エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

悠かなる旅路・精霊の舞 第4部 遠き日々 第7章 天命

第120節 終焉への流れ

 大方の予想通り、とある問題が発生していたようだった――
「大丈夫、アリ……」
 リリアリスはシャナンに抱っこされている状況で彼女のもとへとやってきた。 アリエーラはお城の横庭で横たわっているが、彼女はカスミとエミーリアをしっかりと抱きしめていた。
「リリアさん、今のはやっぱり、そういうことですか……?」
 リリアリスはシャナンに降ろしてもらうと、アリエーラのもとへと駆け寄った。
「わからないけど、この状況、間違いなさそうね……」
 最初はおよそ南西方向から妙な波が襲ってくる、電磁波というか、なんだかよくわからない変な力の波動が広がってくるのである。 そして、その南西方向のとある地点での上空は文字通りの暗雲が立ち込め、再び変な力の強烈な波動が発生すると――
「大変だ! リリアさん、アリエーラさん! レビフィブ島が消えたってニュースになっているぞ!」
 と、その場にティレックスが慌てて走ってやってきていた。 ほぼ予想通りだが、今度はセラフィック・ランド自治区第10番目の都市、レビフィブがある島が消えていったという――

 リリアリスとアリエーラ、2人は慌ててフェラントの港へとやってきた。
「り、リリアさん! アリエーラさん! 早いですね――」
 港の入り口、兵士の一人が彼女らの存在に気が付いて慌てて対応していた。 だが、リリアリスは不機嫌なせいか何も言わず、アリエーラも軽く会釈をしただけでそのまま去って行った。
「さあ、いくらでもかかってきなさいな!」
「私だって! 何が来ても絶対に許しません! どこからでもかかってきなさい!」
 2人はそのままフェラントの港の波止場でそれぞれの”兵器”を構えて待機、敵が来るまでじっとその場で止まっていた。

 クラウディアスのシステム・ルームにて、ラトラが切り盛りしていた。
「関係各所に連絡して! 援軍を要請してください!」
 ラトラ率いるクラウディアスのシステムチームが総力を挙げて事に当たっていた。
 そこへシャアードとハイドラ、そしてイツキの3人が何事かと訊きに来た。
「なんか、消えている国があるって騒いでいるんだけど、どういうことだ?」
 シャアードがそう言うとラシルが説明した。
「厳密に言うと国ではなくセラフィック・ランドの一部の島です。 セラフィック・ランドはここから南西の方向にありますが、 これまでセラフィック・ランドの第1都市のあるフェニックシア大陸、 第2都市のあるエンブリス島、第3都市のあるスクエア島、第4都市のあるフェアリシア島と、 とにかく順番に消えているんです!」
 なんだって!? 3人は驚いた。3人にとっては初耳のことである。ラシルは話を続けた。
「前回はセラフィック・ランドの第9都市のあるニテント島が一昨年にディスタード本土軍との戦いの間に消えてしまいました。 それによってディスタード本土軍の友軍が巻き込まれる形で壊滅したのですが、 そのあとの魔物の襲撃を退けるのが大変だったのです」
 ということはつまり、これからその魔物が襲ってくるということを考えてみんな慌てて対応しているということか、3人はそう考えた。 それに対してハイドラが訊いた。
「私はフローラといたのだが、彼女は急に具合が悪いと言ってそのまま気を失っていた。 私もあの時は気を失ってしまったのだが、気が付いたら彼女はいなかった。 つまり、あれはその予兆だったのか? 何がどういうことなのか詳しいことを教えてもらえると助かるのだが――」
 ラシルは悩みながら答えた。
「すみません、実は僕らもフローラさんやリリアさんたちにおかれましても今説明した以上のことはわかっていないんです。 一応推測できる範囲で言えば、セラフィック・ランドはエンブリス教における聖地であり、 第1都市のあるフェニックシア大陸から順番にこの世界が始まった地とも言われていますが、 今回は第1都市のあるフェニックシア大陸から順番になくなっている、 もしかしたら、この世界ができた順番とは反対にこの世界が亡くなり、滅んでしまうのかもしれないなどと言われているのです――」
 そんなことが――3人は息をのんだ。それはともかく、
「ん、ところでそのリリアたちの姿が見えないのだがどこにいる?」
 ラシルは答えた。
「恐らく、フェラントですね。フロレンティーナさんもそこにいらっしゃるのではないでしょうか?  おっしゃられた通り、みなさん変な力の波動によって気分がよくない状態ですので、 すごくイライラしている状態だと思います、そういうこともあって、こちらでの作業も基本的には僕らの判断でやっている状況なんです」
 なるほど、ほかに気を回せるような気分ではないのか。
「そうですか。そういうことなら僕らも行きましょう!」
 イツキはそう言うと、2人は頷いた。
「そうだな、いずれにせよ、このまま放置しておくわけにはいかないしな。 フェラントってことはここに来た時に使った港に行けばいいんだな」
 と、シャアードは言った。