船でクラウディアスへとたどり着いた一行、もちろん、フィールド・システムを使用して姿をくらまし、
アクアレア側から上陸したのである。
「みなさん、おかえりなさい!」
アリエーラがやってくると、レイリアは彼女のほうに向かって行き、そのまま足早に2人でどこかへと去ってしまった。
その様子にイールアーズは憤慨しているが、クラフォードとティレックス、そしてスレアとしてはいつものことであり、
両手を広げてやれやれといったポーズをしていた。それに対してイールアーズ、
「なんだよ、いいのかよあれで、取り残された俺らはどうすればいいんだ?」
そんな彼に対し、クラフォードは諭すように言った。
「ああ、いつものことだから今更どうってことはない、慣れたもんだ。
でも、ここにいても仕方がないからな、俺たちも早いところ城のほうに戻って状況を確認した方がいいと思う。
それしかないだろ?」
クラフォードがそう言うと、ティレックスとスレアは頷いた。
「で、お宅らはどうする?」
クラフォードがさらにそう言うと、フロレンティーナは答えた。
「フェラント側が気になるけれども、あなたの言う通り、城に戻るのが先決ね」
それに対してフラウディアとディアナは頷いた、ディアナって――
「あのさ、あんたはいつまでその姿でいるんだ?」
「えっ、いいではないですか? これはこれで面白いものが見れますよ?」
面白いものが見れるって――こいつ、いつからこんなに意地が悪くなったのだろうか、クラフォードは頭を抱えていた。
それから数時間後――
「面白いな――っていうのはこの状況下であまり適切ではないのかもしれないが、
このシステムでクラウディアスに接近している連中を確認できるってのはなんだかすごいな」
クラウディアス・システムの講習を受けてきたばかりのクラフォードはそう言った。さらに続けた。
「でも、今更だがクラウディアスの内情を他所の国の連中に教えることになっているわけだが、いいのかそれで?」
レイリアは答えた。
「クラフォード様でしたら問題ございませんわ。私はクラフォード様のことを信じておりますので――」
が、クラフォードはそれを無視して話を続けた。
「でも、イールは講習に参加してなかったようだが、あいつはダメ?」
「イールさんは”こんなおもちゃに頼るほど落ちぶれちゃいない”などと言って辞退されましたので――」
イールアーズらしい一面である、世の中、情報化の世界なのに――クラフォードは鼻で笑っていた。
「私も機械はニガテな方ですが、作る人がそういう人にもちゃんと扱えるようにインタフェースを整えてくださるおかげで、
これなら私でもちゃんと使えますね」
ディアナは前向きだった。
「確かに、それもそうだな、そういうところはやっぱりこだわりの強いやつが設計しているだけあって間違いのないところなんだろうけれども」
クラフォードがそう言うとレイリアは答えた。
「先ほどの船の話ではないですが、それこそ、このインタフェースはライト仕様のものです。
中枢向けにさらにディープな仕様や、システムに直接アクセスできるようなインタフェースも備えてありますよ。」
なるほど、クラフォードは頷いた。
「本土軍と違ってセキュリティがしっかりとしているのは流石というべきだなだ。
本土軍のセキュリティはザル同然だったみたいだからな」
「実際、本土軍のセキュリティは高いハズなのですが、相手が悪かったというのが実際のところですね。
私とヒー様の手にかかれば本土軍のファイアウォールを突破するのにそんなに時間はかかりません。
ついでを言うと、不正アクセスログも検知しない仕様のようですので、対策面では確かにザル同然です。」
「俺にはよくわからない世界だけど、不正がわからないっていうのは問題なんじゃあ――」
「まあ、本土軍のシステムからすれば正当な手続きと似たような経路でアクセスしているので、
それが不正なのかどうかが判断できないシステムの作りなら仕方がありませんね。
それに、スタンドアロン――ネットワークとは切り離されたところに別に管理している端末もあるみたいなので、
真に重要なデータがある端末はそういうことで対策しているのかもしれませんね。」
クラフォードは頷いた。
「まあ、妥当と言えば妥当な手段だな、外からのルートのない端末なら流石に潜り込むことはできないか。
でも、それだといろいろと不便な気がするが――」
レイリアは答えた。
「もちろん。
それこそ、やり取りするデータが膨大な量で、ネットワークでなくてメモリーカードなどの媒体でやり取りするなんて言うことになると、
いろいろと面倒です、時間もかかりますし――」
クラフォードは考えながら言った。
「どこかで聞いた話だなと思ったら、少し前のリジアル島でのあれか。
一旦カードに落とし込んで他の端末にって手法をやっていたんだな?
確かに、外部に漏れる心配はなさそうだが、なーんか面倒そうだ」
レイリアは考えながら言った。
「いえ、実はこの方法が一番外部に漏れるリスクが高いです、特に本土軍の場合のリスクの高さはほとんどピンチと言えるレベルですね――」
そうなのか? クラフォードが訊くと、アリエーラが続けた。
「確かに、重要データをカードに落とし込んでいる状態のまま、
もし、本土軍に不満のある人の手にそれが渡って持ち出しされたりなんかしたら、
クラウディアスさんにお渡しくださいってなりますね。
ということはもしや、以前にルシルメアのF・F団に本土軍のタレコミがあったという情報というのは?」
えっ、マジか……クラフォードは唖然としていると、レイリアがにっこりとしながら答えた。
「ええ、まあ、そういうことですね。
特にほぼスパイみたいな行為をしているグリモッツさんがうまい具合にそれをやってくれています。
おかげで本土軍の一部の行動が手に取るようにわかるようになっています。
もっとも、グリモッツさんはそこまで偉い権限をお持ちではないため、盗れる情報にも限りがありますけどね――」
クラフォードは敵であるとはいえ、本土軍に同情するしかなかった、こんなやつに勝てるわけがない。
だからと言って向こうに加勢しようという気はさらさらないのだが、改めてこの女……いや、
リファリウスとリリアリスの恐ろしさを知ることとなった、
技術と能力とそして根回し――とにかくいろいろとやばすぎるスペックの持ち主である……。