エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

悠かなる旅路・精霊の舞 第4部 遠き日々 第7章 幻想

第99節 名物女講師

 それから2~3か月ほど経過した。 その日、クラネシアは大きな知らせをもってオリエンネストのところへとやってきた。
 その内容にオリエンネストは期待に胸を膨らませ、3日ほど待つことにした。

 その日は大講堂にて、オリエンネストは特別に講堂の最前列の席に座らせてもらっていた。 しかし、その後ろには1,000人、2,000人、いや、3,000人とかもっとそれ以上―― とても数えきれないような数の人がそこに集まっており、 もはや席がなくて立っている人もいるほどだった。 これから講義をするみたいだが非常に多い人の数に圧倒されていたオリエンネスト、 こんな状況で本当は何が起こるのか少し不安だった。
 そして、講師らしき人が入場すると早速講義が始まった、 そして、その講師こそがなんと、オリエンネスト待望のあの人だったのだ。
「みなさんこんにちは! リリアリスです! 久しぶりねぇ、元気してたー?」
 リリアリスさんだ! 間違いない、あの見た目に緩いしゃべり方、 間違いなくオリエンネスト自身が心のどこかで記憶しているあのリリアリスさんに間違いないようだった。 しかしなんで彼女がここにいるのだろうか?  こんな見知らぬ土地、見知らぬ人々の中にどうして彼女が? オリエンネストは疑問に思っていた。
 あの美形、男性陣からももんくなしの人気であるのは間違いないだろうけど、 お転婆でおっかないことを平然と行う破天荒な性格によって”残念な美女”の地位を不動のものにしているとも言われているような彼女、 だが、オリエンネスト自身が知る彼女もそういう人物だったため、 目の前にいる女性はその人である可能性は高いとオリエンネストは思った。
 さらにあの時に図書館のデータベースで彼女のことを検索したところ、これが見事にヒット。 検索語はまさかの”残念な美女”なのだが、その検索結果はほぼ彼女についての記事ばかりだった。 そして彼女のプロフィールページを見てみると担当科目は数学・物理・化学、そして、高等魔法剣術だという。 高等魔法剣術にとびぬけた頭の良さ、そしてそこから来る変人振りといい、 この人は自分の記憶の中にいる彼女であることに間違いはない、オリエンネストはそう確信した。

「いつもこの大講堂が満員御礼で嬉しいわね。 まったく、お姉さん毎回毎回緊張しっぱなしでしょうがないわよ。 だから間違えたら勘弁ね。間違えていた部分についてはみんなの学力を駆使して脳内で補間してちょうだい。」
 彼女の軽快なオープニングトークのジョークは続き、場を盛り上げていた。冗談を言いながらマジメな話も続く。 簡単なプロフィールを話すも、オリエンネスト的には彼女が何を言いだそうとしても特別意表を突かれた感もなく、 ただただ話に呑まれていた、やっぱり彼女とはどこかで接点があるように思えた。
「ああそうそう、すっかり忘れていたけどそこにいる仏頂面のアシスタントも魔法剣士でーす♪」
「仏頂面で悪かったな」
 仏頂面はもんくを言い返していた。会場はいつでも笑いに包まれていた。 仏頂面のアシスタントの名前はスレアという名前らしい。

 開始8分程度、特別な話をすることなく彼女としては毎回恒例でもある簡単な話から導入した後、魔法剣を使って、 スレアをオーバーキルしていた――スレアも話ではなかなかの使い手だということらしいが、彼女相手では勝てる感じではなかった。 一応それなりに全力での戦いのようだが彼女はほかに被害を出さないようにフィールドを張っているのか、各々の技の規模はその一定の範囲内に収まっている。
 そして、その戦いを見ているだけでもオリエンネストは彼女と自身の中にあるリリアリスのイメージと完全に一致していた。
「ふぅ、実演は一旦このぐらいにしといて。 多分、共通の認識が合っていない部分もあると思うから今のデモンストレーションに関してとりあえず聞きたいことがあったらドーゾ♪ まずは質問ターイム♪  尚、今回の講義の内容については例によってアシスタントや学園関係者に対して話を通していないからアシスタントも含めて聴きたいことがあったら遠慮なくドーゾ♪」
 というと、再び笑いを誘った。
「ならば言いたいことがある! こんな目に合うなんて聞いてな――」
 と、スレアは叫び、もんくを言おうとしたようだけれども、
「あそうそう、毎度のことだけど例によって今のデモの被害者からのクレームだけは一切受け付けないので、そのつもりでお願いしますね♪」
 と言われ、突き返されていた。またしても会場が笑い声に包まれた。 どうやら彼の言いたかったことは儚くも棄却されたようだ。
 質問は流石に人数が多いことから各々の端末からの入力でリリアリスはモニタ越しに確認しているようだった。すると、
「おいおいおい、せめて講義に関係する質問しろよ。なんだよこれ、今回も懲りずにハレンチな質問かぁ?」
 その質問内容一覧が教壇上にあるスクリーンに映し出されると、笑いがどっと押し寄せてきた。
「ってかちょっと! よく見たら魔法剣に関する質問が2%って何よ! 前の4%より酷くね!?」
 会場の笑いは止まなかった。
「残り98%全部が私のプライベートに関する質問ってどんな学園なんだここは! 退学したいのかゴルァ!」
 会場の笑いはさらにこみ上げてきた。 さらにそのお姉さんのプライベートな質問について男女別で見てみると、 女性は97%、男性に至っては99%がそうだった、この学園、どうなっているんだ――
「ったく。まあいいわ、とりあえずいつもどーり、 マニアックな欲しがりさんたちのために私についての質問から答えてあげようじゃあないのよ。」
 会場は大爆笑の渦に巻き込まれていた。