エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

悠かなる旅路・精霊の舞 第4部 遠き日々 第7章 天命

第124節 謎の用語続々

 魔物の残党は主に”ネームレス”の活躍によって全員蹴散らされ、事なきを得るに至った。 とはいえ、今回の戦いでは謎が多く残ったようである。
「”インフェリア・デザイア”? ”ネームレス”とは違うのか?」
 イールアーズはそう言うとディスティアが考えながら言った。
「彼らは明らかに”異世界”の存在を匂わせるようなことを言っていました、つまりはそういうことですよね?」
 と、ディスティアが言うとイールアーズは呆れながら言った。
「はぁ? 言うに事欠いて”異世界”の存在とか、ディルテメェ……とうとう落ちるところまで落ちたもんだな!」
 その様を見ながらクラフォードは頭を抱えていた。
「こいつは確かに……似たようなやつは3人ぐらいいるとは聞いたことあるが、まさか身近に該当者がいたとは……」
 それに対してイールアーズは首をかしげていた、確かにこれはデジャヴかな?
「そう。あいつら、”イミテーション”とか言ってたでしょ。 なんの模造品のつもりで言っているのか知らないけど”イミテーション”の世界とか言っていた当たり、 本当に世界自体が丸ごと”イミテーション”のつもりで言っているのかもしれないわね。 存在自体が”イミテーション”って可能性もあるけど。」
 と、最後のあたりはイールアーズを見ながら言った、なんで俺……イールアーズにはよくわからなかった。
「なんでもいいが、その”インフェリア・デザイア”ってのがさっぱりだな、 俺としては確かにその言葉で何かしら引っかかるものはあるにはあるんだが―― といっても、だったらなんだと言われると――ちょっと自信ないな」
 ヒュウガはそう言うとリリアリスとアリエーラが頷いた。
「そうなのよ、できれば何か教えてもらえればよかったんだけど……固有名詞だらけで聞く気も薄れたわ。」
 確かにどこぞのファルシのルシがコクーンでパージではないが、固有名詞だらけでは閉口するしかない。
「だけど、リリアさんが”アナ・メサイア”というのがすごく気になっています。 ”救世ならざる者”ということですよね? どういうことでしょう?」
 アリエーラは心配そうに聞くとリリアリスは考えていた。
「なんだろ、なーんかとんでもないことを忘れている気がするのよねぇ。 ただ、なんかその”救世ならざる者”っていう感じではなかったような気がするから、 そこは多分大丈夫だと思う、不思議とね。」
 でも、どういうことだったっけ――リリアリスは深く考えていた。
 そしてそこへフロレンティーナが話をまとめた。
「わからないのならとりあえず悩んでも仕方がなさそうね、 だけど、今回の敵は少なくともセラフィック・ランド消滅に関わる鍵であることだけは間違いなさそうね」
 リリアリスは頷いた。
「あの”ゼロ・ブレンダル”の言ってたことが本当ならね。 あいつの話じゃあこの世界を――セラフィック・ランドを脅かしているやつはその”イーガネス”ってやつみたいね。 つまり、そいつを斃すことが目標だというワケね。」

 ただ、問題はその”イーガネス”というのがどこにいるかである。
「でも、その”エンブリスの残した回帰への道の先”ってところにいるんだろ?  エンブリスってのは、あのエンブリスのことか?」
 エンブリスとは……そう、セラフィック・ランドの第2都市であるエンブリス、聖殿都市エンブリスに祭られているそれである。 この世界エンブリアではエンブリス教というのがあり、世界の名前がエンブリアと呼ばれているのもそのエンブリスの名前が元になっているのである。
 ということで今回、敬虔なるエンブリアヌスであるアルディアスの大使・オルザードを招致し、改めてエンブリスの教えを聞くことにした。 エンブリス教はエンブリアにおいては一般的なものなので改めて聞かずとも知っている者もいるハズなのだが、 今回の件についてよくわからないことだらけであるため、専門家の考察を頼りにしようと考えたのである。
「ただの敬虔なエンブリアヌスだと思ってたのに――」
 ティレックスはそう訊くとオルザードは言った。
「私はエンブリアヌスであると共にエンブリア創世学の学者です。 ですから、教えを信じるか・信じないかというよりも、まずは神の御業というものが実際どこで行われたのか、 どうして行われたのか、そして、行われた結果に何が起こったのかを研究する立場にあるんですよ。 そうです、エンブリア創世学にはまさに人類のロマンが詰まっているのです! なんだかワクワクしてきたでしょう?」
 やっぱりオルザードは変なやつだ、ティレックスは悩んでいた。
「で、そのロマンを求めた先の話を教えてもらってもいいかしら?」
 リリアリスはそう訊くとオルザードは軽く咳払いしてから説明しだした。