数時間前――
「ヒー様、どうしたの? 連絡遅かったじゃん?」
リリアリスがそう訊くと、ヒュウガは答えた。
「悪いな、本当はガレアから連絡したかったんだが、そうもいかなくなった。
あのツール使った結果、サーバが負荷に耐えられなくて全部ダウンしちまった。
それに引きずられてか、通信回線もすべておっこっちまっててな、
本土軍包囲網の都合もあって回線も安定していないし、
復旧にも結構時間がかかりそうだから、結局クラウディアスに聞いてから連絡することになった」
ヒュウガはさらに続けて言った。
「でも安心してほしい、データは全部解析済みで、そのデータも全部と言わないまでも、
重要そうなやつだけは辛うじて持ってきたからな」
そしてその後、再びフィールド・システムによる電話会議システムを用いてティルアとルーティスとで話をしていた。
だが――話を少ししているうちにヒュウガはルーティス側から違和感を感じていたので、どうしたのか訊いた。
「すみません、実のところ、ここ最近体調がよろしくなくてですね、
私だけでなく、学園の生徒など含めて変な病気が流行っているのかという疑いも出ている状況なのです。
調査はしているのですが、原因はよくわからず――」
ルーティスでもそういう人が続出しているのか、ヒュウガはそう思った。
「まあいい、俺も心当たりがあるが、先にこっちの話をしないとな。
本土軍が持っていたデータをすべて洗いざらい調査したところ、とんでもない事実が判明したんだ。
そこで一つ聞きたいんだけど、ティルア、この顔に見覚えはないか?」
ヒュウガはその男の画像データを提示して訊いた。すると、バフィンスが答えた。
「知ってるぜ! こいつはヴィザント帝国の猛将ガルマンデってやつだぜ!
ヘラッセルに負けて行方が分からなくなっていたんだが、
その後はアレンヒルってところで暗躍してるって噂があったようだが――その後は知らねえな」
アレンヒルと聞いてナミスは反応した。
「アレンヒルと言えば、ガレア軍の前身ランスタッド軍が交戦していたという軍ですね。
その後にはグレアード軍、そしてバランデーア軍と名を変えていました。
ただ――ご存じと思われますが、その時の戦場はここルーティスでした。
彼らはこのルーティスを奪うため、三度も襲ってきたのです」
ヒュウガは頭を抱えていた。そんなヒュウガに、この男がどうしたのかナミスは訊ねると、
ヒュウガは口を開けた。
「こいつは――ベイダ・ゲナの護衛を名乗る側近中の側近、ガルフォードっていう男だ。
どおりでヘラッセルや故ウォンター帝国、そして故ヴィザント帝国の情報を持っていたワケだ。
やつの持っていた情報を調べれば調べるほどとんでもない情報が出てくる。
中でも――やつが持っていた情報の中でとんでもないものが4年前のベイダ・ゲナ殺害に関する件だ」
なんと、ベイダ・ゲナは既に4年前に他界していたというのか!
故ウォンター帝国の悲願であるクラウディアス王国への侵略を達成しようとしていたゲトラウズ、
ヘラッセルという国で暗躍し、クラウディアス王国を攻め続けていた。
しかし、それにも敗北したゲトラウズは死去、その父の悲願を達成しようと姿を変えたゲティナスは、
ベイダ・ゲナと名乗り、クラウディアスとは友好関係にあったディスタード王国を貶め、
ディスタード帝国の一将軍として君臨し、クラウディアスを攻め続けた。
しかし、それを良しとしないものがもう一人いた、
それは、かつてヘラッセル国に敗れたというヴィザント帝国の将ガルマンデである。
ヴィザント帝国もまた故ウォンター帝国の残党が蔓延る国家であり、
ガルマンデもそのうちの一人、クラウディアスへの侵略を狙っていた。
ヘラッセルとヴィザントはとにかく仲が悪く、当時は故ウォンター帝国の分裂の要因とも言われていたほどでもあった。
ヴィザント帝国はヘラッセルに敗れたが、その残党は今度はアレンヒルという国へと逃れると、
その国を動かしてクラウディアスやディスタードを攻めるべく、ルーティスを攻撃の拠点として占領を試みる。
しかし、三度の進撃はいずれも失敗、ヴィザント帝国の野望は幻のものとなってしまったのである。
しかし、ヴィザント帝国のガルマンデは諦めることなく、ディスタード帝国にいるベイダ・ゲナ、
ゲトラウズの存在を知ると、そいつに取り入って、ことを成し遂げようと考えた。
ベイダ・ゲナの忠実なる側近として信頼を得ると即座に殺害、以来、ベイダ・ゲナに成り代わって本土軍を動かすに至る。
そして、結果は御覧の通り――