エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

紡がれし軌跡 第3部 対決!ディスタード 第7章 アポカリプス

第222節 覚悟

 そして、南の海からいよいよ”あれ”が到着したのである。 ここから南と言えばルーティス、そう、つまり――
「シェルシェルさん! ララーナお母様!」
 アリエーラは2人の姿を見ながらそう言った、つまりはその2人がルーティスから来たのである。 その足はと言うと――イールアーズはどういうことなのかを訊いた。
「お前、そういう話は全然聞かないからな。 この2人はそもそもティレフ・ガーデンに出向いてガレア軍とヘルメイズ軍の援護に行ってもらっていたわけだ。 で、リリアさん曰く、この戦艦を吹っ飛ばすそうだから、 2人に俺らがルーティスに置いてきたその船を回収しつつ、ここに来てもらうことにしたわけだ」
 クラフォードがそう言うとイールアーズは呆気に取られていた。
「はぁ? 吹っ飛ばすって、どうやって!?  それにこの船に乗って脱出できることは大体見えてきたが、魔物はどうするんだ?  戦艦吹っ飛ばすにしても流石に魔物だって追跡してくる、そんな中でいくら最速の船でも逃げ切れると思うのか?  この戦艦みたく、襲撃されるのがオチだ」
 すると、そこへリリアリスが現れ、得意げに言った。
「この世界には”生体マグネタイト”っていう魔性の鉱石があってね、通称”魔物を呼ぶ石”、普段の状態だったらともかく、 刺激を与えると、その石に魔物が寄ってくるっていう曰くつきの石があるのよ。 それをさっき砲台の燃料にしちゃったから、敵はそこに集中するようになっているのよ。 で、そこで戦艦吹っ飛ばせばミッション・コンプリートってなわけよ。」
 そこでもう一つ質問が。
「戦艦吹っ飛ばすって言うのは、魔法か何かですか?  すみません、そういう”モノ”の持ち合わせているようには見えなかったので」
 と、ディアナが言うと、リリアリスは再び得意げに答えた。
「それなら大丈夫、代用品を即席で作ったから。 でも、威力は下手をすると例の天の裁きクラスぐらいはあるわね。」
「いや、それこそまさに例の”天の裁き”じゃないだろうな、あれは使わないって言ってた気がするが」
 クラフォードがそう言うとリリアリスは答えた。
「クラウディアスのシステムの”天の裁き”はアップデートで出力を下方修正してあるから、 この間みたいなパワーは全然出ないわね。 でも、今回はそれを使用して、”導火線”に火をつけようって予定ね。 それでどうなるかについては――実際に見てみた方が早いわね。」
 そして、リリアリスは全員船に、マダム・ダルジャンIIに乗るように促すと、 リリアリスは問題に気が付いた。
「あれ!? ティレックスとユーシェリアは!?」
「フローラさんと、カスミさんもいません!」
 アリエーラがそう言うと、リリアリスは振り向いて言った。
「カスミまで――さっきまでそこにいたのにどこへ行ったのかしら――」
 すると、戦艦の各所から爆発が!
「マズイわね、吹っ飛ばす以前に船が沈みそうね――」
 リリアリスは悩んでいた。そこへ彼女はすぐさま決断した。
「私が探してくる! みんなは先に船に乗って戻ってて!」
 そんなんで大丈夫なのだろうか、アリエーラは訊くとリリアリスは得意げに、そして、アリエーラの目を見ながら答えた。
「私は大丈夫よ、アリ、ここは私に任せなさい!」
 その時のリリアリスの目は本気だった、その様を見て、アリエーラは頷いた。
「リリアさん、必ず、戻ってきてくださいね!」
「ええ、みんなを連れ戻してくるわね!」
 そしてリリアリスは再び戦艦のほうへと挑んでいった。
「戦艦の内部にまで結構魔物が入り込んでいるってわけね、いいわ、相手してあげる。」
 リリアリスは”兵器”を取り出し、魔物の中へと突進していった。 だが、その時の彼女の表情はいつもの得意げなものではなく、あからさまな本気モードだった。

 一方でティレックスとユーシェリア、戦艦の格納庫内に取り残されていた。
「ティレックス、どうしよう……」
 退路は魔物たちによって完全にふさがれていた、しかも――
「これは――人一人助けている場合じゃなくなってきたかな、ちょっと覚悟が必要かもしれないな!」
 ティレックスは剣を振るい、目の前の魔物に攻撃を繰り出していた。
「まだまだだ! もういっちょ!」
 ティレックスはさらに攻撃を繰り出した。
「これでどうだ!」
 そしてさらに一撃、強烈な切り落としで魔物を勢いよくあしらおうとした、だが――
「ぐはっ!」
 魔物は倒れず、そのままアッパーを喰らって思いっきり吹き飛ばされた。
「ティレックス!」
 ユーシェリアは心配しながら言った。
「ユーシィ、逃げろ、こいつは強いぞ――」
 魔物が前ににじり寄ると、今度はティレックスの前にユーシェリアが――
「ティレックスは私が守る! 絶対に私が守って見せるから!」
 だが――魔物の背後からさらに数匹の魔物が――
「ユーシィ! ダメだ、逃げるんだ!」
 ティレックスはそう叫ぶが、ユーシェリアは剣をしまい、ティレックスを抱えながら言った。
「ううん、もとはと言えば私がへまをしたせいだし―― それにどうやら私たち、もう終わりみたいだね、逃げる場所なんかもう――」
 彼女がそう言うと、ティレックスは大きくため息をついた。
「どうやら、そうみたいだな。 俺たちはどうやら脱出計画通りにはいかないってことか――」
 そして、ティレックスはなんとか立ち上がり、ユーシェリアをかばいながら言った。
「でも、俺はそれでも諦めない! 何があってもユーシェリアだけは守るんだ!」
 そんなティレックスのことを見ながらユーシェリアは――
「ティレックス! いいからもう、無理はしないで!」
 ティレックスを遮ろうとした、だけど、ティレックスは首を横に振った。
「いいから、ここは俺に任せろ。 ユーシィは後ろにいろ、最後まで可能性にかけるんだ!」
 しかし、ユーシェリアはティレックスのそばに寄り添って言った。
「でも、だったらティレックスだって、無理しないで――」
「いや、これだけの魔物が迫ってきている、これ以上は無理だろう、 だから、せめて、ユーシィだけでも、無事でいてほしい――」
「どうして私だけ? ティレックスも一緒に――」
 そして、ティレックスは覚悟を決めた。
「ユーシィ、いや、ユーシェリア、聞いてほしい。 実は俺、お前のことがずっと好きだったんだ。 だからユーシェリア、俺はお前を守りたいんだ!」
 そう言いつつ、ティレックスは魔物と激突した!
「ティレックス――」
 そんな話を聞いたユーシェリア、彼女も覚悟を決めた。
「ユーシェリア!?」
 彼女もまた、ティレックスと共に魔物に立ち向かったのである。
「そんなこと言われて、私がティレックスのことを1人にしておくわけないでしょ!  だからティレックス、今後は何があっても一緒だよ!  たとえ果てることがあっても、その時は絶対に一緒だからね!」
 ユーシェリア――ティレックスはそう言われると、頷いた。
「ユーシィ、わかった! そうだな、俺たちは一緒だな!  だからユーシィ、聞いてほしいことがある」
「なーに?」
「ユーシィ、絶対に俺のそばから離れるなよな!」
「うん! 私、ティレックスのそばから絶対に離れない!」