エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

紡がれし軌跡 第3部 対決!ディスタード 第7章 アポカリプス

第219節 もうひとつの兵器

 一方その頃、クラウディアスにて――
「なんだか知らないけど、あの戦艦から魔物に向けて砲撃しているな――」
 ラトラはそう言うと、ヒュウガは答えた。
「それもかなり強力な魔法弾だ、つまりは例によって例によるところだろう。 ただ、あれだけの魔物が飛来してくるわけだから、うち漏らしも当然出てくる、 それも、今までに比べてやたらと早く到達するようだ、フェラント側での準備は怠るんじゃないぞ」
 それに対してラシルは「はいっ!」と元気よく答え、その場をすぐさま去った。
「無数の艦隊を相手にするか、それとも無数の魔物を相手にするか――いずれにせよ、 無数の何かが襲ってくることは変わんないってことだな――」
 ヒュウガはそう言いながら傍らの剣を携え、その場を勢いよく飛び出した。
「あの人も接近戦ができるのか、僕も見習わなくっちゃな――」
 ラトラは銃器を取り出しながらその場を飛び出した。

 ヒュウガたちはフェラントの港へ到着すると、そこにはシャナンが兵隊たちに指示を出していた。 そこにヒュウガが加わった。
「ヒュウガさん! ご助力願えますか?」
 シャナンがそういうとヒュウガは頷いた。
「そのつもりでここに来た。 幸いなことに、戦艦側でデカイやつを狙って撃墜しているみたいだから、 こっちではそんなにデカイのはやってこない、せいぜい数が厄介という程度だろう――」
 だが、そんな中で、デカイ魔物が港に――
「どうせなら漏れなく撃ち落としてほしいもんだ」
 ヒュウガは愚痴をこぼしながら魔物に接近した。
「ヒュウガさん! 大丈夫ですか、助太刀しましょうか?」
 シャナンが心配そうに言うとヒュウガは答えた。
「いいから、あんたは陣形を崩さないように指揮してればいい、この程度、俺一人で充分だ」
 魔物は大きな悪魔のような翼と角が生えた二足歩行の魔獣のような生物だった。
「確かに、エンブリアではあんまり見ないタイプの魔物だな、なんというか、不思議な感じだ」
 ヒュウガは剣をゆっくりと引き抜くと、何人かはその剣の見た目に驚いた。
「もしや、あれは”兵器”!?」
 シャナンはそう言うと、ヒュウガは答えた。
「あんなキチガイ・ソードと一緒にしないでくれ、確かに”兵器”と言われればまさしく”兵器”だが」
 ヒュウガの剣はまさしく機械仕掛けの代物だった、 それこそある意味、こちらの方が文字通りの”兵器”と呼ぶに相応しい装いだが。
 すると、魔物は勢いよく振りかぶり、強靭な太い腕をヒュウガめがけて振り下ろした!
「だから撃ち漏らすんじゃねえって言ったのに!」
 ヒュウガはそう言いながらとっさに反応し、何とか攻撃をかわした! するとそこへ――
「だいぶ苦戦しているようだな、助けがいるか?」
 ヒュウガはそっと振り向くと、そこにはあの男が立っていた、”閃光”の異名を持つあいつである。 そいつに対してヒュウガは魔物と対峙しながら話しかけた。
「お前、キラルディアに行ったんじゃなかったか?」
「今頃、ユーラルの本土軍は完全に終わっているハズだ、 俺はその前にお役御免になってこっちに戻ってきたわけだが、 なんだかとんでもないことになっているじゃないか」
 さらにレイビスは魔物の姿をしっかりと確認しながら話を続けた。
「なんだこいつは、こんな魔物、初めて見たぞ」
 ヒュウガは話した。
「”ホーン・デーモン”と呼ばれる魔獣の一種、 多分、お前の持っている得物程度じゃあこいつの皮膚を貫通するのは不可能だろう。 だから、やるんなら援護だけしてくれればいい」
「お前の持っている得物なら刺さるっていうのか?」
「見てりゃわかる。まあとりあえず、言われた通りにやってくれればいい」
 ヒュウガは剣を構えなおした。

 ヒュウガは即座に剣から衝撃波を発し、ホーン・デーモンに何度も浴びせ続けた。
「その場にいながらそんな技を――便利な機能が付いている剣だな」
「ああ、おかげさまで楽に技が繰り出せる、ついでに言うとこんなこともな――」
 ヒュウガは剣を背後から勢いよく前方のほうへ振り出すと、 剣から強力なエネルギー波が発生し、そのままデーモンめがけて炸裂!
「本当に便利だな、使い手の能力をアシストする力が働いているのか」
 レイビスは感心しながらそう言うと、自分も負けていられまいと思い立ち、デーモンめがけて突きを放った、だが――
「マジか、本当に刺さらないな――」
 攻撃は頑丈な皮膚を前にして見事にはじき返されてしまった。 しかしその時、デーモンは突然腕を頭上に掲げ挙げると、その腕を――
「マズイ!」
 ヒュウガは焦り、その腕に次々と衝撃波を――
「ちっ、見た目通りのタフなやつだな! くたばれ!」
 発射したが、その甲斐もむなしく、腕はそのまま振り下ろされた――だが、
「くそっ、まるでゴリラだな!」
 レイビスは腹を立てつつ、その場で姿勢を落とし、地面に転がるように一回転すると、 敵の攻撃を華麗によけつつ、そのまま立ち上がった。
「やるな、伊達に”閃光のレイビス”って呼ばれてないわけか」
 ヒュウガは感心しながらそう言うと、閃光のレイビスは剣をしまった。
「この野郎、やりやがったな。だったら仕方がない、ヒュウガ! 確実にとどめを刺せよ!」
「だからやるって言ってんだろ」
 するとレイビス、魔物を目の前にして力をためながらその場で無防備に佇んでいた、すると――
「あれはまさか! レイビスさんってもしかして――」
 シャナンは彼の様子をじっくりと見ていた。
 すると、魔物は今度はそのまま前進し、拳から激しい衝撃波を発しながら殴りかかってきた!
「ちっ、お前もその手の技の使い手かよ、どいつもこいつも――」
 そしてレイビスめがけて振りかぶり、殴ってきたその時!
「おい! やばいぞ!」
 ヒュウガはそう叫ぶと、レイビスはどういうわけかその場にはいなかった。 えっ、どうなっているんだ、そう考えると、レイビスは今度は敵の真後ろに佇んでいた。
「俺が何で”閃光のレイビス”って呼ばれているのか教えてやろうか、ウスノロが!」
 すると、レイビスは拳から強烈な光を発すると、そのウスノロは何かにぶつかったかの如く、思いっきり体勢が崩れた!
「今の当たり判定、”闘気剣術”系の類の技か――」
 ヒュウガは考えながらそう言うと我に返り、慌てて剣を振りかぶると、地面めがけて思いっきり振り下ろした!
「そこまで来たら俺の出番だな!」
 するとそれと同時に、ウスノロの足元から強烈な衝撃波が大きな刃のごとく飛び出し、ウスノロを転倒させた!
「これで終わりだ」
 そして、ヒュウガは雷をまとった剣をウスノロの胴体めがけて思いっきり叩き落した!
「ふう、予想以上に手間取ったが、とりあえずはこんなもんだろう」
 ヒュウガは剣をデーモンから引き抜きながらそう言うと、レイビスが話しかけてきた。
「お前、意外とやるな」
「は? 今頃何言ってるんだ?」
 ヒュウガは剣を適当にぬぐいながらそう言った。さらに呟いた。
「これでまだ第1波なんだよな。第2波は数が少ないんだから絶対に撃ち漏らすんじゃねえぞ」