戦艦上で砲撃を続けている12人、数人は一旦離れて別の作業をしていた。
「リリアさん! 持ってきたぞ!」
スレアはそう言った、マダム・ダルジャンから引っ張り出してきたユニットを持ってきていたのである。
すると、リリアリスは発射台から飛び降り、その場に置かれたユニットに何かし始めていた。
そのユニットはエネルギー・バースト・システム・ユニットである。
リリアリスはそのユニットの側面の蓋をドライバーを使ってはがすと、
電子基板やら金属やプラスチックのプレートやらが内蔵されている光景が見えた。
「エネルギーっていう割には電子制御?」
スレアは訊いた。
「制御はそうね。エネルギー自体は魔法だけど、もちろん電気エネルギーに変換することも可能よ。」
さらに、後に続いてクラフォードとティレックスが2人がかりでもう1つのユニットを運んでいた。
「リリアさん、持ってきたよ――」
「なんだよこれ、なんでこんなに重たいんだ!?」
その重たいユニットはリサイクル・ユニット、つまり、
「ごみ処理ユニットだからね、そいつは特別重たいからしょうがない。」
と、リリアリスはそう言いながらそのユニットの側面の蓋をドライバーを使ってはがすと、
こちらも電子基板などが内蔵されていた。
「中身は似たような感じになっているんだな」
スレアがそう訊くと、リリアリスはユニット同士を回路的に連結し、それをさらに砲台2台にも連結した。
すると――
「砲台に、エネルギーを供給?」
クラフォードはヘトヘトになりながらそう言った。
「そうよ。これなら魔力をわざわざ込めなくても撃ち続けられるわね。」
それに対してフィリスが。
「それは便利ね、できれば、この状況も何とかしてもらえると助かる」
リリアリスはそう言われると少し考え、何か思いつくと、
フラウディアにガンナー代理を任せ、さっきの男共を引き連れつつ、マダム・ダルジャンへと赴いた。
それから約3分後、リリアリスに連れられた男たちはなんだか大掛かりな台を担いでいた。
「フィリス! これの上にそれぞれ置いたらどう?」
男たちは台を設置、そこへフィリスは砲台を置いた。
台は傾斜が付いており、その上に設置された。
「よーし、撃ち続けちゃって。」
リリアリスは得意げに言うと、フィリスが訊いた。
「こんな大きなもの、よくすぐに作ったわね」
イールアーズはヘトヘトになりながら言った。
「この女は異常だからな。
この船の一部をぶっ壊して材料を直接切り出している、お得意のその”兵器”でな」
やっぱり――フィリスはそう思った。
「ということで同じものをもう1つ作るわよ。
さっきも言ったように、次はフィリスがいるから持ち運びは楽よ。」
それに対してクラフォードから苦言が。
「あのさ、あんたもアリエーラさん並みの能力を持っているっていうのなら、
魔法でも何でも使って持ちやすくしてくれるとかないかな?」
「してるでしょ、一応ある程度質量を取り除いたのよ。
まあ――途中で別なこと考えてて集中力が削がれている点についてはごめんなさいだけど。」
だからそれがいけないんだろと男性陣は一度にリリアリスバッシングを始めていた。
そのやり取りにフィリスは大笑い、手を叩いて笑っていた。
同じセットをもう1台誂え、2機の発射台で空の敵を撃墜している。
それにしても、そもそもなんで工作を始めることになったのかと言うと、それには理由があった。
「カスミん! 大丈夫!?」
リリアリスは艦橋まで跳び上がり、彼女の様子を確認しに行った。
すると、彼女は剣を手に取り、目の前の魔物と対峙していた。
その様にリリアリスは――
「何てこと、気が付かないうちに魔物が次々と飛来してきているのね、ゴメンゴメン――」
そう言いながらリリアリスは”兵器”を取り出しつつ、カスミの元へと近づいて行った、だが――
「えっ!?」
リリアリスは背後から異様な気配を感じた、また別の魔物が現れたのだった。
「ちぇっ、こんな船の上から砲撃したのが間違いだったか、
それならそれで仕方がない、望み通りにしてやるよ。」
リリアリスはその魔物相手に突撃した。
アリエーラとフィリスは2台の砲台の前で死守していた。
「まったくもう、やたらと狙われているわね――」
フィリスは大型の魔物から自分の剣を引き抜きながら言うとアリエーラは魔物を切り裂きながら答えた。
「攻撃を与えているわけですから、反撃を受けるのは仕方がないことですよ。
ですが、問題は次はどうするかってことですね――」
次とは――フィリスは思い出した。
「第2波――そっか、まだ来るんだっけ」
そこへクラフォードがやってきた。
「思いのほか、魔物が多くて船のほうもだいぶやられているな、何とかならないのか?」
えっ、どういうことだろうか、アリエーラが訊くとクラフォードは続けた。
「こいつら、知恵があるのか、船を破壊し始めているぞ。
沈まないうちに早めにどうするか考えた方がいい、そういうことだ」
そしてクラフォードは飛来してきた魔物へ再び突撃した。
「船が――大変です!」
アリエーラは風魔法を使って浮き上がると、そのままリリアリスのいる艦橋へと跳び上がった。
「それはまずいな、もちろんリリアのことだからそれは考えてると思うけど、どーする気だろ」
フィリスは考えながら言った。
アリエーラは艦橋へと飛び乗り、リリアリスに事と次第を伝えた。
「それについては大丈夫よ、あれを見てよ。」
リリアリスは南の海を指さしながら言った。それに対してアリエーラは気が付いた。
「あれは!」
するとリリアリス、何かつぶやきながら作業をし始めた。
「そろそろ頃合いね、名残惜しいけど――まあ、この際だから仕方がないか――」
リリアリスはおもむろにカバンを取り出し、その中から石ころを取り出した、それはまさか――アリエーラは訊いた。
「”生体マグネタイト”? 魔物を呼ぶ石――」
リリアリスは得意げに答えた。
「ええ、そう、通称”ナマグネ”ね。この船はもう少しで沈む、運命を共にしたくなければそろそろ準備をし始めた方がいいわね。」
するとリリアリス、それを分解し、砲台のところへと再び降り立った。
「なるほど、考えましたねリリアさん、最初からそのつもりでこの船に乗り込むことにしていたのですね――」