中休みの後、2本目のPVが流された。今度はアリエーラ中心で、
それ以外は1本目とそこまで大きく変わらない作りだった。
BGMもクライマックスに差し掛かると、画面は暗転、
祈りをささげて目を瞑ったアリエーラの顔をアップに画面は展開
「悪しき者たちよ、滅びなさい。神技”セラフィック・ストリーム”――」、
その字幕と同時に彼女は眼を見開くと、前方にいるすべての魔物を聖なる力で圧倒し、一番奥にいる巨獣もろともまとめて浄化した。
そしてその後、広い平原に無数の天使の翼の羽根のようなものだけが舞い降りていた。
画面は変わるとアリエーラとリリアリスが仲良くハイタッチをし、
そのまま二人は仲良くを手をつなぎ、平原の奥のほうへと歩いていった――さっきのPVもそうだったが、
最後のそれはお約束なのだろうか。
PVの後、モニタの映像はアリエーラのご尊顔だけが映っているところでリリアリスは話をしだした。
「まーったく、アリのPVって言ったらみんな食いつくんだからねー。
見惚れてないでそろそろ講義に戻るわよ。」
リリアリスは会場の空気を一喝すると、あたりに笑いがまた飛び交った。
アリエーラの使っていた技、もしや召喚魔法を人体にエンチャントしたとでもいうのだろうか?
それはオリエンネストも想像していたが、話を聞いているとどうやら間違いなさそうだ。
にしても――やっぱりそういう発想ができるあたりは流石はリリアリスと思ったオリエンネストだった。
しかし、講義はそこで終わりではない。
次は最初のデモンストレーションの延長として、
何と新しいアシスタントとして、オリエンネストが起用されたのだった。
オリエンネストはひどく緊張しているが、リリアリスのイジリ先はオリエンネストではなくスレアだった。
「ティレックス君、クラフォード君、スレア君に引き続き、続いてのチャレンジャーはオリエンネスト君です!
スレア君は調子が悪いからと言って仮病を使ってギブアップしましたが、
オリ君が代わりに引き受けてくれてくれました! みなさん拍手を!」
大歓声の中、オリエンネストが座っていた席にいるスレアが舌打ちをしていた。
てか、クラフォード君……被害者は2人だけではなかったようだ。
「そういうことで改めてよろしくね、オリ君♪」
リリアリスは楽しそうに言うと、オリエンネストは照れながら答えた。
「あっ、はい、よろしくお願いします――」
「素晴らしい、流石は堂々としている当たり、飛び込みで参加してくれただけのことはあるわね。」
飛び込みで参加したわけではないんだけど――
オリエンネストはそう思ったが、この際それでいいことにしようと思った。
「とりあえず、召喚魔法を人体にエンチャントしたということは、
スライドに簡単にまとめて置いた通りで勘弁してね。
その分、今日は特別にこのオリ君と一緒に授業を進めていこうかと思っています。」
会場は拍手の音に包まれていた。いや、まさかこんなことになるなんて。
そしてオリエンネストはさっきスレアがやられていたような感じで、コテンパンにやられ――たりはしなかった。
「おっ、案外骨があるのね。こいつは私が認める骨のある男リストに登録決定よ。」
すると、会場は再び笑いに包まれていた、あのねえ……。
そしてデモンストレーションは終えた。
リリアリスの攻撃はオリエンネストにとってはつらいものもあったが、
スレアの時とは違って最後に癒しの風魔法を使って体力を回復してもらえた、
これが非常に温かい癒しの能力でオリエンネストは元気が湧いてきた。
「まあ、そんなわけで。彼もまたなかなかの使い手であることが分かったわね。
そういうこともあってかいろいろと魔法剣の極意を駆使してみたけど、
それで気になる能力があれば質問してね、次回の時に話をするかもしれないからね。
特に防御用に使っている点については一番気になるところじゃないかしら?」
確かに魔法剣の技を防御用に使っているケースはあまりない。
似たようなものでスパイク……攻撃を与えてきた相手にダメージを跳ね返す効果というのはよくあるのだが、
言ってもそのぐらいでほかの防御用極意の例についてはあまり見たことがないような気がする。
「そうそう、一応言っとくけど、こいつは”仕込み”じゃあないわよ。”仕込み”使うぐらいなら初めから使っているしね。」
と、リリアリスは続けると、また再び笑いに包まれた。
俺は役立たずかとスレアからの殺気がオリエンネストに伝わってきた、怖い怖い。
「さて、今の彼の技、さっきの質問の時にやったことだけど、すごくいい例よね?」
オリエンネストは無意識だったが、このデモンストレーションで発揮した能力はオリエンネストもたいがいのものだった。
それこそ、フェルナスという魔物をソロで倒すほどの能力があるのだからある程度証明されているようなものだけれども、
それでもリリアリスの能力はオリエンネストにとってはさらに格上であることを思い知らされた。
しかしどういうことだろうか、オリエンネストに対するリリアリスの手はかなり緩んでいた、
それこそ、何故か遠慮がちだったため、それはそれでオリエンネストは気にしていた。