リリアリスはさらに2人に詰め寄って話をした。
「ところでなんでいきなり核兵器の話?」
シエーナが答えた。
「リリアさんだって今まで気にしていたでしょう?」
「ある程度はね。
だけど、ルーティスの文献では使用しても古のクラウディアス王国を沈黙させることはできなかったみたいだけど?」
カイトは頷いた。
「流石は調べているだけのことはあるね。
しかし、それを無力化させた方法については一切記述がないんだ。
しかも、エンブリアにおいては核兵器については楽観視されている、
どうしてなんだろうと思ったんだけど――」
リリアリスは頷いた。
「論より証拠、核兵器と言えるかまでは怪しい所だけれども、実験してみたわよ。
理論値上は確かにやばいやつだけれども、実践値は見るも無残な結果だったわ。
理論値上は間違っていないハズだから何かが足りていないことは確実ね――」
エンブリアにおいては普通の核兵器がうまく機能しないようだ、何が足りないのだろうか、
だが、そのおかげで危機が去っているのも確実である。
「何が足りないと思います? こういうのは流石に私たちの見立てだけではわからないので――」
リリアリスは答えた。
「こういうのは突き詰めたら全世界がはじけ飛ぶような兵器が出来上がることは確実なんだけど、
でも――それもあくまで理論値の話であって、実際が怖いから机上だけでやめておいたわ。
いずれにせよ、何か枷がついているのは確実なのかもしれないわね。」
枷とは? カイトは訊いた。
「わからないけれども、いろいろと考えた結果、そこさえクリアーできれば悪魔の兵器は完成だと思うわね。
なのに悪魔の兵器たらしめる効果が確認されていないということは、
使用されていないのか、それとも何かしらの制限があってやっぱり使用しても無力のままであるということになりそうね――」
とにかく、使用できないというのならばそれに越したことはなさそうである。
話はさらに続いた。その際、彼らをゼーランド大陸のブローゼン地方へと送り届けることになったリリアリス。
「なんだか悪いね、わざわざ」
カイトがそう言うと、リリアリスは得意げに言った。
「悪いと思ったら頼まないでよ。」
カイトは苦笑いしていた。
「えー、手厳しいなあ、もう――」
そして、リリアリスは本題に移った。
「ところで、そもそもクラウディアスには何をしに?
あまり話したがらないことと、ゼーランドに行くっていうことは、やっぱりあいつ関連?」
シエーナが答えた。
「クラウディアスに来たのは本当にただの観光目的です。
不思議に包まれた召喚王国クラウディアス、セラフィック・ランドに並んでエンブリア創世の時代より重要な聖地のひとつ。
セラフィック・ランドが消滅していく現状と、その際に飛来してくる魔物との因果関係、
そしてその謎を追って失踪してしまったリアスティン王の謎……」
リリアリスは間髪を入れずに訊いた。
「なるほど、調べていたのね。で、何かわかったことがあった?」
カイトはシエーナと顔を見合わせてから言った。
「いや、新発見と言えるものはなかった。
むしろリリアさんが考えている通りの筋書きでほぼ間違いないことが何となくわかったんだ」
それに対してリリアリスは得意げに訊いた。
「なによ、私の考えている通りって。
もったいぶらずにちゃんと言いなさいよ、ちゃんと”こういうことでした”ってさ。」
カイトは言い返した。
「いやいやいや、ここであえて言わないのがいいんじゃないか。
だって、冒険は始まったばかりなのに、こんなに早くネタバレしてしまうなんてあまりにも面白くない」
それに対してリリアリスは反論した。
「ネタバレとか言わないの。
第一、物語は既に第2部の終わりもいいとこ、そろそろそういう話が出てきたっておかしくはないでしょ。
ま、いずれにせよ、どういうことかはそのうちわかるから別に言う必要ないんだけどさ……
ってか、そんなメタな話しするんじゃないわよ、つられちゃったじゃないのよ。」
シエーナは思った、自分から言っているような気がする、と。
そして、そんな話をしている中、リリアリスはいいことを思いついた。
「ゼーランドってことはやっぱり”あいつ”がいるのよね?」
そう言われてカイトが腕を組みながら言った。
「そうさ。なるほどね、どうやら”あいつ”をユーラルに送り込んでほしい、と、そういうわけか――」
それに対してリリアリスはやや驚き気味に言った。
「あれ? 私が絡むと”見えない”んじゃなかったっけ?」
シエーナが答えた。
「はい、見えませんが、見えたのは”あいつ”さんのほうですね」
リリアリスは楽しそうに言った。
「なーるほど、”あいつ”はもはやユーラルに行くことが確定しているってワケね。」