、神話というのならエンブリスが話に出てこないって言うのも妙な気がする、 教えの上でも詳細は別にしてセラフィック・ランドの次はクラウディアス創造に着手しているらしいしな。 つっても初代エミーリアもレミーネアもこの国の王族、異世界人ってのと結びつけるのは少々強引な気がしないでもないが……」
 アリエーラは言った。
「そういう話になると、”ネームレス”が異世界人というのが強引ということになりそうですが……」
 そう言われると……ちょっとつらいところがあったクラフォード。 ”ネームレス”は異世界人説は確定ではないが可能性が濃厚なため、 確かに案外彼女らも”ネームレス”と同率に考えたほうがいいかもしれない、 召喚王国という後の強国を築き上げた偉大なる祖にあたる存在なのだから。 つまり、彼女らはエンブリスの使徒にあたる存在なのか?  いや、というか、そうなるとつまりはエンブリスも”ネームレス”?
「そういうのはともかく、私が言いたかったのはつまり、 エンブリスがエンブリア創造の上で実際に創造したのはセラフィック・ランドまでなんじゃないかと思ってさ。」
「それは重箱の隅って感じもしなくもないが……そういうことになると世界中を探す必要はなく、 的はセラフィック・ランドのどこかということに絞られそうだな――」

 とにかく、レビフィブ島が消滅してからの一連の流れはすべて収まった。 ”天命の刻30”については延期も考えられたのだが、 特にクラウディアス側でもこれ以上の問題が残っているわけでもなく、予定通り行われる運びとなったのである。
「”天命の刻30”楽しみだね。」
 ルシルメアにて、リファリウスがシャディアスらと話をしていた。
「貴様、何をしているんだ? それはなんだ?」
 ガルヴィスがそう聞いた。リファリウスはたくさんの薬草を持っていろいろと作業をしていた。
「ディグラット・デオードとアセラス・テネート・エルガだよ。 デオードはディグラット、エルガはレヴァルタとか主に北部にしか生えていないものばかりだから、 材料が切れた場合を考えるとルシルメアで作業するのが一番と思ってね。」
 それに対してシャディアスが言った。
「すでに採取してきているのになんでわざわざ?」
「だから、”材料が切れた場合”に備えてだよ。 エルガはイリ姉さんからもらった分だけだけど、 調合に失敗したらまた採りに行かないといけないからね。 だから万が一に備えてここにいるってわけだ。」
「で、そこまでして何の薬を作っているんだ?」
 ガルヴィスは訊いたが――
「それが思い出せれば苦労はしないんだ。 というのも、何故作らなければいけないのかがわからないんだ。 ただ、どうしても作らなければいけないことだけはわかっている、それに……私の中の何かが、 早く早くとせかすんだ、だから私は……作らなければならない――」
 と、何故か最後当たりは涙声だった。
「おっと、悪いね、どういうわけか涙が出てきたよ。 デオードの毒素成分だろうか、それともエルガの苦み成分のせいかな――」
 ガルヴィスはそれを察して話題を切り替えた。
「ところでその”天命の刻30”とやらは何なんだ?」
 えーと。