「あいつらみんな死ぬ、用意周到、でも、タイミング悪かった」
えっ、それはどういうこと――そう思ったフィリスは――急に目の前の光景がフラッシュバックし、
そして、我に返った。
「まさか!」
フィリスはすぐに気が付いた。
「とびっきりの大きいやつが来るわよ、みんな、備えて――」
リリアリスは真っ青な顔をしながらその場でかがみこんでしまった。
そして、隣にいたカスミはリリアリスを抱きかかえたままそのまましゃがみ込んでしまった。
その様子に、フィリスもリリアリスの隣に寄り添った。
「たとえ万が一のことがあったとしたら、その時は私も一緒よ」
「フィリス――ありがとう、一緒にいましょ――」
リリアリスはそう言うと、3人でその場で固まることにした。
そして――
「クラフォードさん、どうやらそう言うことのようですので、私も備えることにしますね――」
ディアナはそう言うと、クラフォードは頷いた。
「あいつは――まあいいか……。イール! 少なくとも無事でいろよ!」
クラフォードは外に向かってそう叫んだ後にしゃがむと、ディアナが話しかけてきた。
「クラフォードさんもこっちに来てくださいな!」
ディアナはまさかの女性陣のところに円陣を組むように固まっていた。
ウソだろ――そう思っていると、リリアリスが言った。
「いいからアンタもこっちに来なさい! 気にしないでこっちに来なさいよ!」
そう言われてクラフォードは慌ててやってくると、その場でしゃがみ込んだ。
すると、リリアリスとディアナの間に入るように促されたので、そこに入った。
ディアナはクラフォードの右腕を引っ張ると、自分の腰の後ろに回した。
えっ――クラフォードは狼狽えながらそう言うと、ディアナは言った。
「私は本物の女ではありませんからね、遠慮なんていりませんよ?」
そう言われても――クラフォードは困惑していた。
「ちなみに私はディア様だろうがディアナ様だろうが気にしない」
と、フィリスは言った、そうか――クラフォードはそう思った。
そして、左腕のほうはリリアリスが引っ張ると、自分の腰の後ろに回した。
えっ――クラフォードはさらに狼狽えながらそう言うと、リリアリスは言った。
「本物に触るのは初めて? まあいいから、とりあえず、この”波”を耐え凌ぐよ――」
しかし、彼女の顔は真っ青だった。
その表情を見たクラフォードは、狼狽えている場合ではないことを悟り、
リリアリスのほうに少しだけ詰め寄っていた。
セラフィック・ランド地方周辺――あたりは無数の艦隊がクラウディアスを攻めんとばかりに進撃している状況だった。
しかし、その艦隊の間では、大きな問題が起こっていた。それは――
ある艦隊では、計器類がでたらめな値を示していたり、
ある艦隊では、いきなりエンジンが停止していたり、
また、ある艦隊では、急な体調不良者が続出したりと、混迷を極めている状況が発生していた。
そして、事態は急変し、とうとうその時は起きてしまった。
「まったく、あのあたりでたむろしている連中の運の悪いこと悪いこと――」
クラウディアス城の5階の例のテラスから南西の空を眺めているヒュウガ、
ただその場でじっと佇んでいた。
すると――
「出たぞ、ここ最近起きている妙なことの正体だ――」
南西の空が、セラフィック・ランド上空に文字通りの暗雲が立ち込める――
「リリアリス! アリエーラさん! でっかいのが来るぞ、備えろ!」
ヒュウガはいつものヒュウガらしくないような剣幕でそう叫ぶと、自らもその場でしゃがみ込んだ。
すると、それと同時に強烈な地震と空振が――
「ぐっ、みんな、無事でいろよな――」
ヒュウガは力なくそう言うと、その場で頭を抱えてうずくまっていた。