そうこうしているうちにフェラントの近海付近までやってきたマダム・ダルジャン、
するとそこには、軍用の船のような影が何隻か見えてきた。
「あれは何?」
フロレンティーナがそう言うと、レイリアはカスミを抱えたままその船を見て首をかしげていた。
「さあ、なんでしょうか、少なくとも、連合軍のいずれのものでもなさそうですが――」
すると、レイリアのスマートフォン端末に連絡が入った。
レイリアはカスミを起こして立たせた後、慌てて操舵室のホルダーに端末を挿入すると、話を始めた。
「どうしましたか、アリエーラさん?」
すると、スピーカーからアリエーラの声が聞こえてきた。
「連絡が遅くなりましてすみません、少しバタバタしていたもので。
ところで今、どちらにいますか?」
レイリアは場所を伝えると、アリエーラに目の前の状況について言った。
「そうですか、すでに御覧になっている状況なのですね。
実は今ほど、ナミスさんから連絡がありまして、その船影の正体を知っていそうなんです。
今、ルーティス側と通信をつないでいるところですので少しお待ちください――」
というと、スレアが言った。
「それより、クラウディアスは大丈夫なのか?」
アリエーラは答えた。
「はい、スレアさん、ディスタード本土軍は上陸し来ていないみたいですね。
だけど、そちら側の船は一体何なのでしょうか――」
そして、スピーカーからラトラの声が聞こえてきた。
「今、つながりましたので、お願いいたします!」
すると、今度はナミスの声が聞こえてきた。
「ナミスです、リファリウ――いえ、レイリアさん、
早速ですがそこにいる船の正体についてお話をさせてください――」
女性陣はみんなレイリアの正体を知っているのか、クラフォードは頭を抱えながらそう思っていた。
その船の正体は、ディスタード本土軍を支持している勢力のものだという。
その勢力の名を聞いてクラフォードは反応した。
「ヘラッセルだって? どこかで聞いた気がするな――」
ナミスは話を続けた。
「私はヘラッセルについてはあまり詳しくありません。ですので、代わりの者にお話をさせます――」
すると、男の人の声が聞こえてきた、その人は何を隠そう、あの召喚名手ナキルだった。
「やあみなさん、ご無沙汰しています。
特にアリエーラさん、このような形にはなってしまったけれども再びお話ができるなんて嬉しいね。
それよりもヘラッセルについてだけれども、クラフォード氏、キミの父親が一番よく知っているのではないかな?」
そう言われたクラフォードは少し考えながら自分のスマートフォン端末を操作しながらレイリアに差し出した。
レイリアは頷きつつマダム・ダルジャンにそれを接続した。すると、スピーカーからとある人物の声が――
「んだぁ? 今はちぃっとばっかし手が塞がっているから、後にしてくんねえか?」
それに対し、クラフォードが片手で頭を抱えていた。そして、ナキルが話をし始めた。
「やあ、久しいねバフィンス。
今はナミスと一緒に話をしているもんだから、内輪の話は避けることをオススメするよ」
それに対し、バフィンスはあからさまに焦ったような態度で話を始めた。
「おまっ! ナキルか! ナミスと一緒って――クラフォードのやつはどうした!」
「聞いてるよ、”みんな”がな。
まあ、いきなりスピーカーにつなげたことについては悪いと思ったんだが、
急を要する話だ、だから勘弁してほしい」
クラフォードがそう言うと、レイリアが言った。
「私もクラウディアス側も聞いておりますのでバフィンス様、どうぞよろしくお願いいたします。」
そう言われたバフィンス、あからさまに照れた様子で言った。
「お、おう! んで、その、この俺に何の用だ?」
すると、ナキルはクラウディアスにヘラッセルの船が接近していることについて話をした。
「ヘラッセル!? なーるほど、連中はまーだ諦めてねぇってわけか――」
そう言うと、ナミスは疑問をぶつけてきた。
「ヘラッセルは――大昔の大戦に敗れた敗戦国で、今や小さな規模の民主国家のようですが――」
それに対してナキルが答えた。
「市長、それはあくまでヘラッセルの表側の姿にすぎません。あの国の本体は裏にあります」
すると、バフィンスは追随した。
「ああ、そういうことだ、あの国を実効支配していたのはウォンター帝国よ!」
なんだって!? 何人かはそれを聞いて非常に驚いていた。