エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

紡がれし軌跡 第3部 対決!ディスタード 第6章 連合軍の作戦

第190節 取引の真実

 キラルディア組のクラウディアス初訪問時、 リリアリスによってとある部屋へと促された彼ら、そこにはクラフォードも居合わせていた。
 話し合いは着々と進み、話にもまとまりが付いていた。
 そのような中、クラフォードはずっと引っかかっていたことがあった、それは――
「協力してくれることについてはありがたいし、今の話し合いについても理想の形で終わったということで、 俺らとしても願ってもないことなんだが――だけど、それでもどうしても気になっていることがあってな――」
 クラフォードはそういうと、キラルディア国の特別執行官・ヴェラルドが言った。
「やはりそうか、リファリウス氏がどういう方法で我々を納得させたのか、それが知りたいということだね?」
 そう言うと、クラフォードは頷いた。すると、ヴェラルドが言った。
「キミの隣にいる人がまさにそれだよ。彼女に聞けばすぐにわかるさ」
 自分の隣? すると、隣にいるレイリアがクラフォードの腕をぎゅっとつかみながら言った。
「まあクラフォード様ったら、私のことがお知りになりたいのですね?  うふふっ、いいですわ、あなたには特別に教えて差し上げますわ♪」

 ある日、リファリウスは帝国本土軍が侵略を進めているユーラル大陸の周辺を視察に行っていた時のことだった。 そして、その近くにドリストン大陸の北西端にあるキラルディア帝国の存在を確認した。
 リファリウスはクラウディアスの特別執行官として、キラルディアに協力を仰ぐべく、 キラルディアの地を踏みしめることを考えたのである。
 そして、リファリウスは会議室で待つこと10数分、ヴェラルドが現れたのである。
「どうも、お待たせして申し訳ない。 私はキラルディアの執行官、ヴェラルド=アルノーディスと申します、以後、お見知りおきを」
 そんな彼に対し、リファリウスは話をした、すると――
「クラウディアスさんのお噂はかねがね。 それに、ディスタードのユーラル侵攻については我々も肝を冷やしている状況ですので、 できることならば協力したいところですがね――」
 リファリウスの話に対し、ヴェラルドはそう返すと、リファリウスは訊き返した。
「できることならば協力したい、ということは何か問題でも?」
 ヴェラルドは言った。
「いえ、できないことはないのです。 但し、それをするうえでは一つだけ我々からの課題をこなしていただかなくてはございません」
 ヴェラルドはキラルディアの内情について説明すると、リファリウスは悩みながら言った。
「なるほど、要するに、我々に課題を出すということでしょうか?  それで私共の本気度を見定めると、そういうことなんですね?」
 ヴェラルドは遠い目をしながら言った。
「お恥ずかしい話ですが、我々の国は決して大きな国ではありません。 すべては大昔にあった大戦がもたらした悲劇によるもの、 今でこそ、地下資源豊富なこのキラルディアの地ですので、国民も裕福な暮らしができている状況ですが、 それを突け狙わんとばかりに他国からの侵略も少なからずあります、 いずれ、ディスタードもそのうちの一つということになりましょう。 ですから、我々としては、協力を頼る国を選ばざるを得ない状況なのです、 ということで申し訳ないのですが、我々の苦しい心のうちをご理解賜れますよう――」
 それに対し、リファリウスは訊いた。
「ということは課題をクリアーすれば協力してくださるということですね?  それではお伺いいたしますが、その課題とはどのようなものでしょうか?」
 そう言われたヴェラルドは少し考えていた。すると――
「そうですね、それについては少しお時間を頂ければと思いますが、どうです?  その間、町のほうに散策に出られてみては? 無論、同行者も付けます、ですので――」
 リファリウスは楽しそうに答えた。
「そうですね、こんなに賑やかな町がこの地にもあるなんて思ってもみませんでしたから、 散歩がてら、楽しんでみようと思っていたところなのでちょうどよかったですね。 それでは、そうさせていただきますね。」

 リファリウスは町を散策している中、時間になったため、再び帝国軍本部内部へと促された。
 そして、先ほどの会議室で待つこと5分、ヴェラルドが慌ててやってきた。
「すみません、お待たせいたしてしまったようで。 しかし、大変申し上げにくいのですが、あなた方に課す内容が決められなかったのです――」
 えっ――リファリウスはどういうことかと訊き返した。
「確かに召喚王国クラウディアス、強大な国ですが、非常に申し上げにくいのですが、 そもそも論として、我々はあなた方の国をそこまで把握しきれていなかったということです。 クラウディアスさんに置かれましては無論、エンブリア創世神話にも登場するような国ですので、 それについては存じ上げておりますが、それ以上についてはさほど把握していないのです。 そのため、非常に申し上げにくいのですが、今回の話はなかったことに――」
 すると、リファリウスは改めて訊いた。
「えっと、結果論として、何も出なかったということですか?」
 ヴェラルドは言った。
「ええ、そういうことになりますね。 無論、話し合いの中には何個か出てきましたけれども、 それは流石に失礼だろうと思って却下されたものばかりなので、結果的に何もないということになりましたね。 昔は結構過激な要求を提示した例もありましたが、最近ではさすがにそれはということで、 いずれもコンプライアンスに引っかかるというものばかりとなり――」
 むしろそのコンプライアンスというのが引っかかるが、リファリウスはさらに訊いた。
「却下されたものというのは、例えばどんなものです?」
「そうですね、例えば女装など――」
 そう言ったヴェラルドは慌てた態度で話を続けた。
「あっ、いえいえ、これは、その――あれです、 リファリウス特別執行官殿の顔立ちがあまりにも美しいものですから、 それで女装してみるのはいかがかということで出てきた話となります。 ですから別に、気になさらなくても結構でございますよ!  無論、課題についてはまた後程改めて考えますので――」
「私の女装が課題ということですか?」
「あっ、いえ、それについてはお忘れください、流石にあんまりな内容だと思いますので――」
 しかし、リファリウスは、その案に便乗することにした。
「いえいえ、私の女装一つでOKとして頂けるのなら、甘んじて引き受けさせていただきますよ。 かくいう私も、変装の類については少々心得がありましてね、 女装程度でしたら別にいくらでも御覧に入れましょう、それでよろしければ――」
 それに対してヴェラルドは前向きに答えた。
「えっ、なんと、それでよろしいのですね! であれば、それでお願いしたいのですが、本当によろしいのですね!」
 それに対してリファリウスは得意げに答えた。
「せっかくですから、キラルディア美女というのに挑戦してみましょうかね。 ついては再び、町に出て見たいと思います。 女性の同行者がいると助かるのですが、お願いできますか?」

 町に出て女性化の材料を仕入れてきたリファリウスは再び会議室に戻ってきた。 その姿を見たヴェラルドたちは非常に驚いていた。
「えぇっ!? まさか、あなたがあのリファリウス殿ですか!?」
 リファリウスは得意げに、そして可愛げでエレガントな感じに答えた。
「うふふっ、ええ、そうでございますわ。 私があのクラウディアスの特別執行官でございますわ――」
 リファリウスからはふわっといい香りが漂ってきたようだった。 髪を綺麗に整え、顔もしゃべり方もその装いもすべて整ったとても麗しい美女がその場に佇んでいた。 そして、その服装は可愛らしいデートスタイルの……そう、つまりは――
「ふふっ、ヴェラルド様、私の名はレイリアと申しますわ、以後、お見知りおきを――」
 そう、レイリアの正体は、まさかのリファリウスだったのである。