ディスティアとスレアたちはそのまま上層を制圧、
そして、クラフォードのいるところまでやってきた。
「ようやく来たな。でも、その様子だと、帝都内はずいぶんと手薄だったって感じだな」
クラフォードがそう言うとスレアが訊いた。
「やっぱりそうなのか。ということは、軍本部のほうも手薄だったって感じか?」
クラフォードは頷いた。
「ああ、さっぱりだ。
敵がいるにはいるし、さっき上級兵ってのも打ち負かしたばっかしなんだが、
それにしても人が少なすぎる、何か企んでいるに違いない」
それに対してディスティアが訊いてきた。
「何か企んでいるといえば、
そういえば以前に古・ディスタード王国時代からの根強い支持があるっていう話題があったように記憶していますが、
その話ってどうなったのです?」
それに対してクラフォードが考えながら言った。
「そういえばそんなこと言ってたな、あくまで噂レベルの話でしかないとかなんとかいうやつな。
あの話の結論はいまだに出てなかった気がするぞ。
今回の作戦会議の中で話でもするのかと思っていたんだが、全然話題にすら上っていないから、
それこそ、本当にただの都市伝説なのかもしれないな。
確かに、俺も聞いたことはあるが、具体的にそれがどういう勢力なのかっていう情報は一切ないし、
そもそもあのディスタードに支援する勢力って考えると、いるのかどうかすら疑わしい気がするけどな」
ディスティアも考えながら言った。
「うーん、気にしても仕方がなさそうですね、とりあえずは目の前のことから片付けましょう」
すると、少し先に進んでいたスレアが、2人のところに慌てた様子でやってきた。
「なんだ? どうした?」
クラフォードが訊くとスレアは答えた。
「なんだか知らんが変なのがいるぞ!」
クラフォードは頷きながら言った。
「そういやシステム・DとTってのがいるんだっけな。
システムっていうぐらいだから、単体の敵ってわけではないのかもしれんな。
どうも厄介なシステムみたいだから早いところ片付けるぞ――」
そう言いながら進む3人、そして、その先には――
「マジかよ――」
クラフォードは絶句した。
そこには、異形の姿をした、人型のバケモノがいたのである。
「ディスタード本土軍お得意の禁忌を侵してできた存在ですか、これは厄介ですね――」
そして、そのバケモノ相手にイールアーズが激闘を繰り広げていた。
その傍らには2人のエクスフォスがうなだれていた。
「あの2人はノックアウト寸前か、数に入れてあげない方がよさそうだ。
ともかく、このままだとイールが危ない、加勢するぞ――」
スレアがそういうと3人は足早にイールアーズのところへと向かった。
「ちっ、この野郎! ナメたマネするんじゃねぇ!」
イールアーズはそう言いながら敵を退けていた。そして、3人の姿に気が付いた。
「んだよ、遅いじゃねえか。終わってから来るんじゃねえよ――」
だがしかし、敵は――
「残念だけどイール、これで終わりではないみたいだぞ――」
ディスティアがそういうと、バケモノの後ろからさらに似たような感じのバケモノが現れた!
「何っ!? もう一体!?」
スレアは驚くが、それだけではない。
「後ろにもか!?」
クラフォードは剣を構えながらそう言った。後ろにももう3体ほど現れた。
それに対し、イールアーズが説明した。
「こいつら、次から次へと湧いてきやがる。
だから最初は善戦していたそこの2人も今じゃあそのザマだ。
敵の能力こそそこまでとは言わないまでも、これで連戦となるとかなり面倒な感じの強さだ。
このまま戦い続けるのも得策じゃなさそうだから、こいつの発生源を突き止めないことにはじり貧だ。
だから、俺がこいつらを軍本部から出ないように食い止める間にお前らがそれを何とかしてくれ」
それに対してディスティアはイールアーズの隣に並びながら言った。
「相変わらず可愛げのない生意気なガキだな。
確かにそうすべきなのは山々だが、そんな状態のお前を見捨てていくわけにはいかんだろう?
そういうわけですからすみません、イールの言うように、お二方はそっちをお願いします。
私はイールと一緒にここで戦っていますので」
イールアーズが相手だと態度が変わるディスティア、彼の言うように、2人は行動に出た。
「ちっ、余計なことを――って言ったらまたあんたから説教を喰らい、
リオーンのやつから永遠と小言を言われるだけか。仕方ない、素直に従っておくか」
「本当に、お前は可愛げのない生意気なクソガキだな。
まあ、そんな減らず口が聞けるだけでもよしとしておこうか」
すると、ディスティアはリファリウスが作り上げた剣を引き抜いた。
それと同時にディスティアの目つきが変わり、その周囲にとてつもない気迫が――
「改めて言うことになりますが、流石にあの人の作ですね、市販の改造品とはいえ、これはかなりの大業物です。
ということですので、今度こそ本気出して使わせてもらいますね――」