リリアリスは砲台に取り付けられているユニットのうち、
エネルギー・バースト・システム・ユニットのまた別のカバーを”兵器”を使って表面を切りはがすと、そこから部品を引っこ抜いた!
さらにリサイクル・ユニットに対して分解した石ころをすべて投げ入れると、砲台2門は暴走し始めた!
「えっ!? 何!?」
「きゃっ!?」
フロレンティーナとフラウディアは驚いてとっさに砲台から離れた。
「ごめんごめん、先に言えばよかった、思ったより熱を持っていたのね。
今、ヒューズ引っこ抜いて”ナマグネ”を放り込んだから、エネルギー・ユニットが暴走しているのよ。
見てほら、勝手に撃ち続けているでしょ?」
確かに、砲台は勝手に撃ち続けているようだった。どうしてこんなことをしたのか訊くと――
「”ナマグネ”放り込んだから、ヘイトの強い弾丸を撃ち続けているせいで魔物の注目はこっちに集まるわね。」
魔物を呼んでいるということはつまり――フロレンティーナとフラウディアはすぐにピンと来た、まさか――
「そう、そのまさかよ。これが一番効果あるかなと思ってさ。」
しかし、それに対してフロレンティーナ、
「まーたド派手なことをするってワケね。でも、私もそういうの大好きだから、楽しみにしているわね♪」
一方のフラウディアは苦笑いしていた。
ディアナとイールアーズはお互いに背を向けあい、魔物に向かって剣を振るっていた。
「なかなか数が多いですね――」
「だが、これっていうのはまだ第1波ってやつなんだろ?」
「ええ、しかも第2波のほうが魔物が強いと聞きます、数こそ第1波より控え目ですが――」
イールアーズの中ではもはやディスティアだかディアナだかどうでもいい状態だった。
「なんでもいいが、まさかこのままっていうわけじゃあないだろうな?
戦いと自分と妹以外はどうでもいいって言われている俺でも、流石にそれだけは勘弁してもらいたいもんだな」
ディアナは頷いた。
「妹さんが待っていますからね、ですがこのままだと確かにじり貧――」
すると、その場にアリエーラが”兵器”を振るって魔物を薙ぎ払いつつやってきた。
「みなさん、ご無事ですか?」
そんな彼女に対してイールアーズからクレームが。
「そういえばあんたなあ、精霊召喚とやらで一掃できるとか、そういう話を聞いた気がするんだが、なんでそれをしないんだ?
リリアって女のせいか?」
アリエーラは苦笑いしながら答えた。
「違いますよ、あれを使うには膨大な力を消費するので、そう簡単には使えないのですよ、下準備もいりますし。
それこそ、クラウディアス王国にいる間は力の恩恵を受けるので一応使えますが――」
さらにディアナが付け加えた。
「そもそも今後は使えなくなっていくとリリアさんから聞きましたね。
ですので、確かにリリアリスさんのせいということにはなると思いますが――
いずれにせよ、すべてはクラウディアスの民のためにやっていることですので、
一概に彼女のせいとは言えませんね」
どういうことだ? イールアーズは訊ねた。
クラウディアス・フィールド・システム、あれのエネルギーがどこから来ているのか――それを考えるとわかりやすいだろう。
あれはあくまで一例なので、実際にはほかにもクラウディアス王国の生活が便利になるために、
パワーストーンによって湧き出るエネルギーが使われているのである。
その状態で精霊召喚のためにエネルギーを消費したらどうなるだろうか、
フィールド・システムはダウンするし、クラウディアス民に迷惑がかかる。
無論、使用する場合は許可を取るようにするのだが、それこそどこかの国の戦争の道具同様、
使用の際には強い権限による許可を取る必要があるのである。
だが、今回は使用する予定がないため、そういった行動は一切していないのだという。
つまりは地道に敵を倒していく方法をとっていくわけなのだが――リリアリスには秘策があったようである。
そして、アリエーラがここに来た理由として、2人に南側の海のほうを見るように促した。
「とりあえず、そろそろあれが来ると思いますので、この辺りを死守してください!」
それを見てディアナは考えながら言った。
「なるほどです、ということであれば私たちは助かるわけですね。でも、魔物はどうするのです?
このままにしておくのですか?」
「だいたい、リリアってやつはどこで何をしてやがるんだ?」
イールアーズが続けてそうもんくを言うと、アリエーラは優しく答えた。
「リリアさんなら今はフィリスさんと一緒にマダム・ダルジャンで作業中です。
ここを離れる際の準備を着々と進めていますね――」
離れる準備? すると、いきなりアリエーラの後ろのほうから何かが上空へと跳び上がった!
「ちょっとだけ留守番よろしく。」
……それは間違いなくリリアリスの声だった。
「あの女、一番最初に船を出ちまったぞ」
イールアーズは淡々とそう言うと、アリエーラとディアナは苦笑いしていた。
それから30秒ほど経過――
「ただいまっと。」
リリアリスは南側から船のほうへと着地、その勢いでアリエーラが対峙していた魔物を一撃粉砕、アリエーラは驚いた。
「きゃっ!?」
「脅かしてゴメンね。それと魔物さんも悪いね、死んじゃったら運命だと思って諦めて。」
「いいえ! いいんですよ、リリアさん!」
するとリリアリスは即座にマダム・ダルジャンのほうへと去っていった。
そんな彼女は小脇に何かを抱えているようだった、大きさは結構大掛かりのものだった。
「忙しい人ですね、相変わらず――」
「まったく、面倒な女だ」
ディアナとイールアーズが呆気にとられているが、アリエーラは再び苦笑いしていた。
マダム・ダルジャンにて――
「敵がアホみたいにやってくるわね――」
フィリスはそう言いつつ、フロレンティーナと共に魔物を退けながら、ユニットをいろいろと組み込んでいた。
「ホロウ・システムは抜いたし、リビングも抜いといたよ。
刺さってるのはエネルギー・マネージメント・システムとエクスチェンジ・システム、
それからウォーター・マネジメント・システムよ。」
「あと、言われた通り、ユニット全部からヒューズとオーロラ・カード抜いといたけど、抜いたやつはどーするの?」
フィリスは剣を持ちながら、
フロレンティーナは片手にヒューズと虹色に光るカード上のようなものを持ちながらそれぞれ言った。
「とりあえず全部回収よ、少なくともオーロラ・カードだけは確実に回収よ。
その中に入ってる”レジスト・イニシエータ”って貴重な半導体があるんだけど、
作るのが大変だから絶対に回収よ。」
あ――フロレンティーナは思い出した、
そう言えばヒュウガが少し前にこの部品についてもんくを言っていたことを思い出した、
作るのが大変なものを勝手に持っていかれて――それは猶更怒るわけだ。でも、実際に作った人ってそういえば――
「なるほどね、ヒー様が怒るから持って帰らなければいけないのね!」
フロレンティーナはそう言うとリリアリスは狼狽えたような感じで答えた。
「えっ? ああ、ええ、そういえば返さないといけなかったわね、なんだ、くれたわけじゃなかったのね――」
しかし、フロレンティーナも余計なこと言ってしまったかな、もらったことにしておけばいいんじゃないかなと思った。
「よし、あとはこれを設置するだけね、アタッチメントはどこに差し込んだの?」
リリアリスがそう言うと、フィリスが促した。
「それはこっちよ、言われた通り、フロントカバーを外しといたから」
すると、リリアリスは脇に抱えていたものをそのアタッチメントにうまく接続していた。
それを見ながらフロレンティーナは訊いた。
「それ、何?」
リリアリスはそのユニットが起動したことを確認しつつ、話をした。
「これはエネルギー・バースト・システム・ユニットの心臓部よ、
ユニットごと持ってくるのが大変だったから、必要なところだけ切り離して持ってきたのよ。
本当はマダム・ダルジャン2号機作る際にこのユニット2つ積んだ構成考えていたんだけど、
メガタイプのユニット1本の構成にした結果、作ったのに要らなくなっちゃったから、
そのまま2号機の貨物室に忘れ去られていた子なのよ。
カードも刺さってないし、持ってくるときにヒューズもブロックごと切り落としてきたから、これで準備完了ね。」
フィリスとフロレンティーナは頷いた。
「つまりはそれが”起爆剤”ってわけか――」
「ほんと、今の今まで忘れ去られていた子の初仕事が、最初で最後の大仕事――」