オリエンネストはアリエーラから当人やクラウディアスのこれまでの経緯について聞いていた。
ディスタード帝国という組織がおり、そこの本土軍という組織がいてクラウディアスを貶めようとしていたこと、
確かにそのあたりはルーティスでも軽く聞いた通りだが、
セラフィック・ランドが消滅し、魔物が現れるとクラウディアスを襲撃に来ることなど、いろんな話が聞けた、
ここはまさにその中心地なので、割と詳細に話を聞くことができたのである。
そしてアリエーラ自身の話も聞いた、オリエンネストも自身を居候と言っていたが、
それを言ったら彼女やリリアリスも居候なのである。
だから居候同士、仲良くしようというのがアリエーラの弁である。
「それに――本当にオリエンネストさんってとっても優しい方ですよね! こうやって会えて私も嬉しいです!」
と、アリエーラは続けざまに言った。
そう言われることに違和感があったオリエンネストは意を決して訊いた。
「あの、その――”やっぱりオリエンネストさんは優しい人”って言っていましたけど、
”やっぱり”ってことは僕のことを知っているんですか?」
アリエーラはハーブティを飲んでから答えた。
「んー、それは難しい質問ですねぇ。
初対面と言えば初対面のハズですが何と言えばいいのでしょうか、
私たち、どこかで出会っている気がするのです。
ただ――私の記憶の中にあるオリエンネストさん似のとある方の印象のせいでしょうか、
オリエンネストさんからなんだか懐かしいような感じを受けるのです。
あくまで他人の空似ですのでそこは申し訳ないのですが、でも特徴的にとても似てらっしゃるのです。
その人はもちろん名前はオリエンネストさんではないような気がするのですが、
風貌もオリエンネストさんによく似た方ですし、
その――僅かな赤みを帯びた感じの銀髪の男の人――結構珍しい色ということもあって、とても似ているのです――」
なんと、アリエーラからもオリエンネストらしき人物の記憶があるらしいことが言われた。
クラウディアスに来る前に船の上でリリアリスも同じようなことを言われていたが――。
そして、アリエーラの次の一言はオリエンネストにとって実に冷や冷やものだった。
「ところで、オリエンネストさんにとってリリアさんは憧れの女性なんですよね?」
何故それを! オリエンネストは焦っていた。
「私の中の記憶にあるオリエンネストさんによく似たあの男の人はリリアさんが大好きな方でしたからね。
そして、あの人の彼女を見る目といったら――」
オリエンネストが顔を真っ赤にして硬直していたので、それを察してアリエーラは再びハーブティを飲んでいた。
「カスミさんからもお話を伺っていますよ。
せっかくですのでこの話を聞かせたら、オリエンネストさんのことを応援するって言ってましたね。
いいなー、リリアさんったらオリエンネストさんみたいな優しい人に思われているだなんて。
私もそういう恋がしてみたいです!」
オリエンネストはコメントしがたかった。というか、その人は本当に僕なのだろうか、彼の疑問と悩みは尽きない。
今度はフィリスとフロレンティーナという女性を目の前にして話をすることになったオリエンネスト。
「あんた、朝のあれ、すごかったね。
”鬼人の剣”を名乗る男破ってるし、リファリウスとも結構互角に渡り合えている。
話じゃああのフェルナスをタイマンで討伐しているっていうじゃない、
なんで隠していたのよ、それだけでもなかなかの腕だと思うよ」
「ホント、大した腕よね。それにあんた――結構可愛い顔しているじゃないの♪」
オリエンネストは焦っていた。それに対してフィリスからお話が。
「ちょっとちょっと、こいつはリリアの彼氏なんだから手を出したらダメよ」
するとフロレンティーナは嘗め回すようにオリエンネストの顔を見ながら言った。
「わかってるわよ、ちょっとした興味本位。
それにしても、これがリリアのダンナになる男なのか――。
なるほど、これは確かにリリアの性格的にマッチしている男ってわけね。
あの我が強いリリアだからこそ、こういうおとなしそうな男のほうが相手としてはちょうどいいのかもしれないってワケね。
でも、その気持ちは私にもよくわかるわ♪」
リリアのダンナ……もう決まっているのか、オリエンネストはどう反応していいのかわからなかった。
だが、その話にはフィリスも食いついた。
「確かにそれもそうね!
なるほど、選んだ男についても既に計算済みってわけか!
流石は抜け目がない女リリアリス、恐るべしね!」
もはやオリエンネストはこれ以上どうしていいのかわからない。
そして、オリエンネストはリファリウスとカスミを前にして話をしていた。
カスミを前にしてオリエンネストは内心ドキドキしていた、だって彼女は――
「へえ、彼女が気になるのか……」
リファリウスは意地が悪そうに聞くと、オリエンネストは焦って否定した。
「ちっ、違うよ! ただ、なんていうかその――」
リファリウスは態度を改めて言った。
「ごめんごめん、冗談だよ。そうか、似ているのか――」
その話に対しても頷きたくないオリエンネストだった、
リリアリスが意中の人とか言われて揶揄われたくなかったため、似ている”気がする”程度でとどめていた。
しかし、それに対してリファリウスは気さくに言った。
「実はさ、それ言ったのってオリ君が最初じゃあないんだよね。
あのアリエーラさんがそんなふうなことを言ってたんだ、だから案外血がつながっていたりしてねー♪」
とはいえ、彼女は幻獣なのでその線はないのだが。
「ただねえ、幻獣って人々の想いが形になって現れる存在とも言われるから、
案外そう言うことなんじゃないかなって思うんだよね。
それにしてはそっくりというのはまずありえないケースかもしれないけどさ。」
リファリウスはさらに話を続けた。
「まあでも、世の中には3人は同じ顔の人間がいるって言うぐらいだからね、
世界の違う幻獣界も合わせると6人は同じ顔がいることになるよね!」
確かに……そういうことになりそうだが。
「でもまあ、それを気にしてくれているってことでなんだか私も嬉しいよ。
となると、今度からはオリ君なんて気安く呼べないね、
今度からオリエンネストお儀兄様って呼ばないとダメだね!」
いや、それは勘弁してくれ、オリエンネストは焦りながら言い返していた。