オリエンネストとクラネシアは、今度はその足で図書館に赴き、データベースで彼女のことを調べていた。
「どうだい? 意中の彼女のことは調べられたのかな?」
ある意味、意中といえば意中かもしれないこの状況、否定はしないが肯定もしなかったオリエンネスト、
単に彼女のそのルックスをどこかで見たような気がしたので、彼女について調べることにしたのである。
その様子を見てクラネシアは考えながら言った。
「ごめんごめん、キミの意中の人はお姫様ではなく女騎士のほうだったね。
それにしても彼女はアリエーラという名前だったのか、それは知らなかったよ。」
それに対してオリエンネストは言った。
「いや、思い出したというか感じたんだ、
僕のわずかながら残っているらしい記憶が確かなら、そのお姫様はあのアリエーラさんだ!」
やはりそういうことか――それはクラネシアも予感していたが、それと同時に少々驚いていた、
世間というのは案外狭いものである、こんなところに繋がりがあるとは……と。
そして、クラネシアは考えながら言った。
「キミが彼女の、あの肖像画の”美女”――さしづめ、あの”女神様”の名前を知っているということは、
キミとは何かしらのつながりがあるということは確実みたいだね。
となるとつまり、それほどまでに近いところにつながりがあるとなると、
キミのことは早いうちにわかるのかもしれないね」
それならそうだといいな、オリエンネストはそう思った。
「しかし……図書館のデータベースに彼女の情報があるのだろうか?」
クラネシアは不思議そうにそう言った。
それについては先ほど所長から訊いたことなので間違いないと思うが――と、
オリエンネストは考えると、あることに気が付いた。
「あっ、そうだったね、”美女”で検索をかければすぐにヒットするって言ってたね」
クラネシアはオリエンネストが操作している端末を見ながらそう言った、
オリエンネストはデータベースに”美女”と入力して検索していたところである。
すると――
「アリエーラ! 本当だ! 検索最上位に彼女の名前があるよ!
いや、最上位どころか検索結果って全部彼女についての内容ばかりじゃないか!?
すごいな! これは余程のお方であるに違いない! 本当に絵の通りの方なんだろうか!?」
クラネシアはそう言いつつじっとモニタを眺めていた、
彼女が”美女”で認識が通じる理由はここにあるようだ、それはなんともすごいことである。
そして、モニタは彼女のプロフィールへと遷移した。
「これは確かに”美女”だね、”美女”で認識が通るのもわかる気がするほどの方だ。
だけどすごいね、本当に肖像画の絵の人そのものだ、あの絵を描いた人のスキルの高さがわかるね」
と、クラネシアは彼女のプロフィール画像に見惚れながらそう言った、
確かにあの絵を描いた人は相当な人だとオリエンネストは今更ながらそう思った。
「というより、これ自身が絵だったりしないよね?」
クラネシアはそう言うが、そこを疑っても仕方がない。
とはいえ、プロフィール画像のほうは到底絵には見えなかった。
「クラウディアス特別執行官、ルーティス学園召喚魔法学特任教授並びに魔法学特任教授、および小中高等教育特別みなし教諭――」
アリエーラという人物はやはりクラウディアスで出世された方であることは間違いないようである。
「これを見る限りだと能力は確かに高そうだね、特任教授にもなっているぐらいだからさ。
しかも小中高等教育特別みなし教諭とはなかなか頼られていることの現れかな、そういう人となりなんだろうねきっと。
でも、それ以上は特に情報は――」
クラネシアはそう言うと、オリエンネストは彼女のデータベースの中にリンクがあることを確認した。
「研究室ページと”FCサイト”、それに”クラウディアスXC”というのがあるみたいだけど――」
研究室ページはだいたい想像がつきそうなのでともかく、ほか2つが気になった。
「”FCサイト”ってなんですかね? ”XC”というのもよくわからないけど――」
オリエンネストは言うがクラネシアも分からなかったのでクリックして確認して見ることにした、するとそこは――
「こっ、これは――」
2人はその光景を見て絶句していた。
そこは女神アリエーラ様の美貌を称えるためのページだった。
女神アリエーラ様の美しさを全面的にアピールしている空間であり、彼女の様々なお姿が掲載されていたり、
はたまたデフォルメした可愛らしいお姿がマスコット人形のごとくページ上に掲載されていたり壁紙の背景になっていたりと、
まさにどこそかのアイドルよろしく彼女一色なページだった。
そして、掲示板には多くの人がアリエーラ様について様々に書き込んでいる様子なども見れた。
「FCというのはつまりファンクラブ――」
クラネシアがそう言うとオリエンネストも納得した。
「クラネシア! これ!」
オリエンネストはさらにとある記事を発見してしまった、
その記事には”すべてはここから始まった”というタイトルがつけられていた。
「美しすぎる女教授の歴史的大発表!?」
そう、彼女が幻界碑石のことを発表した際の例の新聞記事の画像が載っていた。
確かに内容的には大きな発表をしたことで大きく取り上げられているが、
それ以上に彼女自身の美貌など個人的なことが幻界碑石以上に細かく書かれていた。
「世間も彼女自身の美しさを支持していて、今でもなお彼女は人気のようだね!」
クラネシアはそう言うとさらに続けて言った。
「ここで出てきたキーワードの幻界碑石ってやつだけど、
記事によるとやはり鍵はクラウディウスにあったみたいだね、
だから女史はクラウディウスに行くことにしたのかな?」
そして、オリエンネストはもうひとつのリンク”クラウディアスXC”を見ることにした、そこには――
「これはクラウディウス王国のサイト?」
オリエンネストは書いてある文字を見ながら言った。
先程のFCサイトとは打って変わってシンプルなレイアウトだが全体的に可愛らしい作りだった。
XCとは何だろう、そう思って見てみたが確かにXCサイトとはそこいらに記載はあるがそれが何なのかまではわからなかった、
単に確認が足りていないだけかもしれないが。
「このレイアウトを設計した人は女性の方かな?
いずれにせよ、クラウディウスってことはアリエーラさんに関する情報が得られるかも知れないね」
クラネシアは考えながらそう言うとオリエンネストはクラウディウス女王からのメッセージとは別に、
”特別執行官からのお知らせ”と書かれているリンクを見つけた。
「そう言えばアリエーラさんって特別執行官って言ってましたね」
オリエンネストがそう言うとクラネシアは頷いた。
「彼女からのメッセージ……言うなれば彼女からの”お言葉”はどんなものなんだろう?」
閲覧してみると彼女の姿写真と共に国の政策についてきっちりと書かれていること、
そしていろんな人からの応援メッセージに対して受け答えなどをしている様も見受けられた、
簡単に言えば彼女の人となりは素晴らしいの一点に尽きるようだ。
「本名はアリエーラ=ヴィルクリスというのか。
確かにこれは”美女”と言われるような人柄であってもおかしくはないね、
見た目もさることながらやることなすこととにかく素晴らしいお人だな――」
クラネシアは絶賛していた。
しかし、そのページの情報はそれだけではなかった、そのページをスクロールすると――
「これはまさか!」
その情報にすぐさま反応したオリエンネスト、
少々興奮気味にそう言うとクラネシアはオリエンネストが見て驚いていた写真に反応した。
「なるほど、特別執行官は1人ではないわけか、それもそうだ。
にしてもこちらの女性もまた綺麗な人だな。
クラウディウスはこんな美女たちによって支えられているのか」
だがオリエンネストは彼女の名前を見ずに言った。
「アリエーラさんがいるってことは、やっぱりリリアさんもいるのか――」
リリアさん? クラネシアはページの内容を見るがどこにも見当たらなかった。
確認できたのはさらにページをスクロールしてからだった。
「リリアリス=シルグランディア……これ程のルックスならアリエーラさん共々人気があるような気はするけれども――」
しかしそちらの美女が掲載している情報といえば、アリエーラが掲載している内容に比べるとかなり細かく、
かつ、なかなか難しい内容だったり、どう解釈したらいいのか困るような内容が目立った。
さらに、いろんな人からの応援メッセージに対して受け答えしているが、
アリエーラとは対象的にしっかり書くところは書き、テキトーなところはテキトーに、
そして、場合によっては厳しかったりトゲがあったりと、案外はっきりとしていた。
というより、良くも悪くも独自の路線で突っ走って意見をしている感じである。
そのため見た目はともかく、性格については人によって割れるところがありそうだった。
「こちらの美女はちょっと変わった価値観の持ち主だね。
それに戦術指南においては厳しめな指摘も散見される――それこそ表現が少々アレだけど――
とにかく男勝りというか、気が強そうな人となりだね」
オリエンネストはその気の強そうな美女の写真をじっと見つめたままだった。
それに気がついたクラネシアはオリエンネストを聞いた。
「なーるほど、そういうことか。
その様子だとキミの夢に出てくる意中の人はこの女性で間違いなさそうだね。
名前はリリアリス=シルグランディア、確かに彼女はキミの言う条件にピッタリのようだし」
さらにページをスクロールすると、最後にリリアリスとアリエーラの2人が仲睦まじくしている写真が掲載されていた、
2人は非常に仲が良さそうに見える1枚だった。
「これは確かに女騎士とお姫様っていう印象の2人だね、一見すると2人ともお姫様って気もするけれども――」
ほか、このページには記載が”準備中”などとある個所がいくつかあったが、今のところ動きはなさそうだ。