3人は何とかしてマダム・ダルジャンに乗り込んだ。もちろん、ティレックスとユーシェリアが先に乗り込んでいた。
「ごめんなさいね、私のせいでみんな、乗り過ごしたみたいで――」
フロレンティーナは申し訳なさそうに言うと、ユーシェリアが申し訳なさそうに言った。
「そんなこと! もとはと言えば私が足を引っ張っちゃったせいですから――」
それに対してリリアリスが。
「脱出手段を考えてあるから気にしなくても大丈夫よ。」
「でも、どうするんだ? この船は置いていくんだろ? どうやって脱出するんだ?」
ティレックスはそう訊いた。
「ええ、残念だけど、この子はこの船を吹っ飛ばすために予定通り運命を共にさせることにするわ。
名残惜しいけど、ユニットがちゃんと起動していないと計画は成立しないからこの子とはオサラバね。」
「2号機は戻ってこないのですか?」
ユーシェリアは心配そうに訊くとリリアリスは答えた。
「避難させておかないとみんな巻き込まれて手遅れになっちゃうから、特定地点にまで離れるよう言っておいたわ、
だから戻ってこないわね――」
そして、リリアリスは手元にカードを出して数を確認していた。
「スリル満点ね、こんなことになるなんて。
ヒー様に返せるカードはよくて1枚だけってことになりそうね――」
リリアリスはカードを2枚取り出し、ティレックスとユーシェリアに渡した。
「ごめん、ちょっと代わりにいいかしら?」
そしてリリアリスは予定を伝えた、その話は驚愕の内容だった――
そして、マダム・ダルジャンIIを停止させ、戦艦を見守っているアリエーラたち――
「リリアさん、大丈夫でしょうか――」
アリエーラは心配そうに見つめていた。
「アリ、リリアなら大丈夫! リリアのことだもん、いつも通り大丈夫よ!」
フィリスはアリエーラにそう言って励ましていた。
「おい、空を見ろ!」
クラフォードがそう促すと、全員で空を見上げた、すると――
「まさか第2波! もう出ていたのか!」
スレアは気が付いた、敵の後続は絶え絶えになっている状況が見て取れるが、
1対1体が大きめのサイズの魔物だったことが確認できた。
「で、あの女はあいつらごと戦艦を吹っ飛ばすというわけか。まったく、どうなっているのやら」
イールアーズは呆れていた。
「あの子――とんでもないことをする気ね、なんだかそれが伝わってくるわ――」
ララーナも心配そうに眺めていると、アリエーラが心配そうに言った。
「リリアさん、まさか、そんな――」
フィリスはどうしたのか聞いた。
「リリアさんたちがここに来ます!」
なんだって!? 全員が驚いた。
リリアリスがいつ来るのだろうか、そう気にしていると、戦艦は突如として大爆発した!
あまりの爆風の勢いに、全員がその場で踏ん張っていた。
そして、爆風が収まると全員でそれぞれ辺りを見渡していた。
「えっ、来るんじゃなかったか!?」
クラフォードは困惑していた、どうなっているんだろうか。
とにかく、仕組みはこうである。
これまで魔法燃料に引火したら云々の話が合った通り、まさにそれを利用してのことだった。
それこそエネルギー・バースト・システム・ユニットはもはや核燃料みたいなもので、
これ自身が兵器と言っても過言ではないのである。
だからこそ、リリアリスはこれの仕様を完全に自分独自のものにしているわけだが――
今まではこのユニットにはオーロラ・カード、レジスト・イニシエータが取り付けられているそれが取り付けられていたが、
これはシステムのエネルギーを制御するための代物である。
そして、それを取り外したことで内部のエネルギーは不安定になり、いつ暴走してもおかしくないような状態となった。
それに衝撃を与えることで爆発を起こすことになるのだが、
当初の予定ではその役目を性能を下降修正した天の裁きシステムで実行するはずだった。
だが、その予定は変わり、今回はフロレンティーナを助ける際に使用した魔法がそれの役割を果たした。
単にオーロラ・カードの上に風魔法を放っただけだが、この魔法を止めることで、瓦礫が落下する。
落下した反動で火花が飛び散り、そこいらにある化石燃料に引火するのである。
それがやがて魔法燃料に引火し始めると、戦艦中に一気に燃え広がる。
もちろん、それは横付けしてあるマダム・ダルジャンにも達するようになっていて、
そこにあるエネルギー・バースト・システム・ユニットに引火すると大爆発待ったなしである。
もちろん、砲台側に取り付けられているユニットも同様である、
あちらはカードが付いたままだが、片方の爆発の影響でユニットが破壊してしまえば同じことで、
そちらのエネルギーも殻が破れることで爆発が起こることだろう、つまり、戦艦は2回の爆発によって木っ端微塵になったのである。
「お姉様――」
シェルシェルは心配そうに戦艦のほうを向いたが、そこには戦艦の姿が見当たらなかった。
「完膚なきまでなくなってしまいましたね、すごい恐ろしい力です。
だからあの子は危険な力を他の人に使わせたくないということなのでしょう」
ララーナも心配そうに戦艦があったほうを眺めていた。
「見て! 魔物もいなくなっています!」
フラウディアは空を指さすと、確かに魔物の姿はどこにもなかった。
「おい、まさか、船と運命と共にしたとか、そういうことはないよな、アリエーラさん!」
スレアは訴えるように言うと、アリエーラは答えた。
「いえ、この感じ、リリアさんは――いえ、みなさん、ちゃんと生きています!」
しかし、どこにいるのだろうか? すると、フィリスが気が付いた――
「みんな! 上見て!」
彼女がそう言うと、全員で上を見上げていた、そこにはなんと!
「まさかリリアさん、そんなこと――」
ディアナは心配そうにそう言った。上空には大きな板状のものが数枚と、5人ぐらいの人影が現れたのである――
「あれ? ホロウ・グラフ・システム・ユニット?」
フィリスはそれに気が付いた、大きな板状のものに混じってユニットが宙を浮いていたようだ。
そして、そのうちの4人はふわっと浮いたような感じでマダム・ダルジャンに着地し、
リリアリスを含めたそれ以外のものは船を通り越して海の中に落水した――
「リリアさん!」
アリエーラは心配そうにリリアリスに向かって叫んだ。
「やれやれ、世話が焼けるな、どれ――」
イールアーズは海の中に飛び込もうとすると、
アリエーラとフィリスが真っ先に飛び込み、リリアリスのもとへと泳いでいった。
「行く必要はなさそうね――」
ディアナはイールアーズにそう言うと、イールアーズは飛び込むのを辞めた。
「しかし参ったわね、いろんな能力を駆使してこんなことまでするなんて――」
フロレンティーナは嬉しそうな表情でリリアリスのほうを向いていた。
「まったくだ、これはかなわないな。
でも、そうまでして俺たち全員を助けたんだ、頭が上がらないよ」
ティレックスは呆然としながらそう言った。
「そうそう、今のだって、
自分のことよりも私たちがちゃんと着地できるようにって頑張ってくれたんだから!」
ユーシェリアはそう言った、なるほど、やはり風魔法みたいな今の着地の仕方はそういうことだったのか。
「お姉ちゃんは救世主」
カスミはいつものトーンでぼそっとそう言った。姿は普段通りに戻っていた。
「リリアさん、大丈夫ですか!?」
一方、海に飛び込んだアリエーラ、リリアリスに訴えかけた。
「アリ、私――なんだかとっても疲れちゃった。
そろそろ休まないと流石にあなたに怒られるからいい加減に寝るわね、お休みなさい――」
それに対してフィリスから苦言が。
「こーら、寝るのはいいけど、流石にこんな状態で寝るのは辞めてくんない?
海から引き揚げるのも面倒だし――」
「ああ、それもそうね、じゃあ上陸してから寝るわね。」
「ご飯もちゃんと食べてくださいね!」
「えー? もう、流石に疲れたんだけど――」
「ダメです! ちゃんと食べてください!」
「わ、わかったわよアリ、ちゃんと食べるから――」
その光景を船上から眺めていた7人はほっとしていた。
「まったく、大した女だ――」
イールアーズはその場で腰を下ろしながらそう言った。
「ええ、だからみなさん、安心して彼女についていくわけですね!」
そしてディアナがそう言って話を締めた。