ディスティアとイールアーズ、そしてスレアとクラフォードはシステム・Dを倒しながら進んでいった。
マザーの撃破に成功したのである。
マザー自身は小さな幼生体のような存在で、倒すのにはあまり苦労しなかった。
しかし、すでに生み出されていたシステム・Dとの戦いはだんだん辛くなり激化していた。
「何がどうなっているんだ、これじゃあ減るどころか――」
クラフォードがそういうとイールアーズも愚痴り始めた。
「ちっ、雑魚ほど群れたがるってのはまさにこのことか、
お前ら、本当に母体を破壊したんだろうな?」
それに対してディスティアが言った。
「にしてもこの数、1つの母体から生み出される数にしては少し多すぎないか?
むしろたくさんの母体がいるべきと考える方が――」
「てことは俺らが破壊したのは一部でしかないってことか、
それに、さっきまで倒していたシステム・Dとは強さも全く違う、
別のマザーがいると考えるべきだろうな――」
クラフォードはそう考えながら言った。さらに続けた。
「確かに本部内はパニックな状態だな。
クラウディアス軍を一網打尽にするためにここまですることにしたってのか、
してやられたって感じだな――」
「くそっ、ナメやがって――」
イールアーズはそのまま怒りに任せてシステム・Dに果敢に立ち向かっていった。
「大変といえば大変ですが、このメンツならやってやれない敵ではないのが唯一の救いですね。
とはいえ、ここままでは辛いことに変わりありませんので、とりあえずマザーを破壊することから考えましょう!」
ディスティアがそういうと2人は頷いた。
4人がそのまま進むと、そこにはシステム・Dの死体の山が積まれている様を発見した。
しかも、その死体には大きな特徴が――
「これ、真っ二つに両断していますね、こんなことができるなんて何者の仕業でしょうか――」
ディスティアが言うと、スレアがそれを見ながら言った。
「ああ、安心しろ、こいつは間違いなくうちのメンバーの仕業だ」
さらに続けざまに叫んだ。
「おい、カスミ! どこにいるんだ!」
それに対し、死体の山の影になっていたカスミがひょっこりと現れながら言った。
「スレア?」
彼女に対してスレアが訊いた。
「町の中はどうしたんだ?」
カスミはいつもの感情の起伏の乏しい言い方で答えた。
「あっちほぼ終わった。クラウディアス兵待機中、それシャナン見てる。
スレアたち遅い、私様子見に来た、このざま。穏やかじゃない状況、どういうこと?」
ディスティアが言った。
「これが噂の召喚獣様の御業なのですね。認識してはいましたが、まさかこれほどとは――」
さらにディスティアは説明を続けると、カスミは頷きながら答えた。
「そのマザーってやつ、あっちいた、妙な感じ、だから私叩き切った。
それからこいつら、湧いてくる数少なくなった」
「もう壊したってことか、それでもまだ数が減らないんだよな――」
スレアがそういうとディスティアが答えた。
「つまりはまだマザーがいるということになりそうですね。
さらに、聞けばシステム・Tというのもいるそうではないですか、
あえて違う種類の存在がいるということはそれなりの面倒ごとを用意しているに違いありません、
心してかかりましょう」
「TだとかDだとか、とにかく目の前の敵を片っ端からぶっ飛ばしていくだけなんだけどな」
いや、イールアーズのその考えは間違いではないんだが――
そして、さらに5人は進むとどういうわけか、あれほどいたシステム・Dの姿がなく、
異様な静寂に包まれた通路へと出てきた。
「なんだ!? 一体どうなっているんだ!?」
と、そこへスレアとカスミがいち早く反応した。
「あれはまさか!」
「お姉ちゃん!」
そこには、何やら大掛かりな設備があり、
設備の大型ビーカーの中には何かの幼生みたいなのが入っていたが、
すでに死んでいるようで、黒ずんだ色に覆われていた。
そして、そのシステムの傍らにはフラウディアが倒れていたのである。
「フラウディア! しっかりしろ!」
スレアが彼女を右腕で抱えながらそう呼びかけていた。
それをカスミは傍らで心配そうにじっと見つめていた。
すると――
「ううん――あれ、スレア? どうしてここに? 私は一体――」
フラウディアは気が付いた。
それに対し、スレアは簡単に説明し、さらに話を続けた。
「それでシステム・Dっていうのを破壊しながら進んできたんだけど、一体何があった?」
フラウディアは正気を取り戻すとはっきりといった。
「あっ、そうだ、こうしてはいられません! システム・Tが現れたんです!
システム・TがDを取り込んで吸収し、さらに狂暴化して施設内を暴れまわっているハズです!
あいつをあのままにしていたら――」
と、その時、少し離れたところからものすごい力で何かを叩きつける音が!
「近いです! 行きましょう!」
ディスティアはそう言いながら先に行くと、それに続いてクラフォードとイールアーズの2人も続いて行った。
「私行く、お姉ちゃんのことちゃんと守る」
カスミはスレアにそういうとスレアは頷きながら答えた。
「ああ、フラウディアのことは俺に任せろ」
そして、カスミも去ると、スレアはフラウディアと話を始めた。
「立てるか?」
「ごめんなさい、足をやられてしまったみたいで――でも、もう少ししたら、なんとか――」
「無理すんなよな、どれ、貸してみろ――」
スレアはそう言いながらフラウディアが痛がっている右脚のすねに左手を当てつつ、何かを唱えていた。
「わあ! ひんやりしてて気持ちいい、水の回復魔法ね!」
「人体に直接触れる場合はこれが一番気持ちいいからな、単純な回復効果だけでなく、
医学的にも炎症を抑える効果があって都合がいいらしい」
「それ、お姉様の受け売りですね!」
「まあな。さて、そろそろいいだろう」
そう言いながらスレアは手を一旦引っ込めると、
今度はフラウディアの脚の下に腕を通し、そのままフラウディアを抱き上げた。
それと同時に、フラウディアは両手でスレアを抱きかかえた。そう、お姫様抱っこである。
「いくらもう平気だからと言っても無茶は禁物だからな。しばらくはこのまま安静にしているんだぞ?」
スレアがそういうと、フラウディアは楽しそうに答えた。
「はい、あなた♪」
「相変わらず、可愛い恰好をしているな。今日は例のあの恰好をしないのか?」
「うふふっ、見たいです?」
「是非、見てみたいが――後にしておこうか、長くなるとほかに迷惑をかけそうだ」
するとフラウディアはスレアを誘惑に取り込みながら言った。
「見たいのなら遠慮はいらないのよ、大好きなあなたのためですから――」
そしてフラウディアは例のピンクののセーラー服姿へと変身、スレアをさらに誘惑していった。
「フラウディア――俺のフラウディア――」
2人はその後――って、やってる場合じゃないだろ……。
2人は慌てて正気に戻っていた。
「あっ、後にしようか!」
「そっ、そうですよね!」