エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

紡がれし軌跡 第3部 対決!ディスタード 第7章 アポカリプス

第210節 囮

 ヴィザント艦内を次々と攻略していく12人の勇士たち、 最初からそうすればよかったような気もすると考える者もいないわけではないが、 それでも、とにかく与えられたことをそつなくこなしていった。
 その中でもリリアリスは、頭を抑えながら何やら考えていたようだ。
「どうしたのです? 大丈夫ですか?」
 ディアナはそう訊くと、カスミが言った。
「インカム装着、多分電話」
 確かに、誰かと話をしているような感じだった。
「このタイミングで突然お話ですか、出発前に何かしていたようですので、少し待ちましょうか――」
 すると、遠くから爆発音が! あの音は――
「イール――さっそく始めましたね」
 どうやらイールアーズが大暴れし始めた音のようである。すると、リリアリスがその場にやってきた。
「ごめんごめん。とりあえず、重大なことが一つ分かったわ。 少なくとも、ベイダ・ゲナはこの船には乗っていないことね――」
 えっ、それはどういうことだろうか、 先ほど、フロレンティーナとフラウディアの2人が、 その護衛のガルフォードというやつが乗っているから間違いないと言っていたはずなのに――

 ベイダ・ゲナを探しているフラウディアら3人は――
「とにかく、頭さえ叩けばこの戦争は終わるはず! なんとしても探さないと!」
 司令官室らしき場所にまで来たが、そいつの姿が見えず、どうしたもんかと3人は思っていたのだが、 迷っている暇はない、何が何でも探すしかなさそうである。
「他に居そうな場所ってないか?」
 スレアがそう訊くと、フロレンティーナは誰かと話をしていたことに気が付いた。
「なんですって!? それは確かなの!?」
 それに対してフラウディアはどうしたのか聞いた。
「ベイダ・ゲナは――この船には乗っていないんですって――」
 フラウディアは驚いた。
「そんな! だって、確かに側近のガルフォードが――」
「――だとしたら、真意を確かめてみるしかなさそうね!」

 そして、奇跡の問題児と徒党を組んでいる2人は、帝国兵に囲まれながらも、そいつらを一蹴していた。 しかし、基本的に一蹴しているのはこの男だけ――
「雑魚が! もっと骨のあるやつはいねえのか!」
 イールアーズは激しく燃え上がっていた。
「なんだかんだで結局あいつが全部片付けてくれるんだよな」
「確かに便利ね、こんな時だけは使える男」
 クラフォードとフィリスはそれぞれ身をかがめながらイールアーズを背後からこっそり眺めていた。

 アリエーラたちはエナジー・ストーンの制御室まで侵入していた。
「これは――スカ?」
 ユーシェリアはそう言いながら首をかしげていた。 制御室の台座の上にあったエナジー・ストーンからはほとんど力が感じられなかったのである。
「どういうことですか? こんなに大掛かりな船なのに、何もないって!?」
 ティレックスは困惑していると、その時、背後から多数の帝国兵たちが現れた!  3人は構えると、帝国兵たちの真ん中には武人風の上官らしき人物が現れた!
「ちっ、かかったネズミは3匹だったが――同じことか、 いずれにしてもここは洋上の監獄、お前たちに逃げ場はない、素直に諦めることだ!」
 まさか、罠!? すると、アリエーラが話を始めた。
「ということは、やっぱり、そう言うことですね。 この船にお偉方が乗っているということは、いつぞやの戦艦のように、 強力な力を持つエナジー・ストーンを積んでおきたくはない、ということですね――」
 どういうこと!? ティレックスとユーシェリアの2人はアリエーラに訊いた。
「あれだけ強力なパワーを持つ燃料から放出される力はとんでもない力だと思います。 それこそ、力を放出する船が耐えきれない可能性さえあるということです。 そんな船に、普通だったら誰も乗りたくありませんよね。 しかし、当然ながら、ディスタード帝国本土軍の場合、 下々の者にはそんな情報までちゃんと伝わることはありません。 ということはつまり――」
 それに対して武人風の男は答えた。
「素晴らしい! 流石はクラウディアスの特別美人執行官、すべてはお見通しということか!  その通り、この船はいわば囮! ハリボテ程度の役割しか持たないのだよ!」
 そんな、まさか!