リファリウスもとい、レイリアの美しさについてはキラルディア内でも話題になっていた。
レイリアはそのまま応接室の座り心地の良いソファの上で待っていると、そこへ3人のキラルディアの重鎮たちがやってきた。
「本当に美しいな、まさか、実は本物ではあるまいな?」
ヴェラルドのさらに目上の者がそう言うと、レイリアはただニコニコとした表情で返していた。
「いずれにせよ、我々の課題をのんだことに変わりはない、であれば、
我々としては、彼女らの――いやいや、彼らの要求に応えねばなるまいな」
そう言い直したことについて、レイリアは「どちらでも構いませんわ――」と、上品な感じに答えた。
「それにしても変装ということですが、なかなか面白い特技をお持ちですね。
つまり、変装ということは、他国に潜り込んで、スパイ活動を行うことも?」
「ええ、一応は。」
それについて、レイリアは丁寧に答えた。
「ほう、ディスタードのアール将軍ですか、
まさかディスタードの内部、それも将軍位の者に――それをあなたがやっているとは――」
さらに、もう一人の重鎮が鼻の下を広げながら言った。
「にしても、本当に綺麗な人ですなぁ♪ うちの嫁に欲しいぐらいだぁ♪」
それに対してヴェラルドは釘を刺した。
「それ、コンプラに引っかかりますよ。
ですが、それを聞いていいことを思いつきました。
変装ということで、うちの外交官を語ってみては如何でしょう?」
ヴェラルドはその狙いについて話すと、レイリアは納得した。
「なるほど、外交を閉ざした国のツケということですね――」
「まあ、そういうことです、こういう国ですから、外交についての専門家などいません。
ですから、暫定的に、あなたにお願いできればと思っています。無論、それに対する報酬も用意させていただきます」
それに対してレイリアは言った。
「はい、是非ともお願いいたします! 報酬は、この国を開けてくださればそれで結構です。
開けるのが無理なら、我々の連合国間内だけでも結構です! ですから、本当に、お願いいたします!」
レイリアが頭を下げると、3人は慌てた様子で対応していた。
「にしても、本当に可愛いなぁ♪ この際、男なんてやめて、本当に女性になったらどうかなぁ?」
「だからそれは、コンプラに抵触するって言っているんだけれども――」
だが、その発言に対してレイリアが気にしているような様子はなかった。
「それにしても、コンプライアンスというのは? お国のお仕事の方々なのに、ちょっと気になってしまいました――」
レイリアはそう訊くと、ヴェラルドは気さくに答えた。
「これはここだけの話にしていただきたいのですが、
実は、我が国家については昔とは体制が大きく様変わりしておりまして、
お恥ずかしいことながら、以前の帝国の体制では行き詰ってしまったのです。
しかし、歴史的背景的なこともあるせいか、この体制から変わること自体は国民からの反対もありまして、
結果的に運用については民間委託ということでなんとか凌いでいるという、
なんとも変わった統治体制で継続しているのが我が国の今の姿なのです」
つまりはヴェラルドも含め、
レイリア目の前にいる重鎮たちはいずれもどこかしらのキラルディアの民間会社に籍を置くスタッフだということらしい。
「それでコンプライアンスを気にしているわけですね!」
レイリアはそう言うと、ヴェラルドは態度を改めて言った。
「まあ、確かに、そうですね――お国のお仕事なのにコンプライアンスというのは確かにおかしいですね。
今後は他の国とお話をする際には気を付けることにします、貴重なご意見、参考に致します!」
「女性の顔を殴りつけるだなんて、今のはあんまりですね。
そういうことを平気でするのなら流石に私も容赦しませんよ?」
レイリアはシステム・Tに向かってそう言った。
その表情は優しそうな感じの表情だが、それが返って恐ろしい感じのする、あからさますぎる作り笑顔のような表情だった。
そして、フラウディアはレイリアの表情を見ながら恐る恐る言った。
「お姉様、怒ってますね……。
あの人の顔に攻撃を与えようものなら、相当怒ると思います――」
スレアとティレックスが続けて言った。
「そういえばリファリウスっていつも顔のことを気にしているよな、それこそ女かって言うぐらいに。
こうなったらシステム・T以上に手が付けられなくなるような気が――」
「それは怖いな、俺たち、ここにいて大丈夫か?」
そして、システム・Tがレイリアに急接近してきた次の瞬間、システム・Tの身体中から大量の血が噴き出してきた。
「切り刻んだ! 流石はキチガイ刀!」
スレアがそう叫ぶと、ティレックスは慌てて2人の前に立ちはだかり、バリアを張った!
すると、システム・Tの身体は前のほうから思いっきりものすごい力で吹き飛ばされたかのような勢いで吹き飛び、
そしてその身は砕け散った!
そして、その砕けた身はティレックスたちのほうへと覆い被さってきたのだが、
ティレックスの張ったバリアにより、3人は難を逃れたのであった。
「まったく、相変わらず、容赦ないよな。少しぐらい手加減できない?」
ティレックスがそういうと、レイリアは可愛げな態度で聞き返してきた。
「敵とあらば容赦しないに決まっているではないですか?」
そんなレイリアの態度に対し、ティレックスは――
「それ、そろそろ辞めない? もうわかっているんだからさ――」
「えっ、何の話です?」
いや、じゃなくて――まだ続けるのかとスレアとティレックスは悩んでいたが、フラウディアはなんだか楽しそうだった。