数日後、クラフォードはフィールド・システム・ルームにて、ティルア近海の映像を確認していた。
「こういうのはあまりよくわからないんだが、
それでも、遠くをこんなにはっきりと確認できるシステムがすごいってことぐらい、この俺でもよくわかるぞ」
レイリアが答えた。
「ウィーニアさんとアトラストさんからのリクエストですね。
ティルアでも似たようなことがしたいというので、グラエスタ・シールドの機能を拡張しました。
グレート・グランドの各所にアンテナを設置頂いているハズですので、グレート・グランド近海の様子もよく見れますよ。」
まさにクラウディアスとグレート・グランドが同盟を結んでいる証でもあった。
「その間にある”魔の乱域”の様子もまるわかりだな、乱域も今はずいぶんと穏やかな状態か」
レイリアはさらに端末を操作して別の画像を展開した、波が荒く、天気も悪化していた。
「これはルーティスの南側か、大渦だけでなく天気も悪化してきたな」
つまり、ルーティスとも同盟を結んでいる状況である。
さらにはセラフィック・ランド近海、そして、ティレフ・ガーデンとヘルメイズ、ガレア近海の様子もしっかりと見渡せるようになっていた。
「あれ? ルシルメアとアルディアス、それからキラルディアはどうした?」
クラフォードは訊ねた。
「キラルディアは場所が遠いので、今回は断念しています。
今後は海底ケーブルを結んで何とかする方法を考えていますが、
何せ、やることが大掛かりなので、実際にどうするかは未定です。」
ルシルメアは土地が広く、実際にどこにアンテナを張るかはまだ検討できておらず、
さらに周辺諸国……主にケンダルスとの兼ね合いもあるルシルメアについてはどうするかまだ整っていないらしい。
アルディアスも土地が広く、場所が手付かずな状態に近い南側についてはともかく、
居住域である北側については設置する場所が定まっておらず、未だに調整中ということなのだそうだ。
「まあ、自治区一つの判断ですぐに簡単に設置できるセ・ランドとヘルメイズ、
それから独自の方針で国が動いているルーティス、
そして鶴の一声だけですんなり話が決まってしまううちの国とは違うからな、どの国も。
それじゃあ仕方がないか」
そう言いながらクラフォードはティレフ・ガーデン周辺の海の映像を出した。
「なんか、膠着状態に陥っているって感じだな?」
お互いの勢力は大きく距離を取っている状況だった。
ちなみにその状況、数日前からそんな状況だという。
「ヘラッセル側としては大渦が止まるまで待っているのでしょう。
もちろん、マダム・ダルジャンから発信される力を解除しない限りは大渦は止まらないので、
ヘラッセル側はこのままずっと待ち続けることになってしまいます。
一方で、フェラント近海の勢力についてはティレフ・ガーデンで待機している勢力がなければクラウディアスを堕とせないと踏んでいるのでしょう、
以前にディスタードがクラウディアスに進撃した数に比べて圧倒的に少ないため、彼らとしては待機している勢力を待つしかありません。」
「てことは、連中はこれ以上どうにもならないという状況ってわけか。
ならば、俺たちとしてはフェラント南にいる連中を薙ぎ払うチャンスがあるってわけだが、それをしないのは――」
レイリアは答えた。
「これまで本土軍に何度かしてやられていますし、
今回もヘラッセルという切り札を使われていますからね、
ですから、2つ目の切り札がどのように出るのか、探っているだけです。」
まさか、連中にはもう一つのカードがあるのか、クラフォードはレイリアに訊ねた。
「一度、無国籍小隊という手段を使っていますからね、もしやと思って探っています。
それに、本土島で得られた情報の中に不可解なものがありました――」
それについてティレックスが答えた。
「そういやそれって、ユーシィが一昨日そんなこと言ってたな、
本土島で変なデータが見つかって、今はヒュウガが解析中なんだとさ。
よくわからんが、なんだか裏がありそうな口ぶりだった」
なるほど、クラフォードはそう考えると、一つの疑問が浮上した、それは――
「そういや、大渦はずっと発生したままなのか?
意図的に海を荒らしているのも気になるが、そのシステムがこのまま持つのかも気になるところだな――」
レイリアは答えた。
「あの海峡は元々大渦の有名な発生スポットですので、影響はそこまで大きくありません。
大渦の持続期間は長くて3か月ですので、そこまで焦らされれば敵のほうから別のアクションを取ることは必至です。
フェラント南にいる先遣隊はもはや食料が付きてしまうことでしょうし、
後続隊も諦めて出直しを余儀なくされることでしょう。」
なんてシステムだ、3か月も大渦を発生させたままにできるとは。まあ、それについては今更なので――
もとい、ということは、敵はカードを切らざるを得なくなる――圧倒的な技術力を駆使して敵の鼻を明かすこの行為、
ディスタード本土軍はますますこいつに勝つことが難しそうである。
しかし、クラウディアス連合軍は今後はどのように展開していくのだろうか。