ようやく得心が行ったフィリス、
リファリウスにフェニックシアの孤児の話について聞こうとするといつもなんだか悲しげな顔をする、
どういうことなのか今まで気になっていた。
アリエーラによると、やはりリセリネアの死が原因だという、彼女の件になると涙を流し始めるのである。
そして、そのまま1時間ほど――酷い時には半日……1日落胆していることもあるほどだという。
しかし、アリエーラはこうも言った。
「ですが――確かに、親しい人が亡くなって悲しいのはよくわかるのですが、
こう言っては何なのですが、彼女が亡くなったのもずいぶん前の話、
あのリファリウスさんなら既に彼女の死を乗り越えていてもおかしくはないはずなのですよ――」
意外にも、アリエーラの口からそのようなセリフを聞くことになろうとは思わなかった。
それもそのハズ――
「確かにおかしいよね、私ってば何やっているんだろうか、らしくないよね――」
と、話の途中でリファリウスがやってきてそう言った。
そう、何を隠そう、アリエーラの言ったことは元々リファリウス自身が言っていたのである。
アリエーラとしてはそんなこと言わなくてもと言い返したことがあったが、
自覚症状さえある異常なほどの悲しみ様ときたら、
リセリネアが亡くなって悲しい以上のもっととんでもない何かがある気がすると考えているようで、
そのあたりの認識はアリエーラとも合わせているのだという。だが、それがなんなのかまではわかっていない。
「リファリウスさん! まだ話の途中なのに大丈夫なのですか!?」
アリエーラはリファリウスを心配しながらそう言うと、リファリウスはどことなく穏やかな表情で言った。
「大丈夫だよ、それに――そういえば、まだ言っていないことがあったと思ってね――」
この話について、これまでのリファリウスからは想像もできないようなその表情にクラウディアス組は驚いていた。
リファリウスは話を続けた。
「覚えてるかなフィリス、フィリスに似たような人を見たことがあったって話だよ。」
そこまでは聞いたことはあった、生命の泉でそんなことを言っていたのは覚えていたフィリス、
だけど、そこから先の話は聞いたことがなかった、それをこのタイミングで言うとは――
「私に似てるって? まさか、フェニックシアの孤児?」
フィリスはそう訊いた。この話の流れに関係あるのか、フィリスは気にしながら”フェニックシアの孤児”と訊いたのである。
すると、リファリウスは意外なぐらいに笑顔で答えた。
「なんていうか不思議なんだよね、フィリス見ているとすごく似ているんだよね。
別に生き写しってわけじゃあないし、他人の空似なんて言っても他人は他人なのかもしれないけれどもさ――」
リファリウスはなんだか嬉しそうだった。
誰に似ているのかというと、それがまさかの――それに対してフィリスは言った。
「そうなの? さっき聞いていた限りだとその娘って性格的にちょっと落ち着いた感じの娘だと思うんだけれども、
本当に私に似てるの?」
フィリスは耳を疑っていた。それに対してリファリウスは言う。
「確かに、フィリスはお転婆というより男勝りって印象だけれどもね。
だけど――彼女の髪の色の印象といい、彼女の笑顔といい――フィリスから感じるものとなんだか似ているんだ――」
お転婆というより男勝り――フィリスとしては否定する要素もなく、むしろ上等と言わんばかりの要素だけれども、
だけど、髪の色だって同じ色の人間がいてもおかしくはないハズである。
それに――顔もそんなにそっくりなのだろうか、フィリスは改めて訊いた。
「髪の色は完全に一緒というわけでなく、彼女はそれこそ真紅というべき色なんだけれども、
フィリスのバイカラーの髪色も金と真紅の色だよね?
夕日に照らされた時のリセリネアさんの髪の色はそれこそ本当にフィリスの髪の色とそっくりなんだよね。
確かに、同じ髪色の人間なんて結構いる方だけれども、
フィリスやリセリネアさんぐらいの赤髪の人間って割と少ない方だと思うんだよね。」
それに対してアリエーラとデュシアは言った。
「そうですね、クラウディアスでもセラフィック・ランドでもルーティスでも赤髪の人って見たことはないと思いますね――」
「純粋な赤という色は確かにいないね。
それこそ、いわゆる赤毛だとか赤髪というのは大体茶色に近い色で、後は黒っぽい赤という色もいたりはするけれども、
フィリスみたいに金髪でも、まだらながらにこれほどはっきりしたような赤色の髪は本当に珍しい色よね」
フィリスは自分の髪を触りながら「ふーん」と言って答えた。
そんなフィリスの髪をカスミとティオはそろってじっと眺めていた。
「なっ、何!?」
フィリスは2人の視線に対してびっくりしていた。
「きっと、学校の先生にならなければ、金庫破りでもしないか心配なんだよ。」
「何でよ。そもそも金庫破りする方じゃないし、騙されて本の内容を転記させられる方だし。
ついでを言うと海賊でもないからな」
リファリウスが言ったことに対してフィリスがそう答えた。
どこかで聞いたことのあるお話だが、2人は波長が合うようだ。
「バーニング・ソードとかやりそう」
「まあ、頑張ればできなくも――って、それも違うし。てか、どれも”まだら赤髪の人”ちゃうし」
カスミのネタにも付き合った。
リファリウスがそのまま去り、入れ違いにリリアリスが登場した、すると――
「なるほどね、で、リファリウスのお姉さんって立ち位置なのね――」
デュシアはリリアリスを見ながらそう言った。
「ええ、そう。違和感ないでしょ?」
「まーた、なかなかの美人さんじゃない?」
「あっははは! 言っても流石のアリには負けるわよ。」
「それは――」
以降は定番のアリエーラの件である。
リファリウスとリリアリス、風貌はどことなく似ていて顔も似ているような気はするし、
その点だけで見れば確かに血のつながりを思わせるビジュアルではあるが、実際にはそうではない。
しかし、性格は似ていて、弟子は師に似るということを思わせる感じだった。
「わーい♪ リリアお姉様♪」
「私もリリアリスお姉ちゃん好き」
エミーリア、カスミはそう言いながらリリアリスにぴったりとくっついてきた。
その上さらにティオまで――
「アカン――これはアカン――」
もはや癒しモンスターとも呼ばれるエミーリアとカスミとティオにトリプルで懐かれるとたまらなかったリリアリス。
「いいですねー! 私もしてみたくなりました――」
アリエーラがそう言うと、癒しトリオはアリエーラに襲い掛かってきた。
「わーん♪ もー♪ しょうがない3人ですねぇ♪」
アリエーラは楽しそうにそう言った。だが、リリアリス、フィリス、デュシアの3人はアリエーラのその様のほうに萌えていた。
「ったく、どー考えても伝説の美女にしか見えないでしょ。」
「これはちょーっと議論の余地があるわね」
「ほんと、これじゃあ男も女も放っておくハズがないわよねぇ?」
その日は女同士、スクエアで楽しいショッピングを繰り広げることになった。
いろいろと楽しい時間を過ごすが、ガルヴィスとばったり出会うことはなかった。
まあ、それはいいとしよう、久しぶりに余暇を過ごした人もいるのだから、
あんな物騒なのがいては流石に台無しである。
そして、今回の主な目的、デュシア、フィリス、ティオの3人をクラウディアスに招待する目的が果たされることになった。
「なんだか悪いわね、以前は蹴っちゃったみたいで。ティオも本当は行きたかったんでしょ?」
フィリスがそう言うと、リリアリスは気さくにティオの顔を見ながら答えた。
「いいのいいの、それぞれ目的があってのことなんだからさ。
ティオりんだってフィリスと目的は同じようなものだし、
フィリス1人だけっていうのも心配だったから一緒に行ったんでしょ?」
そしてアリエーラが続けた。
「それに今回、こうして一緒に行くことになったわけですし、それはそれでいいではないですか?
ですよね、デュシアさん!」
デュシアはワクワクしながら答えた。
「そうね! それにこのままクラウディアスのハンターズ・ギルドに転属するのもいいかもしれないしね!」