そして、オリエンネストたちがフェラントの街道に差し掛かった時だった、そこには物々しい光景が。
「あれは――シャナンさん!?」
オリエンネストは慌てて駆け寄った。
そこにはティレックス、アーシェリス、そして、クラウディアスの兵士たちもいたのだが、彼らは伸びていた。
「オリエンネストさん! 気を付けてください、魔物がいます!」
魔物――クラウディアスの魔物はやはり幻界碑石の影響もあってか個体ごとの能力は強力である。
ただし好戦的ではないため、滅多に遭遇しないのだそうだが――
「ここ最近、セラフィック・ランドの消滅に伴って彼らも活性化しつつあります。
これはクラウディアスだけでなく、世界的な問題にもなっています――」
と、シャナンは言うとオリエンネストは剣を――
「しまった、持ってきてなかったからこれでいいか――」
オリエンネストは鋤を取り出して構えた。
「ティレックスさん、アーシェリスさん、大丈夫ですか?」
プリシラは2人の元に駆け寄りつつ、魔法で回復した。
「痛てて――ありがとう、プリシラさん――」
「サンキュー、プリシラさん。
にしてもイールのやつ、こんな肝心な時にいないとは――」
と、ティレックスとアーシェリスは言った。
そういえばイールアーズの姿が見られなかった、一緒にいたハズなのだが。
「あいつは大使館側から連絡が来て急いで帰ったよ――」
ティレックスはそう言いながら剣を拾い上げつつ構えていた。
するとプリシラが――
「何か来ます!」
プリシラは即座に”兵器”を出現させた――そういえばこの人も”兵器”使いだったか。
それも何気にリリアリスが扱うようなそれと同じような危険物というのが気がかりである。
「あの人、見た目とは裏腹にあんな危なっかしいものを平気で扱うみたいだな、どういうことだ?」
アーシェリスがそう言うとティレックスはフォローした。
「まあまあまあ、それはいいじゃないか。
そんなことより今は魔物をどうするかが先決だ、早いところ片付けてしまおう――」
各人は武器を改めて構え、魔物の襲撃に備えた。
そして魔物が4体いきなり現れた!
「見るからに普通の狼のような気がするが――」
アーシェリスは警戒しながらそう言うと、シャナンが答えた。
「種族こそほかの地域にも見られるようなワイルド・ハウンド系の魔物ですが、
こいつらはクラウディアスの幻界碑石の影響を受けて強化された、
通称”クラウディアス・ウルフ”と呼ばれる固有種です。
このようにクラウディアスの魔物は幻界碑石の影響を受けて強化されている種類ばかりなのですが、
幻界碑石より放たれる力がおとなしい力のためか好戦的ではないため、普段はおとなしいのも特徴なのです」
なるほど、そういうことだったのか――ティレックスは頷くとその話に付け加えた。
「だけど――セラフィック・ランド消滅のあおりで力場が乱れると――
それで世界的にも問題になっているというわけか――」
すると魔物たちはこちらへとやってきた。
「来るぞ!」
アーシェリスがそう言うとそこへロッカクが立ちはだかった。
「そういうことならここは俺らに任せな!」
なんだって!? ティレックスはロッカクにそう訊いた。
「久しぶりじゃねえかティレックス、ルダトーラ・トルーパーズでの時以来だっけか?
だけどどうやら俺も”ネームレス”っていう存在らしい。
だからここは俺ら”ネームレス”に任せてくれって言うわけだ」
それに追随してシャディアスも得意げに言った。
「なるほど、そいつは名案だぜ! それに、それっぽいところを見せてやんねえと、説得力もねえからな!」
ロッカクは大きな刀を、シャディアスは二振りの小さな剣を取り出し、オオカミ相手に構えていた。
「やる気みたいですね。だったら私も負けませんよ!」
プリシラも”兵器”を振るって構えていた。
「”ネームレス”っていうことは――相手も4匹いるみたいだし、僕も参加するかな――」
と、オリエンネストは鋤を構えて前に出てきた。
「よし! じゃあ行くぜ!」
ロッカクのその合図に他の”ネームレス”3人は――
「ああ!」
「おう!」
「ええ!」
オリエンネスト、シャディアス、プリシラの3人はそれぞれそう言って魔物に突撃した。
そしてシャナン率いる兵士たちは4人の”ネームレス”を連れてクラウディアス城へと到着した。
「おや? お客様ですか?」
ラシルはシャナンにそう訊くとプリシラが話をした。
「ラシル君、お久しぶりですね!」
ラシルは思った、そう言えばこんな人いたなと。そんな彼女に軽く挨拶をした。
「こちら、ロッカクさんとシャディアスさんです。
先ほどクラウディアス・ウルフ4体に襲撃されましたが、
彼らがいてくれたおかげで大きな被害もなく退けることに成功しました」
クラウディアス・ウルフ4体!? ラシルは驚いているとシャナンは話をした。
「やはりセラフィック・ランド消滅の影響は根強く残っています。
だけど、それでもあのような魔獣をいとも簡単に撃破してしまえるというのは彼らが”ネームレス”であるが故のことでしょう」
”ネームレス”ってまさか――ラシルは驚きながらそう言うとシャディアスとロッカクは話した。
「ああ、俺たちもその”ネームレス”ってやつだ」
「よくわかないんだけどな。でも、似たような境遇の連中がここには結構いるっていうから招待してもらったっていうわけだ」