リリアリスが流した映像のつくりはどこぞのPVですかばりな仕上がりだった。だから作品なのか。
神聖な感じのBGMが流れると、広い平原の中央に女性が――リリアリスが目をつむりながらゆっくりと現れた。
お姉さんはその場でうずくまり祈りを捧げた。
セリフの音声はないが口の動きに合わせて字幕でセリフが表示されていた「出でよ、”ブレイブ・ネメシス”――」
すると黒くなった背景の中央にとても白くて神々しく美しい機体の幻獣が現れた。
機械生物のようで大きな天使の翼のような感じのものを大きく広げると、あたりに無数の天使の翼の羽根のようなものが舞い降りていた。
そして迫力のあるブレイブ・ネメシスの出現シーンの演出の後、ブレイブ・ネメシスが巨大な光の塊となり、
リリアリスが得物を頭上に掲げると得物に巨大な光が宿った。
得物の形状は特別変化はしないが、ぼんやりと天使の翼のような感じに見えるオーラに包まれているようにみえ、
さらにリリアリスの得物はビームサーベルのような実態のない刃と思しきものになっていた。
そのままカットはリリアリスの顔にフェードインすると、彼女は瞳を開け、得意げな表情でニヤッと笑った「戦乙女、降臨。」
そこからBGMは軽快で躍動感のあるものになり、目の前の強大な獣に立ち向かっていった。
この後の映像は”召喚魔法剣”とは関係ない感じがするが、
綺麗な女の人、あのアリエーラが登場すると彼女は魔法を使い、目の前にいる複数の魔物を退けた「リリアさん、今です!」
そのアリエーラの背後からリリアリスが現れると得物を携え、奥の魔物めがけて突進していく
「ありがとう、アリ! あとは私に任せて!」
そして次々と軽快に大きな魔物をぶった切るリリアリス、敵は次々と打ち滅ぼされていく。
さらにその勢いでそのまま奥へ奥へと突き進み、巨大な魔物へと立ち向かっていく。
そして奥に待ち受けるさらに大きい魔物を対峙すると、上空へ飛び上がった。
BGMはクライマックス感を醸し出すようなところに差し掛かると、
彼女は再び祈りをささげていた「悪しき者よ、滅び去れ。神技”セラフィック・クロス・ソード”――」
すると彼女の手元に巨大な剣が現れると、彼女はその剣を以て聖なる光を放ちながら下界の巨獣めがけて叩き潰した。
そのまま聖なる光は膨張し、遂には周囲すべての魔物を木端微塵、浄化が完了した。
そしてその後、広い平原に無数の天使の翼の羽根のようなものだけが舞い降りていた。
画面は変わるとリリアリスとアリエーラとが仲良くハイタッチをし、
そのまま二人は仲良くを手をつなぎ、平原の奥のほうへと歩いていった――
そんな仲良さそうな2人を見ながらオリエンネストはむしろ感心していた。
質問の内容、召喚魔法剣に関する内容はほとんどなかった。
それどころか一番多かった内容が「この映画、見たい!」か「このゲーム、やりたい!」という感想ばかりだった。
それについてはオリエンネストも周りと同様に笑い転げていた。
「さてと、ちょうど時間もいいところだし、休み時間の後で2本目を上映するから楽しみにしていてね。」
すると歓声が沸き上がった。オリエンネストももちろん大いに期待していた。
講義の中休み、各人はそれぞれ講堂を退出し、休憩を取っていた。
スレアは物申さんとばかりにリリアリスのところへとやってきた。
「何よ、あんたもいまだにコテンパンにのされたことについて根に持っているの?」
リリアリスはそう訊いた。
「あんた”も”ってなんだよ! ほかにも被害者がいんのかよ! というかなんなんだこの講義は!」
「なんなんだって、見ての通りよ。
それよりもあんた、ティレックスよりもずくがないわね。
基本的に魔法剣の講義の体でやっているハズだから魔法剣士呼んでやってるのに、
こんなんじゃあ意味ないじゃないのよ。」
とりあえずティレックスさん、お察しします――とだけ言っておくことに。
「それは悪かったな。
そもそも俺はあいにく撃たれるの専門じゃないからこれ以上は無理だ、勘弁してほしい」
「や、ムリね。
そう思ったらディフェンダー・ロール構えて待っているのが筋ってもんでしょ。
それに、フラウディアを嫁にもらおうっていう身なんだから、こういうところはちゃんとしっかりしてもらわないと。」
「なんでだよ! それとこれとは関係ないだろ!
だいたいディフェンダー・ロール構えて待ってたってあんたの暴力の前じゃあそんなもん意味を成さないっての!」
なんだか喧嘩しているようだがオリエンネストは特に内容は気にせず、
リリアリスが一方的にスレアという男の人をいじっている様をただ見つめていた。
すると、リリアリスは席の最前列の真ん中あたりにいる女性の元に行って話しかけていた。
「相変わらずですね、リリアさん!」
知り合いだろうか。
「どうよ、シオりん。こんなずくのない男ってどう思う?」
シオりんことシオラはその問いに対する答えに詰まっていた。
「ほら、ノーコメだってよ。コメントする価値もない男だってさ。」
えっ……ちょ……シオラは困っていた。
しかし、そんなシオラとスレアを他所に、オリエンネストはそのやり取りを見て大笑いしていた。
「なんだお前?」
大笑いしているオリエンネストに対してスレアは彼のいるところにやってきてそう言った。
「えっ、あっ、いや、その――キミには悪いけど今のはすごく面白かったね――」
そう言われたスレアは頭を掻きながら言った。
「いつもああなんだよ、あの人。
世話になっているのは間違いないんだが変なところにスイッチがあってな、
勘弁してもらいたいもんだ」
しかしそれに対してリリアリスが言った。
「何よ、だからって今度は他所の人に私の悪口を言ってるわけ?」
そう言うとスレアは頭を抱えながら言った。
「別にそういうわけじゃない――」
すると今度はリリアリスがオリエンネストの元へと近づいてきた。
「それにしてもあんた――誰かと思えば……誰だっけ?」
そう訊かれたオリエンネスト、この美女相手に答えに詰まっていた。
「あれ? 初対面――だっけ? どこかで会ったことない?」
初対面――のハズだけど、オリエンネストの中では初対面ではなかった。
それこそ、間違っても”あなたは自分の夢の中で出てきていた子で、
僕の記憶にも残っている人”だなんて言うことはできなかった、
初対面の女性に対してそう言おうもんなら間違いなく変態の類である。
「さて、どうでしょうかね――」
オリエンネストは濁すことにした。
中休み中は関係者以外は退席してもらうこととなっているが、
オリエンネストについては彼自身とクラネシアの希望で留まっていた、
彼女はそれも踏まえ、彼が言ったことについて察したかのように言った。
「ということは多分、初対面じゃあないかもしれないってことね、なるほど。
それにあんた――さっきの行動は私もびっくりしたわね。」
何のことだろう、オリエンネストは考えていると彼女は続けた。
「さっきのミスリル銀の布の時のパフォーマンス、あれはイイ感じだったよ。
いくら金属でも布なんだから普通ならちょっと引っ張って強度を試す程度なのに、
あなたの引き千切らんばかりのあれは、知っていないとあそこまではやらないわね。」
あっ、そう言えばどうしてその時はそうしたのだろうかオリエンネストはその際は一切容赦がなかった。
自分はやっぱり何かを知っているのだろうか?
まあでも、目の前は自分の夢に出てくるようなあの女性だ、それである程度は説明できそうだけれども、
しかし、それが何なのかについてはわからずじまい、自分はどうしたらいいのだろうかと悩んでいた。
だが、リリアリスはオリエンネストの表情から何かを察したようで、はたから見ると変な質問をしてきた。
「あのさ、今自分の置かれている状況でなんか不自然に感じることってない?
例えば――周りが見たこともないようなところだらけとか、みんなが知っているハズのことを自分だけが知らないとか、
あとは――そうね、強いと言われているような人――魔物でもいいけどそいつを倒したことがあるとか――」
そう言われたオリエンネスト、驚きながら慌てて立ち上がって言った。
「なっ、なんで知ってるの!?」
それに対してスレアが考えながら言った。
「おいおいおい、まさかこのタイミングで――案外いろんなところにいるもんだな」
それに対してリリアリスは頷きつつ、オリエンネストの問いに答えた。
「知っているというよりは私がそうだったから。
で、私以外にも同じような体験をした人が多くて、キミもそうなのかなと思って訊いたのよ。」
するとリリアリス、
「うーん、そうねえ……ということは――ちょっといいことを思い付いちゃった。」
リリアリスは何やら得意げにそう言った、何をする気だろうか。