「アリ、アリ、しっかりして――」
アリエーラは左肩を揺すられて気が付いた。
「うっ、フローラさんですか――」
肩を揺すったのはフロレンティーナだったようだ。
「うぅっ、酷いわねこれ、一体何なのよ、みんな予知していたみたいだけど、どういうこと?」
フロレンティーナは左手で頭を抱えながら辛そうにそう言った。
するとアリエーラ、左右を見渡して状況を把握していた。
自分は背中は船室の壁にもたれかかって座っており、右脇にはユーシェリアがしっかりとしがみついていた。
アリエーラの左側はフロレンティーナがしがみついていて、アリエーラは彼女を腰から抱きかかえていた。
あれ? あの2人は? アリエーラはそう心配していると、
スレアとフラウディアの2人はお互いに抱きかかえながら床の上にうずくまっていることを確認した、
心配することではなかったようだ。
そして、一番の問題がティレックスだが、
ユーシェリアの右隣にいて、左腕はユーシェリアを後ろから支えるように抱きかかえていたのだが、
右手は完全にアリエーラのお腹の上に置いてあり、フロレンティーナの胸にまで達していた。
そう、ティレックスの右手は完全にフロレンティーナの――
それについて、アリエーラとフロレンティーナの2人は議論していた。
「ふ、フローラさん、それ、完全に触れていますよね――」
「ええ、しっかりと触れているわね。
ま、私は全然構わないんだけどさ、彼の左にいる彼女を必至に守ろうとした素敵な素敵なナイト様ですもの、
この程度の事故だったらお姉さん別に、いくらでも許してあげちゃう♥」
それに対し、アリエーラは苦笑いしていた。
「それより、アリはどうなの? それってセーフ?」
「え? ええ、だって、お腹に触れているだけではないですか、別に、普通にセーフではないですか?
仰るように、ユーシェリアさんをこうしてちゃんと守っている姿、素敵ではないですか、
ユーシェリアさんのお姉さん替わりを経験した身としては、なんだか弟のように可愛らしくて――」
アリエーラはそう言いながらティレックスの頭を優しく撫でていた。
すると、相思相愛の2人組が起き上がり、お互いのことを確認していると、
その2人はアリエーラたちの元へとやってきた。それを見たスレアは――
「おいおいおい、ティレックス――ずいぶんと大胆な状態じゃないか……。
というかフローラさん、それ、いいのか?」
それに対してフロレンティーナが言った。
「まあ、ちょっといろいろとあってね、仕方がないじゃない、
彼はユーシィを守りたい一心だったんだから、それ以外が見えていないワケよ。
まあ、私としては離れるべきとは考えたけれども、彼がどう反応するかと思って、見ものね――」
と、フロレンティーナは少々意地悪そうに言った。それに対し、スレアは少々恐怖を覚えていた。
「怖い……ティレックスの気持ちを考えるとぞっとするな――」
そして、問題のティレックスが気が付くと、
自分のその状況が説明困難な状況であることを瞬時に把握し、戸惑っていた。
ティレックスはとにかく右手を即行で引っ込め、さらにはユーシェリアからも即行で離れると、
アリエーラとフロレンティーナの目は自分に向かっていることに気が付き、非常に焦っていた。
「おはようございます、ティレックスさん♪」
「おはよう、ティレックス♥」
アリエーラとフロレンティーナと2人は笑顔でそう言うと、ティレックスはビビっていた。
しかし、それだけではなかった。
「ティレックス、おはよ♪」
なんと、ユーシェリアが、アリエーラにしがみつきつつ、
首だけティレックスのほうに向けながらにっこりとした顔でそう言った。
「あら? いつからお気づきに?」
アリエーラはそう言うと、ユーシェリアはアリエーラのほうを向いて言った。
「私は最初から気を失っていませんよ。
でも、ティレックスが守ってくれるから嬉しくって――」
そうだったのですね、アリエーラはにっこりとしながらそう言った。
そして、ユーシェリアは再びティレックスのほうに顔を向けた。
それに対し、ティレックスはとても焦っていた。
「あ、あの、その、なんて言えばいいか――えっと――」
完全にしどろもどろなティレックスだが、そんな彼に対し、女3人組は――
「いいえ、どういたしまして。ティレックス君だったらお姉さんいつでも大歓迎よ♥」
「ええ、ユーシェリアさんの旦那様であるティレックスさんですから全然構いませんよ。
新しい弟ができて、私、とっても嬉しいです!」
「うふふっ、ティレックス、私のこと守ってくれてあ・り・が・と♥
あとでお礼してあげるね♪」
フロレンティーナ、アリエーラ、そしてユーシェリアはそれぞれ何だか楽しそうにそう言った。
「ダメだ、面白そうだったからもう少し見てたいところだが、
これ以上はティレックスが可哀想すぎて見てらんな――いや、もう少しだけ見てよう♪」
スレアは適当なところに座って大笑いしながらそのやり取りを見ていた。
「もう、スレアってば、笑いすぎ!」
そういうフラウディアもスレアの隣に座り、4人のやり取りを笑いながら見ていた。
その場を何とか取り繕い、各々の場所に座り直した6人――いや、
ティレックスだけはもはやどうしていいかわからない状態、
とはいえ、アリエーラもフロレンティーナも全然気にしていないのだが、
どういうわけか、状況的にユーシェリアの言う通りにしていないといけないと察し、
言う通りに彼女の手をしっかりと握っていた。
「女の仕返しって怖いな――」
ティレックスはそう言うと、ユーシェリアは答えた。
「だから、誰も気にしていないから大丈夫だよ!
私は全然構わないし、アリエーラ姉様だって、フローラ姉様だって、
ティレックスのこと弟みたいに可愛がっているんだから全然問題ないんだよ♪」
本当かソレ、そんなわけ――ティレックスはずっと困惑していた。
それよりも――フロレンティーナは話を聞いた。
「それにしてもどういうこと? なんだか予知していたみたいだけど――」
アリエーラとユーシェリア、そして、ティレックスとスレアは事情を話した。すると――
「確かに、なんだか妙な頭痛というか、とても嫌な気分に陥ったことは何度かあったけれども、
まさかセラフィック・ランドの島々が消滅することと連動しているなんて――」
フロレンティーナは頭を抱えながらそう言うと、フラウディアも言った。
「言われてみればなるほどです。
でも、ということは、セラフィック・ランドのどこかの島が消えているってことですか!?」
と、その時、いきなり船室の天井からとてつもない勢いで何かが降り注いできた!
「なっ、なんだ!? 今度は何が!?」
スレアは驚きながらそう言うと、抜けた天井の中から3人が現れた――リリアリスとカスミ、そして、フィリスである。
「り、リリアさん!?」
アリエーラは驚き気味にそう訊くと、リリアリスは――
「悪いけど話は後! 今回は超ヤバイよ!」