エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

紡がれし軌跡 第3部 対決!ディスタード 第7章 アポカリプス

第208節 敵艦侵入

 一通り船を探索し終えると、12人は一堂に会していた。
「どうだった?」
 リリアリスがそう訊ねるとフロレンティーナが言った。
「ガルフォードがいたのよ! あいつがいるってことは間違いない――」
 ガルフォードとは、それについてはフラウディアが続けた。
「ガルフォードはベイダ・ゲナの側近にして忠実な護衛です、つまりは――」
 そう、つまり、ベイダ・ゲナが乗っている可能性が高いということである。
「ガルフォードということはつまるところ、あんたたち”フォディアス”の名を冠する存在ってことか、 まったく、なんでこう、やたらとフォードって名前の付くやつが前に出てくるワケ?」
 そう言うリリアリスに対してクラフォードは「悪かったな」と一言だけ言い、ディアナはただ苦笑いしていた。 しかし、そのディアナ様だが――
「おっ、おい、お前、何があったんだ!?」
 イールアーズはディアナの姿を見てひどく驚いていた。 さっき別れる時とは大きく変わっており、顔立ちなどは割とそのままだが、 以前よりももっとスマートな感じになっており、美人さを際立たせていた。 さらには身体つきが大きく様変わりしており、なかなかのナイスバディさんに変貌していた。
「どうしたのです、イールアーズさん。 何って、別に何でもありませんよ? 相変わらずおかしな人ですね、うふふっ♪」
 イールアーズはそんなディアナに引いていた。 しかし、それとは反対に、女性陣はディアナの存在に食いついていた。
「すごい! えっ、何!? イールじゃないけど本当にどうしたの!?  すごいじゃない! これが本当にあのディア様だっていうの!??」
 フロレンティーナは興奮しながら訊いた。
「すごーい! やっぱりディアナお姉様は素敵です!  これがその、要するに素材の力を最大限に発揮させた成果なんですね!  わあー、やっぱりお姉様って素敵だなぁ――」
 フラウディアも狂喜乱舞していた。
「私の妹、ガチ。男はその線から立ち入り禁止」
 カスミも相変わらずぴょんぴょん飛び跳ねながらそう言った。
「わあー、いい匂いがするー! ディアナ姉様最高! 私の憧れのお姉様ー♪」
 ユーシェリアもそう言った、あんた、どれだけ憧れのお姉様がいるのよと小一時間。
 さらにフィリスとアリエーラも話に加わった。
「なるほど、これが変装術の力をフルに使った場合の能力というわけね。 確かにこれは、私が男だったら嫁にもらいたいレベルの娘ね」
「本当にすごいです! 私もディアナさんのことが欲しくなっちゃいましたー♪」
 リリアリスは得意げに答えた。
「これが実は異性だからってのが評価が高いところね、まったく、私も欲しくてたまらんもん。 ディアナったらなんて罪作りな娘なのかしら、エレイアが羨ましすぎるわね。」
 そう言われたディアナは口を手で押さえてしおらしい仕草で笑っていた。 それがまた強烈な萌えポイントでもあり、とにかく女性陣の心を即行で鷲掴みにした。
「ま、でも、実はこのディアナ様の姿だけど、これでもまだ完全系じゃあないのよね。 実際にはもう一工夫できそうなんだけれども、とりあえず今のところは、こんなところかな?」
 まだ改良の余地があるというのか、それはそれでまた絶句ものである。
「そうなんだ、本当にすごいのね、ディア様ってば!  それこそ、リリアの持っている技術の中では一番の能力じゃないかしら!  もう、女装なんていうのは失礼ね! これはもう本物の女よ、女!」
 と、フロレンティーナが狂喜乱舞しながら言っている中、 対して男性陣は、ディアナ様の姿を前にして呆気に取られていた。
「なあ、どういうことだよ、あれが本当に万人斬りって呼ばれた男であってるのかよ!?」
 クラフォードはあからさまに動揺しながら訴えた。
「……少なくとも、俺としてはあれが男には全く見えないんだが。万人斬り? 冗談だろ?」
 ティレックスはもはやどうしていいのかわからずにいた。
「……まあ、ディスタード本土軍のベイダ・ゲナに対する最終兵器ということならわかった。 でなければ俺もうまく説明できそうにない――」
 スレアは言葉を失いかけていた、 しかし、それがちょうどいい説明なのかも自信がなかったようである、実際当たっているのだが。
「もういい! わかった! 万人斬りのディルフォードはもうこの世にはいない!  やつは死んだ! 失踪したあの日からな!」
 イールアーズは開き直っていた。 イールアーズは当人を貶すつもりで言い放ったのだが、 皮肉にもそれこそが当人の真の狙いである、ようやく伝わったのか。
「それはいいとしてもだ、一番の問題はどうしてこんな洋上のど真ん中で、 しかも敵の陣地のど真ん中でああなったのかだ。 それがたとえ女嫌いのベイダ・ゲナに対する精神攻撃だとしてもな!」
 クラフォードはまたしても頭を抱え悩みながらそう言った、彼の悩みはさらに重くのしかかってきそうである。

 なんだかんだで話がまとまると――多分まとまっていない気がするが、作戦はすぐにでも決行された。 即決の理由としては、これまでメンバーの調子が悪いということもあってか、 作戦の内容をきちんと考えていないことが挙げられる――そんなんで大丈夫?
 さらには重要拠点を探るには、ミスト・スクリーンの効き目が怪しい区画を通らないといけないこともあり、 そのリスクを冒してまで進むのは厳しいため、そのためにも早めに事を起こすことにしたようである。
 そんな中――急に艦内に警報が鳴り響いた。
「えっ、まさか、もう見つかったのか!?」
 ティレックスは焦りながらそう言い、ユーシェリアも不安そうにしていると、アリエーラが言った。
「確かに私たちが侵入していますが、アラートのタイミングを考えると見つかったためではないように思います。 となると、もしかしたら、この艦の元々の目的のために鳴らされたアラートと考えるのが妥当かと思います。」
 この艦の元々の目的のため――まさか! ティレックスとユーシェリアは思い出した!
「まさか、ミサイルがクラウディアスに!?」
 すると、一つのミサイルがけたたましい音を上げながら飛び出していった。 それと同時に強烈な風が巻き起こり、ティレックスとユーシェリアは手すりにしがみついていた。 一方でアリエーラは自分の目前にバリアを張り、自慢の長い髪があおられた程度で、 彼女自身の目は発射されたミサイルを後ろから睨んでいた。
「あ、アリエーラさん――今のって――」
 ティレックスはそう言うとアリエーラは言った。
「あんなの、フィールドの力、リリアさんの力の前には無力も同じです。 それよりも私たちはなすべきことをしましょう!」
 確かに、アリエーラの言う通りなすべきことをしなくては、まさにその通りである。