翌日、キラルディアのお偉いさんであるヴェラルド特別執行官がやってきた。
それに対応したのはリファリウスとフロレンティーナと、ティレックスも同席していた。
「やあどうもリファリウスさん! あのレイリアさんへの変装――いや、目の保養は本当に素敵な女性そのものですね!
それにお隣のレディもとても美しい存在だ! この国には綺麗な女性が大勢いて、まさに華のある国と言ったところだね!」
そう言われたフロレンティーナは得意げな態度をとり、リファリウスも何故か得意げだった。
なんでお前まで得意げなんだよとティレックスは思っていた。
「私のあのレイリアの姿が目の保養とは光栄ですね。
そこまで言われたら、私も本当にレイリアという女性として生きることにしようかな?」
と、リファリウスは笑いながら言うと、ヴェラルドも調子よく「いいですね!」と言った。
そんなやり取りに対し、フロレンティーナはただにっこりとしているだけで、一方のティレックスは悩んでいた、本気かよ……。
そんなことはともかく、話を続けよう。
「ところで、ものは相談なのですが――」
ヴェラルドは話を進めようとすると、リファリウスが言った。
「一応形式的な取引ということで、アルディアスの代表ティレックス氏に証人として同席してもらうことにしたよ。
彼とはよく交流があるし、なんといってもいつもいつも暇みたいだから呼ぶことにしたんだ。」
だから、そういうこと言うなってティレックスは思った――まあ、事実なんだが。
すると、ヴェラルドは笑いながら話をした。
「あははははっ! いつも暇かあ! そっかぁ! いつも暇なんですね!
確かに、なんだか暇そうにしているなぁ! というよりいつも暇なんて、まるで私みたいだ!」
お前はっきり言うんかい! ティレックスはそう思って頭を抱えていた、
というか、国に関して上に立つ人間であれば、いつも暇とは到底思えないのだが。
「我が国はクラウディアス連合国と、
クラウディアス国とはディスタード本土軍を排除するまでは単なる協力関係でしたが、
今後はあなた方と国交を結ぶことを望む選択をしたのです。ですから――」
それに対し、リファリウスは気さくに話をした。
「それはちょうどよかった!
実はこちらでもどうやってあなた方と国交を結ぼうかと思案していたところですが、
まさかキラルディアさんからそのような申し出を頂けるとは嬉しいですね!」
すると、ヴェラルドはこう言った。
「そこで、1つだけお願いがあります――」
だが、それに対してリファリウスは答えた。
「ユーラル大陸の復興でしょう?」
そう言われたヴェラルドは意表を突かれたかのように言った。
「何故それを!?」
リファリウスはハーブティを手に取り、淡々と説明した。
「小国キラルディア、国土が狭くドリストン大陸でも劣勢気味に置かれている国。
キラルディアとしてはクラウディアス連合軍と結託してディスタード本土軍をユーラルから締め出したことにより、
まさにあなた方はユーラルの希望そのものだ、
しかし、キラルディアとしては実際、ユーラルを立て直すほどの力がないため、何ともしがたい。
当然、ユーラルサイドとしてはディスタード帝国に賠償請求すればいいだけのことだが、
そこで考えたのが、クラウディアスと手を結び、
そして、クラウディアス連合国という大きな勢力とキラルディアとで共同でユーラルを復興している感をアピールすると、
そういう狙いがあるわけだ。
そう、キラルディアはまさにクラウディアス連合国の一員なのだ――ドリストン大陸内での影響力を示すことになるわけだ。」
ユーラルを復興してキラルディアという国の存在感を示そうという狙い?
それによって何の得があるのか、ティレックスは聞くと、リファリウスは答えた。
「もちろん、すべてはドリストン大陸での勢力圏争いをするうえで優位に立つためだよ。
それこそ、クラウディアス連合軍なんていうところに所属してしまえば、それはそれでドリストンの連中だってビビるはずさ。
問題は、キラルディアは地理的にも戦術的にもクラウディアス連合軍の中心地からはかなり遠いところにあるから、
単に連合軍と手を結んだところですぐに叩かれてしまうのがオチだろう。
となると、強力な後ろ盾となるところが地理的にも戦術的にも近いところに欲しいと考えるわけだよ。
つまりはそこで考えられるのがユーラル大陸なのであって、
ここにクラウディアス連合国が支援することでユーラルとしても連合国と関係を持ちたいと考えるようになる。
わかりやすく言うとドリストン大陸の北西部と近くにあるユーラル大陸がそれぞれの国の名称ではなくクラウディアス連合国に置き換えてみればわかるだろう、
これによってドリストン大陸の情勢も一気に変わることになる、キラルディアが一気に有利な攻勢へと転じることになるんだ。
つまり、キラルディアとしては強力なカードを手に入れられることになるんだ、こんな絶好のチャンス、逃す手はないだろう?」
それについてはヴェラルドは冷や汗をかきながら答えた。
「これは参った、すべてお見通しとは流石ですね。
まあ、そう言うことです、すべてはドリストン大陸の反対勢力ににらみを利かせるためですね。
それこそ、ユーラル大陸ほどの国力による加勢があれば十分と言えるほどの勢力は確保できるハズです。
そうなれば敵のほうも迂闊にキラルディアを攻めようなどという気も起らないでしょう」
それに対してリファリウスは得意げに答えた。
「ちなみに、ユーラルの再建にかかる被害額を算出したところ、かなり莫大な額になることが想定されますね。
まず、ディスタード本土軍の賠償ではユーラルの再建を目指すのはほぼ不可能です、
ヴィザントなどのディスタード本土軍への協力勢力の分を含めても困難と考えます。
さらに問題は、クラウディアス連合軍で出せる費用を試算したところ、
これでもやはりユーラルを復興するには到底届きません――」
そんな――ヴェラルドはがっかりしていた。すると、リファリウスから妙案が。
「ですから、我々としては”ガーデン法”を行使すれば問題なくできそうなことを提案します。
お金がないの分は技術と知恵を使って補うという手法です。それでよければの話ですが――」
”ガーデン法”とは? ヴェラルドはそう訊くと、リファリウスは立ち上がって言った。
リファリウスに合わせて、フロレンティーナも一緒に立ち上がった。
「なんでしたら直接御覧になられてはいかがでしょう?
言ってしまえば少々セコイ手段ではありますが、きっとお気に召されるかと思いますね。」