エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

悠かなる旅路・精霊の舞 第3部 黄昏の入り江 第5章 もう一つの軌跡

第87節 恐るべき力を備えし者

 リリアリスはおもむろに立ち上がると”兵器”を取り出し、鉄格子の前へと向かって行った。
「おっ、おい、次は何をする気だ――」
 対面側で閉じ込められている男はリリアリスのその様を見て驚きながらそう言い、さらに続けた。
「アンチ・エネルギー・フィールド下にある鉄格子はそう簡単には破れないぞ!  下手に力を使おうものならすべて弾き返されて部屋の中ごと木っ端みじんになる!  だから辞めた方がいい!」
 しかし、リリアリスは――
「知ってるよ、この鉄格子が特殊な力を持っていることぐらいね。 だけどこんなもの――」
 リリアリスはおもむろに何かを構えた――
「こんなもの、私にしてみればただのガラクタよ。」
 それと同時にリリアリスを中心に力の渦が発生した!
「なっ、いきなりなんだ!?」
 対面側で閉じ込められている男の隣で寝ていた男が慌てて起き上がると、リリアリスの様子に驚いていた。
「どうなているんだ、あの女は! 力が、力が奪われていくようだ――」
 もう一人の男のほうはとてつもない力を前にしてどうにもならない状態だった。 そして、その力が収まると――リリアリスは”兵器”を振りかざし、鉄格子を勢いよく破壊した!
「なんだなんだ!?」
 牢屋の奥から破壊音が聞こえてきたため、複数の兵隊たちが慌ててやってきたが、 リリアリスの”兵器”の一振りから発せられた風の刃で一度になぎ倒されてしまった。
「雑兵共が、この私に挑むとは1,000年早い! ……なんてことは言わないけど。」
 言ってるじゃねーか。
「とにかく、あんたたちに恨みはないけれども、うるさいし邪魔なだけだからおとなしく眠っていてね。」
 そして、リリアリスは2人の男に対して話しかけた。
「この中にいれば多分安全だと思うわね。それでも出たければ止めはしないけど?」
 それに対し、男2人は全力で首を横に振っていた。 それと同時にカスミが牢屋から飛び出し、リリアリスに促した。
「とりあえずアリエーラお姉ちゃん見つける。私探してくる」
 リリアリスは優しい眼差しでカスミを見送ると、そのまま牢獄の出口を探して歩き出した。
 残された男2人は――
「あれ、多分、クラウディアスにいるっていう手練れの使い手たちだぞ、多分――」
「なるほど、これじゃあ確かに、ディスタードもクラウディアスを落とすことができないわけだ――」
 そんな話をしていた。

 カスミは牢獄を探していると、アリエーラとティオがくつろいでいるところを見つけた。
「あっ、カスミさん! さっき大きな音がしたと思ったらやっぱりですね!」
「お姉ちゃんの力絶対。2人も早く出る」
 それに対し、アリエーラも左手を出し、鉄格子に対して何か魔法を使用していた。 使ったものはリリアリスの使用したそれと似ているタイプのものだった。 そして右手を出し、リリアリスの”兵器”によく似た獲物を取り出すと、鉄格子を破った。
「なるほどです、リリアさんの言うように、 鉄格子の力を一時的に奪った状態で攻撃を与えればいいわけですね!」
 それを見ていたティオはぴょんぴょん飛び跳ねながら喜んでいた。
「アリエーラお姉ちゃんの力も絶対」
 カスミもいつも通り。

 そして、カスミに促されるがままに3人でリリアリスのもとへとやってきた。
「あっ、リリアさん!」
 アリエーラは牢獄の入口付近でスマートフォンを眺めているリリアリスに話しかけた。 なお、その場には4人の兵隊が倒れていた、リリアリスが先んじて倒していたことは言うまでもない。
 それに対しリリアリスは反応した。
「アリ、この船なんだけれども、実はとんでもないものを積んでいるようでね――」
 リリアリスはさらに話を続けた。
 それはヒー様こと、ヒュウガから手に入れた情報―― 先ほど機械越しに話をしていた男からもらっていた情報だった。
「この作戦指揮の責任者はエルノウズ、最近はディスタードのクラウディアスの侵攻についてはこいつに任されているようね。 まあ、それはいいとして、問題はこの船に積まれている武装がすこぶるヤバイものであること、 下手をするとクラウディアスはおろか、そのまま他の国を焼け野原にしてもおかしくはないものかもしれないわね――」
 それを聞いた3人は非常に驚いた。