一方で、フロレンティーナとフラウディア、同じようにシステムと戦っていた。
「なんなのこれ!? いきなりこんなのに豹変するなんてどういうこと!?」
フロレンティーナはそう訴えてきた。
彼女らが対峙しているシステム・Dも、クラフォードらが戦っているような様相へと変化していたのである。
だが、クラフォードらが戦っているものよりもさらに異様な感じの様相で、
見るからにさらに危険そうな感じを醸し出していた。
それについてフラウディアが答えた。
「私が知っている限りでは、システム・Dの開発には途中でDr.プラッツが関わっています。
お姉様も知っての通り、エリューネルの人体改造にも携わっているあのプラッツのことですから、
それだけで大体お分かりいただけることかと――」
それを聞いたフロレンティーナはため息をつきながら言った。
「そう、やっぱりあのマッド・サイエンティストの仕業なのね、
エリューネルがあんなふうになった時はカワイソウと思っちゃったけど、
こんなものまで作っていたのね、まったく、あいつの考えることはいつもいつも想像の限界を超えるわ――」
さらにフロレンティーナは訊いた。
「ねえ、このタイプってことは増殖するタイプってことよね、マザーがいるってこと?」
それに対してフラウディアが答えた。
「そのハズです、今頃、この本部中に放っているハズですが、一つ問題が――」
問題? フロレンティーナは訊くとフラウディアは答えた。
「システム・Tです。というのも、システム・Dはシステム・Tの開発の過程で開発路線が変更されたのです。
つまり、システム・Tのためにシステム・Dがあるということです。
システム・DとTが合わさったら面倒なことになるかもしれません――」
「一緒になったらとんでもないことになる――それでDとTは別々にスタンバっているわけね。
でも、具体的にどんなことが起こるわけ?」
「そこまでは私にも。
ただ、システム・Tの個体は確か3体ほどしか製造されていないハズですから、
あちこちで遭遇することはないと思います――」
すると、フロレンティーナは改めて剣を構えながら言った。
「それにしても、そういうことだったら最初に言ってほしかったわね、まさか増殖するだなんて――」
「いえ、私も増殖するとは思ってもみませんでした。
あのDr.プラッツの発想ですから、本来であればそういった仕組みは取り入れないハズです。
ですが、Dr.プラッツといえば知っているかと思いますが、あの人は処刑されています。
これは憶測ですが、Dr.プラッツのプライドの高さゆえにネストレールの開発方針と衝突が生じたのかもしれません」
「母体がいて増殖するタイプといえばネストレールお抱えのDr.ムディスの得意技だったわね、てことはあいつのせいかも?
それに、確かに、Dr.プラッツって何故か処刑されていたわね、最初に聞いた時はびっくりしたわ、
本土軍としては結構重要な存在じゃない?
そんなやつを切り捨てるなんて結構思い切ったことしたわねって思ったけど、そんな裏があったのね――」
すると、システム・Dはゆっくりと2人のほうへと動きはじめた。
「増殖するんじゃあこのまま戦い続けていてもらちが明かなそうね、
私がこいつを押さえているから、マザーを探し出してくれる?」
フロレンティーナがそういうとフラウディアは両手でそれぞれ剣をひと回転させつつ、
そして両手にそれぞれ携えながら言った。
「お姉様こそ、無茶なさらないでください!」
フラウディアはその場を去った。そしてフロレンティーナは独り言を。
「マザーを破壊するまでの辛抱ね。
さあ、”ネームレス”の力というものがどこまで通用するのか、教えてもらおうじゃないのよ!」
得意げな表情で剣を構えつつ、そう言った。
一方でシステム・Tと対峙していたレイリアとティレックス、すでに先ほど遭遇していたシステム・Tを破壊していた。
「機械の中から赤い血肉、中身は本当に有機生物だったのか――」
ティレックスは壁に手を突きつつ、息を切らしながらそう言った。
しかしそれとは裏腹に、レイリアは部屋の真ん中で崩れているそいつの前に立ちながら何やら考えていた。
「しかし、どういうことでしょう、なんというか、それほど手ごたえを感じなかったですね、
強いことは強いですが、なんだか妙な感じです――」
すると、今度は2人の前に異形の存在が現れた!
「なっ、なんだこいつは!」
その存在に驚いていたティレックス、レイリアは冷静に答えた。
「もしかして、これがシステム・Dでは?」
そして、そのシステム・Dが次々と現れ、ティレックスは果敢に攻めていったが、
その頑張りも続かず、そのうちシステム・Dの猛攻を喰らうと、その場に崩れた。
そこへレイリアが立ちはだかると、前方にものすごい力を発揮してシステム・Dを一度にねじ伏せていた。
その様子に、ティレックスは驚いていた、今までもレイリアの能力に驚いていたのだが――
「本当にどうなっているんだ、この人は――」
「Tが質ならこちらは量と言ったところでしょうか、
まるでシェトランドさんとエクスフォスさんといった感じですね――」
そしたら今度はまた目の前にシステム・Tが現れた、システム・Dとは違って現れた数は単体だった。
「また出ましたね、強い方が――」
すると、システム・Tの後ろからシステム・Dが現れた。
「強いのと弱いの――言ったってその弱いのでも相当苦労するんだが――」
ティレックスは息を切らしつつ、ギリギリの状況で立ち上がった。
「ティレックスさん無理はなさらないでください、数も少ないようですのでここは私にお任せを――」
レイリアはそういうが、ティレックスとしてはそういうわけにはいかなかった、レイリアさんが戦っているのに――
ところが――システムTとDの様子が何やら変だった。
「あら? なんだか様子が変ですね――」
システム・Tはシステム・Dのいる方へと近づいていった。そして、そのシステム・Dもシステム・Tの目の前に――
そして次の瞬間、システム・Tは胸部を思いっきり開くと、そこから無数の触手が飛び出し、システム・Dを取り込んだ!
「えぇっ!? ちょっとグロ過ぎませんか!?」
レイリアはそう言いながら手で口を塞いでいた。
「まさか、捕食!?」
ティレックスはそう言いながら驚いていた。
ティレックスの言う通り、システム・TはDを取り込み、そのまま自分の中へと吸収していった。
するとシステム・Tは異形の生物が無機質な機械のアーマーを着ているような様相へと変えていた。
「これが、このシステムの本性なのかもしれませんね――」
レイリアは改めて剣を構えながらそう言った。