エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

紡がれし軌跡 第3部 対決!ディスタード 第7章 アポカリプス

第228節 安穏

 幻界碑石――そこにはフラウディアとスレア、そして、フロレンティーナがいた。
「お姉様、そんな足でここまで来て大丈夫でしたか?」
 フラウディアは心配そうにそう言った。 フロレンティーナは左足のケガが治っておらず、杖を突いて歩いていた。
「大丈夫よ、いつまでもベッドの上にいたくなくてここまで散歩してきたのよ。 それに――ここってなんだか落ち着くのよね、リリアもアリもそうだって言ってたけど。 何故かしらね、とても不思議だわ――」
 スレアは石碑を見上げながら言った。
「確かにそうなんだよな。 セラフィック・ランドの上空に現れる魔物ってのもこのあたりめがけてやってくるってんだろ?  意外と俺らと同じ心理なのかもしれないな」
 フロレンティーナは考えながら言った。
「じゃあ、もしかしたらセラフィック・ランドが消えているっていうことのヒントになるのかも?」
 うーん、どうだろうか――何とも言えないが、確かにヒントになればと願うばかりである。
「ごめんねあんたたち、これからデートだっていうのにわざわざこんなところまで――」
 フロレンティーナは申し訳なさそうに言うとフラウディアとスレアは言った。
「いえいえ! 私とお姉様の仲ではないですか! そんなこと言いっこなしですよ!」
「あんたにはお世話になっているからな。 こんなことでよければいくらでも言ってくれ」
 そう言いながら2人はその場を後にした。
「ふふっ、本当にいい2人ね――」
 フロレンティーナは2人の後姿を眺めながらそう言った。

 そして、今度はその幻界碑石のもとにとある男がやってきた、そいつは――
「来たわね」
 フロレンティーナはそいつの存在に気が付いた。
「よう、久しぶり――」
 そいつはレイビスだった。 2人の仲についてはある程度進展を見せていたのだが、とある事情によって距離を置いていたのである。 それにより、スレアとフラウディアの2人のように、こちらの2人が一緒のメンバーとして駆り出されることはなかった。 なお、同じメンバーにしてほしくないというのはフロレンティーナとレイビスきっての要望だったため、 リリアリスもそのようにしていたようだ。
「ユーラルはどうだった?」
 レイビスが頷いた。
「大丈夫、フローラがやったことについてはこの俺が一切合切抹消してきたからな。 これで晴れて、フローラは善人そのものだ」
 フロレンティーナは笑いながら言った。
「それはありがとうね――」

 フロレンティーナは話を続けた。
「どうかしら、ちょっと時間を置いたら変わった?」
 それに対し、レイビスはドキドキしながら話し始めた。
「ど、どうだろうか、そもそも俺としては、女性を相手にするのってそんなに経験がないから、あんなものだと思っていたけど――」
 すると、フロレンティーナは言った。
「はぐらかさなくったっていいからこっちに来なさい」
 そう言われ、レイビスはフロレンティーナの隣へと歩み寄り、その場で座り込んだ。
「足に大けがしたって聞いたけど――大丈夫か?」
 レイビスは包帯を巻いている彼女の左脚首を見ながら心配していた。
「大丈夫よ、しばらく安静にしていればね。それよりもどうかしら?」
 レイビスは悩んでいた、するとその時――
「フローラ!?」
 なんと、フロレンティーナはレイビスの胸の中に飛び込んでいった! そして、2人はそのまま抱き合っていた――
「ふ、フローラ……」
「フェライト、私――」
 ところがしかし――スレアとフラウディアのような展開にはならなかった、何故かというと――
「ね、姉さん――」
 レイビスは無意識のうちにそう言った。それに気が付いたレイビスははっとすると、お互いに少し離れた。
「そう、”姉さん”ね、なんだか知らないけどそんなことだろうと思った。 フェライト、私たち別れたほうがよさそうね」
 そっ、そんな! フェライトはそう言うと、フロレンティーナは話を続けた。
「だって、今言ったでしょ? ”姉さん”って。多分そういうことなのよ、私たちの関係は」
 確かにそうだった。 2人の恋仲は進展すればするほど、お互いに違和感を大きく感じてしまうようになっていた。 それで距離を取ろうと考えたのだが、どうやら効果はなかったようだ。
「私もそう、あんたを感じた時、やっぱりどうしても弟というか、身内を抱いているようにしか感じないのよ、だから――」
 そう言われ、レイビスも考えた。
「そっか、俺があんたを初めて見たときに感じたのはそれだったのか――」
 それに対してフロレンティーナは楽しそうに言った。
「うふふっ、でも、あんた優しいじゃない、そこは私としてもポイントが高い所よ。 そうなだけにちょっと名残惜しいわね――」
 すると、レイビスはフロレンティーナをいきなりお姫様抱っこして抱え上げた。
「えっ、ちょっと、何!?」
 レイビスは前向きに言った。
「身内だったらむしろ全然かまわないだろ。 それに、そろそろここにいるのも飽きたから、どうせならこのままどこかで何か食べにでも行こうぜ、お腹すいたしな」
 フロレンティーナは楽しそうに答えた。
「ふふっ、それもそうね。それに……私は弟に対してはとても甘いのよ。 だから後でたくさん可愛がってあげるわ――ウフフフフ……」
 それに対してレイビスは得意げに言った。
「やれやれ、わがままな姉貴だな」