エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

紡がれし軌跡 第3部 対決!ディスタード 第6章 連合軍の作戦

第183節 殺戮システム

 会議室でゆっくりとしていた5人、建物の外のほうから何やら大きな音が聞こえてきたので驚いていた。
「おっ、イールとディルのやつ、派手にやってんな。 そしたら次は、この混乱に乗じてクラウディアス軍が一気に上陸してくるわけだな、 まあ、段取り通りといえば段取り通りか――」
 クラフォードがそう言うと、レイリアは頷いた。
「うまい具合にいっていますね。 ですが、この本部にも何かあるような気がして、ちょっと心配ですね――」
 それに対してクラフォードは頭を抱えながら言った。
「何があってもあんたなら楽勝だろ?」
 どういうことだろう――ティレックスは首をかしげていた。
「まあ、クラフォード様ってば、つまりは私を守ってくださるのですね! やっぱりクラフォード様は素敵な方です!」
 だからなんでそうなるんだよと、クラフォードは頭を抱えながらそう思っていた。
 すると突然、先ほどのイールアーズのよりも大きな音が!
「今の音は何!? 砲撃――じゃないわよねぇ?」
 フロレンティーナがそう言うとフラウディアも顔を見合わせながら訊いていた。
「なっ、なんだったのでしょう――」
 クラフォードが答えた。
「いくつかの建物をかき切った音だな、帝都の外観を察するに、 恐らく何本もの鉄塔を倒している感じだと思うが―― 確か、万人斬りの技にそれができるような極意があったはずだ」
 ということはつまり、今度はディスティアの仕業のようだ。 そして、それに続いて金属を何度もたたくような軽い音がわずかに聞こえてきた、 いずれの音も、イールアーズやディスティアのものには遠く及ばない――
「……アーシェリスとフェリオースが張り合うつもりで負けじと技を放っている感じか。 あの2人がイールアーズやディスティアの腕に敵うまでには途方もない時間が必要そうだな」
 ティレックスはそう言って2人を皮肉っていた。
 そしたら今度は、少し遠めのほうから何かが飛んでくるような音がしてきた。 その音は次第に近づいてきて、建物の近くで大きな音をあげながら破裂した!
「こっ、今度は何です!?」
 フラウディアは驚きながら言うと、レイリアが言った。
「今のは魔法弾のようですので、勝者はエクスフォスさんでもなければシェトランドさんもなく、 クラウディアスの船ということになりそうですね。 ここまで来たら本土軍もほぼパニックに陥ると思いますので、私たちも早速行動しましょうか。」
 そういうと、4人は頷き、部屋から手早く脱出した。 そこには数多の兵士たちがあわただしく動いている様子が。
「これは相当パニックだな。とにかく、俺たちは中枢部へと急ぐぞ」
 クラフォードは背中の剣の柄を握りながらそう言った。 そして、フラウディアとフロレンティーナの2人の誘導で、5人は本部内を進んでいった。

 さらに進むと、5人ぐらいの兵士たちが行く手を阻んでいる様子が見えた、それは――
「やはり来たな、裏切り者めが――」
 そこには、今までの帝国の兵士とは雰囲気の違う上級の兵士らしき風貌の存在だった。
「こいつらは!?」
 クラフォードがそういうとフラウディアが答えた。
「幹部クラスの兵士です。通称”親衛隊”とも呼ばれる人たちです――」
 それに対し、兵士の1人が言う。
「この先はお前たちではどうにもなるまい、だから素直にあきらめるのだ。 そこの裏切り者には伝わるだろうから一応忠告しておくが――システム・DとTは作動された。 クラウディアスの援軍とやらも来るのだろうが、これですべて終わりだ。 そして、クラウディアスも次期に陥落するだろう、己の無力さを知るがいい!」
 システムDとTだって!? フラウディアとフロレンティーナは驚いていた。
「あれは未完成のハズでは!?」
 フロレンティーナがそういうと相手は答えた。
「戦闘能力については問題なく動作する、 ただの置物としておくぐらいなら動かした方がマシだというベイダ・ゲナ様のご判断よ!」
 フラウディアは訊いた。
「ということはつまり――ベイダ・ゲナはここにはいないってワケ!?」
「その通り! ベイダ・ゲナ様は今頃クラウディアスを破壊すべく向かっておられる最中だろう!  しかし、お前たちはそれを止められることなくここで果てるのだ! システム・DとTによってな!」
 それに対してクラフォードが訊いた。
「なるほど、システム・DとTによってということは――お前らは口ほどにもない連中ということだな?」
 そう言われた相手はなんだかむっとしていた。
「まあ、聞いての通りらしい。 そのシステム・DとTというのが何者なのかわからんが、その前にこいつらを除去しないことには始まらないということらしいな。 だけど、こんなところで時間を食っているのも馬鹿馬鹿しいから、 ここは俺に任せて4人でそのDとTとやらをなんとかしてもらえないだろうか?」
 クラフォードはさらに剣を引き抜いて言った。
「言うまでもないけど、俺はフローラさんとレイリアさんの能力を高く買っているからな、 何が来たって大丈夫なんじゃないかなと思ってる。 だから、こういう雑用な仕事は俺1人に任せておいてくれないか?」
 えっ、レイリアさんも? ティレックスは首をかしげていると、レイリアは答えた。
「クラフォード様に腕を認めてもらえるなんて光栄です!  そういうことなら、お言葉に甘えさせていただきますね!」
 そう言いながらレイリアは3人に目くばせしつつ、先に進もうとすると、
「おい、誰の許可を得て先に進もうとしているんだ?」
 と、1人の兵士が訊いてきた。すると、その問いに対してクラフォードが答えた。
「ああ、俺じゃないことは確かだな。 んなことより、通したくなければちゃんと見張っていた方がいいぞ、でないと――」
 でないと――なんと、4人はその場からいきなり姿を消していた!
「なっ!? どこへ消えた!?」
 兵士たちは慌てて周囲を見渡していた。 そこへクラフォードは前に一歩出ると、兵士たちはうろたえていた。
「消えちまったやつのことよりも目の前の強敵に対して集中しろ、逃がさないぞ、雑魚共め」
 クラフォードらしからぬこのセリフ、やはりどこかの誰かさんに触発されたセリフのようで、 その時のクラフォードの態度もどこかの誰かさんばりに得意げな様子だった。

 先に進む4人、ティレックスはレイリアに向かって訊いた。
「レイリアさんもミスト・スクリーンっていう魔法が使えるんですね!  姿をくらます魔法って意外と便利ですね!  だけど、使えるんだったら最初からこれを使ってここまでくればよかったような――」
 レイリアは答えた。
「天候魔法の一種ですから、その時の天候や風向きによっては効果が薄くなることが欠点ですね。 だからといってその効果を増幅すべく、さらに魔力を込めると今度は魔力の分厚い層ができてしまって魔力レーダーに引っかかりやすくなります。 ここに来るまでに使わなかったのは魔力レーダーを危惧してのことですが、 今は周囲がこんな状況ですから、レーダーにちょっとやそっと引っかかったところで影響はあまりないと思います。 ですから、今回は使いました。」
 すべては考えてのことということか、ティレックスは舌を丸めていた。すると――
「しっ! 何かいる!」
 フロレンティーナは注意を促した。そこには、ごつい体格の人影が――
「なんだこいつは!」
 ティレックスは驚いた。 そいつの身体は筋肉粒々で、血管のようなものが身体中から浮き上がっているような姿だった。 そして、恐らく、身長が2メートルほどありそうなほどの大男だった。
「システム・D”Destroyer”ですね――」
 なんと、こいつがそのシステム・Dだというのか!