エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

悠かなる旅路・精霊の舞 第3部 黄昏の入り江 第5章 もう一つの軌跡

第91節 解放への道筋

 フィリスとアリエーラが戻ってくると、その場はとんでもないことになっていた、それは――
「どうなっているの、これ――」
 そこにはなんと、大勢の帝国兵がリリアリスらを中心に集まっていた。
「あっ、これは先ほどの! お疲れ様です!」
 一人の帝国兵が元気よくそう言った。 そいつはさっきまでエナジー・ルームの前を見張っていたやつだったが、 何故かいなくなっていたので気にはしていた。
「あら2人とも、その様子だとうまくいったようね。」
 リリアリスはそう言うが、これはどういう状況なのか、フィリスは訊いた。
「みんな本土軍からガレア軍への鞍替え希望者よ。 ある程度ちゃんと説得したら、後は自分から声を上げる人が多くなってこうなったってワケよ。」
 すると、そこへ上官のような感じの人がやってきた。
「すみません、大変遅くなりました。 とりあえず、当艦は今クラウディアス本土の様子を探ろうとこの海域に待機している状況が続いています」
 と、リリアリスにそう言った。
「お疲れ。で、直接エルノウズの息がかかった連中の説得は無理そう?」
 それに対して上官らしき人物、マドファルという人物は答えた。
「連中は難しいですね、話を出そうものなら即首が落とされそうで怖いです。 なんせ、本土軍の上流階級ですから待遇も厚いです、本土軍に従事していることで不満はないことでしょう、 説得できそうにありません――」
「そう、それなら仕方がないわね。ま、それはそうと、早速作戦を開始しましょ♪」

 その後、リリアリス率いるクラウディアス軍は作戦を決行、 戦艦に乗っている帝国軍上層部の連中を一気に制圧した。
「なんていうか、案外簡単に行ったんだけど、こんなんでいいの?」
 フィリスは首をかしげながらリリアリスに訊いた。
「でしょ、だからむしろ困っている。 なんでこんなに簡単にうまくいくのだろうか、いろいろと気になることがあるのよね、 自分自身の記憶も不明なところがあるしさ。」
 その不明な記憶に何か秘密があるのだろうか、フィリスは考えていた。 それはそうと、フィリスはリリアリスに”エナジー・ストーン”を差し出しながら言った。
「そういえばすっかり忘れていたけれども、これはどうするの?」
 リリアリスはそれを手に取りながら言った。
「あら、忘れてたわね。とりあえず、これは預かっておくわね。 まずはきちんと調べて、こんなものの出所を確認することから始めることになりそうね。 そしたらその後は――まあ、追々ということで。」
 こんなものが兵器に使われるだなんて何としてでも阻止したいところである。 そのためには出所となる元を断つ必要がありそうだ。
「場合によってはフィリスにも手伝ってもらう事もありそうだけど――」
「まあ、それはそれでいいよ、どーせ特段やることないんだし、必要だったらいつでも言ってよ」
 2人はそんな約束をしていた。

 その後、戦艦はそのままフェラント港へと停泊、 何も知らないクラウディアス民はその戦艦の存在に驚いたが、 中からリリアリスらクラウディアスの中核を担う人物が現れるとみんな安心した。
 そして、その戦艦はとりあえずクラウディアスに置いておくことになった。
「ひとまず、どうするかは保留ってところね。 なんだったら、クラウディアスの偵察艦にしたっていいかもしんないしさ。」
 リリアリスはクラウディアスの重鎮の一人であるヴァドスと話をしていた。
「こんな派手な偵察艦――」
「そもそもクラウディアスはこういうのを持ってないでしょ?  戦闘艦とか、こういうのを持ちたくない気持ちは私もわかるけれども時代がそれを許してくれない。 だからまあ、ディスタードを牽制する程度の装備だけ整えといて、 睨みを利かせておくぐらいの気持ちで配備させておくのはアリかもしれないでしょ?」
 そう言われたヴァドスは悩んでいた。
「まあ、それはあまり気にしていないんだが、問題は船の型があからさまにディスタードの軍艦ってところだ。 対ディスタードって見る分には申し分ないんだけれども、 これだけの規模の船なんだから流石にディスタード以外の用途にも出さざるを得なくなるだろう。 となると、その場合にディスタードの船だから問答無用で攻撃を受けることになりそうなのが――」
 そう言われたリリアリスは悩んでいた。
「確かに、それは否めないわね。だったらこうしたらどう?  まずは武装は実弾を一切使わない、魔法を使ったメルヘンチックなものを重視した武装にする。 必要に応じて花火を武装にするっていうようなものがあってもいいわね、遊び心程度に。 で、見た目もあからさまに不思議の国からやってきたような様相にするとか。 色を変えるだけでも良さそうね、例えば頭おかしいぐらいに白一色とか――」
 ヴァドスは苦笑いしていた。
 そして、その後はその戦艦に拿捕されていた定期船が遅れて到着、 乗客はほとんどいないが、なんとか到着した。
 さらにガレアからやってきた兵隊たちが到着、 帝国とは関係のない別の船だったが、そこからジェレイナが私服で現れると、シェミルが驚いていた。 ガレア軍への鞍替え希望者は彼女に促され、船に乗り込んだ。
 また、ジェレイナと一緒に出てきたヒュウガはリリアリスと一緒に話をしていた。 特段変わった話はないけれども、リリアリスはヒュウガに”エナジー・ストーン”を手渡し、調査をするように言っていた。 そして、ガレアの一団はそのままディスタードのガレア領へと戻っていった。