エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

紡がれし軌跡 第3部 対決!ディスタード 第7章 アポカリプス

第204節 最後の抵抗

 ユニットがほとんどなく、ほとんどがブランク・ユニットだらけ――要するに、 ユニットの差込口のほとんどにキャップが付いているような状況だけれども、 それでもリビング・ユニットだけはあった。
「前は広いと思ったが、あっちと比べるとやっぱり狭いな」
 リリアリスは頷いた。
「まあ、ちょっとした休憩場所的においといたのよ。 ついでに、実験的な用途としても置いといたのだけど――ほら、2号機作ったじゃない?  で、2号機用にユニットを開発するために、その試作品をここで作っていたってワケよ。 ちなみにあのホロウ・グラフ・システム・ユニットもその成果物ってワケ。」
 つまりは今や作業場にもなっているらしい、ついでに周りはユニットの設置場所だらけということもあるし。 そのせいか、ユニット内も作業場所なりに少々ごたついていた。
「それなのに解体するのね?」
 フロレンティーナはそう訊くとリリアリスは頷いた。
「兵器にも転用できるレベルの危険なスペックだからね。 2号機あれば使うこともないし、すでに2号機も完成しているから、こっちはお役御免にしたいところだけどね。 だけどまさか、こんなタイミングで使うことがあるなんて思わなかったわね。」
 するとその時、マダム・ダルジャンは敵の船に近づいて行った。
「近づいても大丈夫なものなの?」
 フロレンティーナは心配しながら言うとリリアリスは答えた。
「ええ、恐らくだけど、音を立てても大丈夫ハズよ。」
 恐らくってどういうことだ、クラフォードはそう訊いた。
「”理論的には”ね。試したことないから実際にどうなのかはわからないわね。」
 それに対してフィリスは「ふっ、やっぱり――」と言った。 そして、敵の船の隣をかすめていくと――敵は全員こちらを見ているような気がしなくもないが、どうだろうか――
 その後、マダム・ダルジャンは何事もなかったかのようにその場を去った。
「話し声はクリアー、マダム・ダルジャンの動力音も波の音も特に問題なさそうね。 要するに、物理的なところについても全面的に隠し通せたってことになるわね。 魔法能力についてもクリアーしているから、こっちから何かしらの動きがない限り、 敵はこの船を発見するのはほぼ不可能ってところね。」
 そんなことを平然とやってのけるとは恐るべし。

 目的地点まで到達すると、リリアリスは船を止めた。
「本当にここでいいの?」
 フィリスは来た方向を確認しながらそう訊くと、リリアリスは頷いた。 後ろのほうにはずっとその場で待機している敵の艦隊がたくさんひしめいていた。
「連中が搭載していたのはフローナス製の、命中率を考慮してか近距離ロケットミサイルだったわ。 実際にクラウディアスのどのあたりを狙ってくるかは気になるところだけれども、 少なくとも、フェラントを狙うのであれば最低でもこの辺りから狙わないことには届かないハズね。 もしくは牽制のためにあえて遠目に置くということも考えられるけれども。」
「クラウディアスをミサイルのエサにしてそのすきに問題の船に乗り込むって作戦だが、クラウディアスは大丈夫なのか?」
 ティレックスが訊くと、カスミが答えた。
「ミサイル、フィールドでクラウディアス無事」
 続けてリリアリスが言った。
「レーザーのほうもシステム改良に伴って問題は解決済みよ、 伊達にエナジー・ストーン解析していたわけじゃあないんだから、そこは大丈夫。 でも、それはあくまで以前のタイプであればの話であって、あれとは違うタイプのものだとしたら――」
 だとしたら――どうなのだろうか、リリアリスは話を続けた。
「でも、レーザーもそんなに遠くに届くような武装ではないことは確かね。 そうでなければわざわざミサイルも搭載するとは思えないし、見た目からして結構豪華な作りな感じの船だから、 本土軍の本気にして最後の作戦的な感じじゃないかしら?」
 クラフォードはそれを聞いて呟いた。
「確かに、本土軍の最後の抵抗って感じだな。 しかし、本土軍はどうも戦う相手を間違えている気がしてならないな。 直接兵隊同士で戦うにしても技術力で戦うにしても、これが相手だと、流石に――」
 それでも戦うのを辞めないのがある意味本土軍のすごいところでもあった。

 そして、問題のヴィザント艦が大接近してきた。
「来たわね、思った通りと言えば思った通りだけど、映像で見るよりはずいぶんとまた大きな船ね。 最後の切り札として出してくる船には相応しい装いなんじゃない?」
 大きさはどこかの超大型ショッピングモールかっていうぐらいの大きさで、 全長25メートル程度のマダム・ダルジャン初号機の大きさが霞んで見えるほどの大きさだった。
「船の大きさ的に、向こうに飲み込まれるんじゃないかってのが普通の考え方だが、この船は違うんだろ?」
 クラフォードはそう言うとリリアリスは頷いた。
「そうよ。 ま、これまで何があっても何かしらの機能で危険を回避できてきているわけだから、 あえてわざわざ何がどうなっているのか説明しないけれども、とりあえず、あいつら止まる気がないみたいだから、 ゆっくりと追うことにするわね。」
 そう言いながら、リリアリスは巧みな操舵テクを駆使していた。 マダム・ダルジャンはヴィザント艦の背後へと回り、追跡した。 しかし、先ほどよりもスピードが出ているような気がするが、大丈夫だろうか。 それについて指摘すると、フィリスが答えた。
「今までのトロトロ航行で気にしていたのは波なんじゃない?  見てよ、敵が作った波の上を動いているみたいだから、自分の足跡を消して動いているって感じね」
 それに対してリリアリスは頷いていた。
「このスピードなら波以外は見えないから大丈夫よ。 波は今フィリスが言ったように敵が作ったやつでカモフラージュしているから大丈夫ね。 だから後は――頃合いを見計らって攻撃に入るわよ。」
 緊張が走る――。