エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

紡がれし軌跡 第3部 対決!ディスタード 第7章 アポカリプス

第235節 安穏

 ”ガーデン法”とは、アクアレアを復興した際に採用した手法だった。 かけるコストは少なくありあわせの資材を用いて再建する手段で、 ルーティスの一部や、ライオニットにある”ティレフ・ガーデン”なんかはまさにそれによって建設された拠点なんだそうだ。
 それにより、自然の一部が露呈し、少々メルヘンチックな見た目になってしまうのが難点だが、 それはやはり、設計者たるリファリウスないしリリアリスが精霊族であるが故の事なのかもしれない、 そのため、そこは目を瞑ってほしい。
 話を戻そう。ありあわせの資材といえど、本土軍の攻撃規模は激しく、現地のみの調達でのそれは困難を極めた。 しかし、それでもなんとか資材を集めることはできた、ディスタード本土島の無用な物体をあらかた回収し、 ユーラル復興のために使用したのである。 その通り、ディスタード本土軍というか、”対立ディスタード軍”はもはや解体したも同然である。 ということで、これまで敵対していた本土軍のようなディスタード軍を ”ディスタード帝国軍”、”対立ディスタード軍”、”敵対ディスタード軍”、 それに対してクラウディアス連合軍に味方するヘルメイズやガレア軍を ”ディスタード王国軍”、”正規ディスタード軍”または”親ディスタード軍”と呼ぶことにしたのが今後の会議で決まってきたのだそうだ。 呼び方に差異があるのは、クラウディアス連合軍内部でもそれぞれ呼び方に差異があったためである。 統一すると面倒なので、それぞれニュアンスなどが伝わればそれでよいということになったようだ。
 ヴェラルドにはアクアレアの視察を勧めると彼はその情報を本国に持ち帰って対応を考え始めることにしたようだ。 アクアレアの一部も”ガーデン法”による復興場所ではあるのだが、 クラウディアスにおいては”ガーデン法”を用いてまでするほど財政が困っているわけではなく、 むしろデザイン性ゆえの理由であえて”ガーデン法”によって作られたものという向きが強い。 そして、それはほかの国にもアピールする役割も果たしており、ヴェラルドに見せたはまさに狙い通りのことである。 ちなみに、”ガーデン法”の名の由来はもちろん”ティレフ・ガーデン”である、 ここで作られたガレア軍の新たな拠点の作りがそれなのであり、そこから転じて”ガーデン法”という名前を便宜的につけたに過ぎない。
 それはそうと、最初のヴェラルドの申し出の通り、クラウディアスとキラルディアとの国交は樹立した。 そして後日、”ガーデン法”によるユーラル大陸の復興作業は急ピッチで開始されるに至った。 これにより、ドリストン大陸での勢力図も大きく変わることだろう。

 それはそうと、ティレックスは久しぶりに実家へと急いだ、久しぶりに家でのんびりと過ごそうと、家路についていた。 いろいろと忙しかったが、今はしばらくゆっくりしようと考えたのだった。
「一応形式的な取引ということで、アルディアスの代表ティレックス氏に証人として同席してもらうことにしたよ。 彼とはよく交流があるし、なんといってもいつもいつも暇みたいだから呼ぶことにしたんだ。」
 誰が暇人だ、ティレックスの頭の中に、何故かあの時のリファリウスのセリフがよぎった――。 いやいや、せっかくの休暇なんだからとにかく休むことが先決、あんなセリフなんて気にせず、とりあえず実家へと帰ることにした。
「おかえり、お兄ちゃん♪」
 家の中に入ると、そこには可愛い気な恰好で可愛げに装った女の子の姿が現れた、 その女の子はディアナリス、ティレックス自身の妹である。 いきなりのことだったため、ティレックスはひどく驚いていた。
「た、ただいま、そう言えばお前、いたんだっけ……?」
 それに対してディアナリスは怒り気味に言った。
「バカ! アニキがいない間にアルディアスとルダトーラを見ていたのに、 その言い草はないんじゃないの!?」
 そう言われたティレックスは冷や汗をかき、怯えながら答えた。
「す、すみませんでした、そうです、その通りでございます、 ディアナリスがちゃんとやっててくれたから俺はディスタード軍と安心して戦っていられました、 全部、全部、ディアナリスのおかげです――」
 そう言われたディアナリスは機嫌をよくしながら言った。
「そうそう、それがわかればいいのよ♪ それに――」
 それに――なんだよ、ティレックスは訊いた。
「それにアニキってば、彼女を捕まえて帰ってくるだなんて流石だね♪」
 は!? どういうことだ、ティレックスは焦っていた。 すると、奥の部屋からエプロン姿の彼女が――
「あらティレックス、お帰り♪ 夕食の支度ができたわよん♪」
 それは何を隠そうユーシェリアだった。
「えっ、なんでユーシィが!?」
 それに対してディアナリスが答えた。
「何言ってるのよ、ユーシィ独りぼっちで可哀想でしょう?  それにアニキ、ユーシィに告白したときの状況をいろいろと教えてもらうからね♪」
 は!? どういうことだ、ティレックスは再び焦っていた。 てか、ユーシェリアに告白って!? 確かにした覚えはあったが、なんでそんなこと他人に漏らすんだよ!  ティレックスは焦っていた、すると――
「そうよこの色男!  やっぱり流石ね、ティレックスったら他の男共に比べてこういうところが全然違う! ちゃんとしているもの!」
「ですね! 流石はティレックスさんです!  私もティレックスさんみたいな素敵な人に告白されてみたいです!」
 と、今度はトキアとフレシアが現れると、それぞれそんなことを言った。 それに対し、ティレックスはさらに冷や汗をかき、もはやどうしていいのかわからなかった。
「さあさアニキ♪ 玄関でぼっと突っ立ってないでさっさと家に入んなよ♪」
 ディアナリスとユーシェリア、そしてトキアとフレシアはティレックスの実家で女子会をしていた模様。 せっかく実家でゆっくりとくつろごうとしていたティレックスの計画は、 この女性陣たちによって脆くも崩れ去ることとなってしまったようだ。
「頼むから休ませてくれー!」
「だーめ! ちゃんとユーシィに告白した時のエピソード、ばっちり聞かせてもらうんだからね!」
「でも――ティレックスがちょっとカワイソウだよ! だから私に対してどうなのか、きっちりと事情聴取してみたいな♪」
「なっ、ユーシィ!?」
「いいですね! 素敵です♪」
「ほーらティレックス、観念しなさーい♪」
 アルディアス勢のこの女子チームの結束力は強く、もはや家族ぐるみ同然の付き合いでもあったようだ。

 一方で、こちらのカップルも出来上がっていた。
「ねえスレア、ここって本当にいい眺めだね!」
 フラウディアはスレアにそう言った。 2人は例の塔に、スレアが告白したあの塔に来ており、仲良く横並びに座っていた。
 そして、スレアが言った。
「これが最後だからな――」
 最後というのは――この塔の取り壊しが決定したのである、 流石に老朽化が激しく、崩れる前に何とかしてしまおうというのが目的だが、 石を積んだだけのこの塔の作りとしてはこれ以上補強のしようがなく、 現在もそんなに使われることがないため取り壊しが決定したのである。 しかし、それでは寂しいので、新たな観光スポットになるようなものとして再建する予定があるらしく、 まずは、2人の思い出でもある取り壊し前のこの塔に登って当時を振り返ろうというのが目的だったようだ。
 2人はそのまま南の海を眺めて思いをはせつつ西に沈みゆく夕日を見届けると、フラウディアは立った。
「もう、いいのか?」
 スレアがそう言うとフラウディアは答えた。
「うん! 十分! 新しい塔ができたら一番最初に来ようね!」
「もちろんだ、絶対に一緒に来よう、約束だ!」
「約束だよ!」
 そして――こちらの2人については後は2人の世界なので、これ以上は流石にいいだろう。熱い熱い。冬でも冷房が必要かもしれないな。