カスミは目の前の魔物を次々と倒しつつ先を急ぐと、今度はティレックスとユーシェリアが倒れている光景が!
「二人とも、しっかりする――」
カスミは2人の身体をそれぞれゆすると、その近くから魔物が――
カスミは瞬時にその気配を察すると、目の前には先ほどと同じタイプの魔物、
先ほどよりも能力の高そうな個体が――
「こいつ、いつの間に!」
カスミは驚いていた、突然現れたため、スキを突かれたのである。
「マズイ、やられる!」
魔物は拳を振りかぶり、カスミに攻撃を仕掛けている状況だった――しかし、その時!
「えっ!?」
カスミは驚いた、魔物の身体にまるでダーツのように何かが突き刺さったのである。
その物体は間違いなく、例の”兵器”だった!
「お姉ちゃん!」
カスミは後ろを振り返ると、そこにはリリアリスが武器を投げたような姿勢で佇んでいた。
「まーったく、こんな小さな子に暴力を振るおうだなんて、見上げた根性の魔物ね。」
リリアリスは右腕を握りながら得意げにそう言った。しかし、魔物がうごめき始めた。
それに気が付いたカスミは即座に反応し、
魔物に立ち向かってリリアリスが投げた剣を左右2本の腕でがっしりと抑え始めた!
「逃がさない! 私、お前死ぬのこのまま見届ける!」
カスミはそのまま魔物に”兵器”を深く食い込ませると同時に、
もう1本の腕で”風精かまいたち”を心臓があると思しき部位に向けて思いっきり突き刺した!
「観念する、今すぐ死ぬ、楽になる!」
魔物は激しく抵抗するが、カスミは魔物をしっかりにらめつけて放さない。
「あらまあ、カスミんったらずいぶんとご機嫌斜めのようね、
そんな状態のカスミんと居合わせることになった魔物は不運でしかないわね。
なんといっても羅刹の名を冠する幻獣は王国屈指のソード・マスター様だから死ぬまで放さないわよ、
覚悟することね――」
リリアリスはそう言いながらティレックスとユーシェリアの傍らに寄り、2人を起こした。
すると、先に起きたのはティレックスだった。
「うっ、リリアさん、俺は――ユーシィを守りきれた――のか――?」
意識がぼんやりしているティレックス、今言ったことから何かがあったのは間違いないが、
リリアリスはそれを察してあえて聞かなかった。
「ティレックス、とりあえず、ユーシィのことを抱えて外に出なさい。」
リリアリスにそう促されると、ティレックスはユーシェリアをお姫様抱っこし、
そのまま外へと脱出しようと立ち上がった。
それと同時にティレックスは言った。
「リリアさん、この瓦礫の向こうにフローラさんがいるんだ!」
リリアリスは頷いた。
「ええ、もちろん彼女も助けていくわ。
だからあんたは先に外に出てマダム・ダルジャンに隠れていなさい!」
そう言われたティレックスはユーシェリアを抱えて早々に脱出した。
リリアリスはもう一本の”兵器”を使って瓦礫の山を少しずつ駆除していた。
「早くしないと手遅れになる、そうなる前に何とかしないと――」
すると、魔物を絶命させたカスミは、リリアリスに”兵器”を渡した。
「ありがとう、カスミ! そしたら次はこっちよ――」
リリアリスはそう言うと、瓦礫の山に隙間を作っていた。
カスミはその隙間に入り込んでいった。
「これ大変ね、何か他に方法がないかしら、そうねぇ――」
リリアリスは悩んでいた。
カスミは瓦礫を抜け、さらに進むとそこには燃料が大量に漏れている状況が。
その奥には左半身が挟まっていて身動き取れなくなっているフロレンティーナの姿が!
「お姉ちゃん!」
カスミは彼女のそばに寄った。
「あら、意外な子が助けに来てくれたのね、
さっきまでティレックスとユーシィの2人が助けを呼びに行くって言ってたのに、
周りは魔物だらけ、彼らにはちょっと厳しい作業だったようね――」
フロレンティーナはさらに続けた。しかも足からは流血が――
「まあ、こういうことよ。
だからもう覚悟を決めたわ、私のことはいいから早くお逃げなさいな」
だが、カスミは6本それぞれの腕でその瓦礫を持ち上げようとしていた。
「やだ、お姉ちゃん、絶対に助ける!」
しかし、カスミの力では持ち上がらず、それどころか――
「うっ、痛い、いたたたたっ――」
瓦礫の置き方がちょうど悪く、フロレンティーナの足に刃のような突起がちょうど刺さるような感じになっていた。
確かに、動かしたら痛いか――
それでいて辛いのが、周囲は燃料まみれ、特に刃の武器なんて使おうものなら火花が散って引火すること請け合い、
そしたらその後どうなることか――そう考えるとどうしようもなさそうだった。
すると、少し遠くから大きな音が――
「こっ、今度は何!?」
フロレンティーナは驚いていると、そこからリリアリスの姿が――
「痛った、まあいいわ。でも、今の衝撃はちょっと問題だったかしらね、急がないと――」
リリアリスの視線の先にはは炎が!
とにかく、リリアリスはその場に氷魔法を吹きかけていたが炎は消えることなくそのまま燃え続けていた、
時間稼ぎぐらいにしかならないだろう。
リリアリスはフロレンティーナの元へとすぐさま駆けつけると、リリアリスは力づくで瓦礫の山を持ち上げた!
「えっ、りっ、リリア!」
「カスミ! 早くフローラ出して!」
そう言われたカスミは6本の腕を使って慌ててフローラを引き出した!
そしてリリアリスは片手で瓦礫を持ったまま、その場にオーロラのカードを1枚落とした。
「リリア、今、カードが――」
フロレンティーナが心配しながら言うと、
リリアリスは風魔法をカードに吹き付けつつ、瓦礫をその場に降ろした。
すると、瓦礫は風魔法のあおりを受けてぷかぷか浮いていた。
「我ながらいいアイデアね! これを導火線にしましょう!」
そう言いつつ、フロレンティーナをお姫様抱っこし、その場を去ることにした。
「お姉ちゃん、どうやって瓦礫の山を?」
さっき吹っ飛ばしていた瓦礫、確かにどうやって退けたのだろうか、カスミは訊くとリリアリスは答えた。
「力づくでぶっ飛ばしたのよ。
ちょっとだけ重力をいじってやりやすくしたんだけど見てのとおり、引火しちゃったから早く出ないとやばいわね――」
「でも、氷魔法で遮断してるじゃない?」
「魔法を使ってることは変わりないからね、油による引火は防げても魔法燃料によるエネルギーには逆効果だわ。
あそこでブロックしているのはあの部分だけで孤立していたから、火だけでも燃え移らないようにしただけよ。」
ガソリンと魔法燃料とが混じっている状況だともはや何が何やらという感じだが、
リリアリスはそれを的確に見抜いていたようだ。
「とにかく、早く脱出するわよ! フローラ、ここ抜けられる?」
フロレンティーナはリリアリスが破った瓦礫の山を何とか抜けた、
そこだけは細くて流石に1人ずつが通らないといけないような感じだったのである。
そして抜け出すと、リリアリスは再びフロレンティーナを抱え上げた。
「ごめんね、できることならイケメンの男児をご所望だと思うけれども。」
それに対してフロレンティーナは得意げに答えた。
「まあね、それはそうなんだけど。
でも、私としては相手がリリアでも満足よ。
こんな美人で勇ましい女性だったら申し分ないわ――」
それに対してカスミはぴょんぴょん飛び跳ねていた。
「そう、リリアお姉ちゃん綺麗カッコイイ大好き、私の鑑」
2人にそれぞれ言われたリリアリスは少し照れていた。
「もう、そんなに褒めたってバカがつけあがるだけよ。とにかく、さっさと脱出するわよ。」