エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

悠かなる旅路・精霊の舞 第4部 遠き日々 第7章 天命

第114節 平和への道筋

 それからほどなくして、年の初めあたりに新生クラウディアス連合国内でのサミットが催されることとなった。 参加国はクラウディアスはもちろん、セラフィック・ランドにルーティス、アルディアス、 グレート・グランド、ルシルメアとディスタードに、キラルディアとリオメイラである。 リオメイラは今回初参加となる。 また、アーシェリスらの国であるエネアルドは今回も参加見送り、何があったのかはわからないが、 今回も特使であるアーシェリスらを見学として参加させることにしたのだそうだ。
 そして議長はフロレンティーナ、以前はクラウディアスの王室特務隊員の一人として活躍していた彼女だが、 今では特別執行官という立場に落ち着いている。
 今回の議題は、まずはディスタード帝国軍との戦いにおける被害報告、 かの帝国との戦いにおいて、各国それなりに被害が出ていた。 それにより国ごとに再建が可能な範囲であればそれでいいが、それが難しい国は各国で協力することにしていた。 とはいえ、その再建についてもそろそろ収束を迎えようとしていた。 なお、一番被害が大きかったのがリオメイラであり、 そのリオメイラが今回参加してきたということは、つまりは終わりも近づいているということでもあった。
「リオメイラさんの参加でようやくディスタード帝国本土軍との戦争にも終止符を打ったということか。 問題はディスタード皇帝の所在だが――まあ、いない者のことを気にしても仕方がないということか。 とにかく、今は平和であることをかみしめんとな――」
 と、アルディアス代表ローザンド大統領がそう言った。 彼の補佐として国務長官のナイシェル、ルダトーラ・トルーパーズの団長ティレックスが席についていた。 ティレックスは以前のこの席においてガチガチに緊張していたが、いつの間にやら板についていた。
 彼の発言に対し、リオメイラ女王のメライナが発言した。
「すべては皆様のおかげでございます。 ディスタード帝国軍によって脅かされた私の国、ここまで復帰できたことはひとえに皆様からのお力のおかげにございます」
 それに対してルシルメア代表のリカルド大統領が発言。 リカルドと一緒の席についていたのはライザース国務長官、そしてF・F団のシャディアス、 そして、ララーナとシェルシェルとメルルーナがいた。 無論、妖魔プリズム族であることは内緒なので、彼女らはF・F団の一員という立場である。
「しかし――気になるのはリオメイラ殿はどのように国を保っているのかが気になりましてですね。 貿易都市としての側面もあり、ディスタード帝国軍からは元々資源が豊富な島であるとして狙われていたわけではないですか?  ですが――ディスタード帝国軍はリオメイラより資源を見つけられず、 貿易都市としての効果を利用したということのようですのでそれについては特に言うことはないのですが、 本当に貿易都市としての機能のみでしょうか?」
 取り方によると少々失礼な発言だが、リオメイラ女王はていねいに答えた。
「お察しがよろしいですね。リオメイラはかつて魔導王国として栄えた歴史があります。 現在でもまだ魔具の製造を続けておりますが、ディスタード軍の活性化と同時に利用されるのを恐れ、 リオメイラの魔導王国としての歴史と製造技術を抹消するように命じておりますので、 本土軍はその記録を確認することはできなかったハズです」
 確かにそんな軍事的な内容に関わることが公になればディスタード帝国軍にとっては兵器として扱われる、 記録を消すのは正解だろう。しかし、
「リオメイラにはそのような秘密が!? しかし、製造技術を抹消するなどとは可能なのでしょうか?」
 それに対してリリアリスが答えた。
「可能よ。それこそ製造ラインから魔法技術で構築してしまえば、 そのラインを隠すにも魔法の素を断つだけだから、それをするだけで対策できるのなら余裕といったところね。」
 それに対してルシルメア側は言った。
「なるほど。しかし、その製造技術の元となるものが連中に見つからなかったのは不幸中の幸いということですね――」
 それに対してアリエーラが発言した。
「ええ、実は古リオメイラ王国の礎を気づいたのは元々クラウディアスの者、魔導士リオメイラだったという記録があります。 魔導王国として栄えた歴史というのも魔具の製造技術があるのもそのような背景があったようです。 そして、魔導士リオメイラは万が一に備え、魔具の製造技術をクラウディアスに隠蔽することにしたようですので、 リオメイラで万が一のことが起きればクラウディアスに頼ることと明記されています。」
 リリアリスはさらに続けた。
「ここで面白いのが、その時のクラウディアスとリオメイラの契約方法ね。 どうやらクラウディアス側で提示した呪いの一種みたいなのよ。 魔導による無条件契約だからリオメイラから要求されればクラウディアスは直ちにそれをしなければならず、 そして、リオメイラも魔導による無条件契約ゆえにそれ以外の用途で行使してはならないとされているのよ。 で、それによってクラウディアス側は無条件にリオメイラにその魔導技術の元となるものを無償で提示するようになっているということらしいのよ。」
 それに対してルシルメアは訊いた。
「するとまさか、もうすでにリオメイラのその魔具の製造ラインというのは――」
 リオメイラは答えた。
「はい、既にクラウディアスさんの手により復旧は完了しておりますね。 今後はクラウディアスさんとの共同開発も予定していますね」
 この手のもので共同開発と言えば、やはりリリアリスが言い出しっぺだろうなと何人かは思った。

 ディスタードについてはガレアやヘルメイズのような旧ディスタード王国からのあり方を善とするディスタード王国軍や正規ディスタード軍など、 それとは反対にディスタード帝国としてのあり方を善とするディスタード帝国軍や反ディスタード軍など、 各々で呼び方はいくつかあれど、今後、ディスタードに関しては次の呼び名で統一される運びとなった。
「まずは前置きなんだけど、ディスタードの悪の枢軸である本土軍はもうなくなった。 かつて帝国主義の道へのきっかけを作った首謀者たちや古ウォンター帝国の息のかかった連中もとりあえずいない。 そして肝心の皇帝もディスタードにはおらず。というわけだから、ディスタード帝国はもういない。 つまりは今後、ディスタードを呼ぶときは何の抵抗もなく”ディスタード”、または”ディスタード王国”とするわね。」
 しかし、それに対してルーティスのナミス市長が悩んでいた。
「”ディスタード”というのは依存がありませんが――ただ、”ディスタード王国”というのは――。 というのも、”ディスタード”と呼ぶにしても”ディスタード王国”と呼ぶにしても、 それって結局、ディスタードは王制国家であることを前提にしている呼び名ですよね?」
 ヘルメイズのグラントは頷きつつ答えた。
「王がいてこその王国、王もいないのに何故王国というのか、ということですね?  もちろん、それについては確かにその通りです。 それの意図としてはあくまで帝国へと転覆する前の状態に呼び名を一旦戻すだけということでしかありません。 今後どうするかについてはディスタードで決めたいと思いますので、それ次第とさせてください」
 それもそうか、ディスタードのほうも復興していかないといけないのだ。 もっとも、もはや復興などというものは必要のない独自の路線で繁栄しているガレアというところもあるにはあるのだが。
 ということで、今後のディスタードについてはディスタード民に委ねることとなったのである。