3人は部屋から出てくると、そこにアール将軍こと、リファリウスとばったりと出会った。
それに対し、イールアーズとディスティアはさっきまで話題にしていた人物だったことから妙に驚いていたが、
それ以上に、クラフォードはひどく驚いていた。
「なんだよ、失礼な3人組だな、朝起きて、いきなり人の顔を見るなり驚くとは。
まあそれはともかく、キミらはすでに好きな武器を選んでもらっているようだから、
使い方をちゃんと教えておこうと思って、こうして来たわけだ。」
剣の使い方など今更――であるが、クラフォードもディスティアも前向きな態度で聞いた。
「で、こいつにはどんな特殊能力が秘められているんだ?」
クラフォードがそういうと、リファリウスは得意げな顔をしながら答えた。
「いいね、流石にわかっているね。
実は、武器ごとに種類の異なる特殊効果を埋め込んでいてね、急ピッチで用意したものだから、
何気にいろいろと間に合ってない……あっ、でも、質だけは保証するからそこだけは安心してほしい。」
質だけは保証――ヒュウガの言っていたことを思い出した2人だった、
この姉弟の性格上、この手のことに関してはこだわりが強いため、性能も申し分ないのだろうと思った。
「で、特殊能力ってなんだよ」
イールアーズはつっけんどんに言い返した、あまり期待していないような言い草である。
「簡単に言えば、埋め込んである”エーテルの属性が異なる”ということだよ。
で、それぞれの”エーテルの属性”ごとに得意な力を具現化するように作ってあるんだ。
とはいえ、今回はこれも新たな試みで、数を作る必要があったから、
市販品の流用という点では不満が残る作品にしかならなかったんだけれども、
埋め込んだ能力の部分に関しては100%品質を保証できるものになっているから安心してほしい。」
それはそうと、クラフォードは選んだ武器を突き出しながら訊いた。
「俺のはこれだ。
市販品の流用にしてはやたらと冴えた代物に見えるが、あんたのことだからそれはいいとしよう。
で、こいつにはどんな力があるんだって? 感じたところ、風属性の刀のようだが――」
ディスティアも剣を突き出しながら言った。
「私のは水属性で、イールのは土属性のようですが――」
するとリファリウスはそれぞれの剣に手を当てながら言った。
「さらに言うと、刻まれている魔法の印も違っているから、効果は同属性でもさらに数パターンがあるわけだ。
で、2人のは印の形もわかったことだし――」
そう言いながらリファリウスはイールアーズのほうに向き直ると、
イールアーズは「ほらよ」といいながら、渋々武器を突き出した。
それに対し、リファリウスは手を当てながら話を続けた。
「まずはイール君の武器から説明すると、まさに土属性って感じだね。
キミの属性適正は恐らく炎だから、併用するとかなり強力な技も放てるかもしれないな。」
そう言われたイールアーズは驚いた。
「は? 俺の属性適正は炎だと?
何を言ってるんだ、俺は魔法剣なぞ知らんし、ましてや魔法なんぞ使わん、何を言っている?」
リファリウスは首を振りながら言った。
「ま、全然修行が足りていないということだね、今度暇があったら相手してやろう。
それはともかく、土の力を利用して大掛かりな一撃を放てるようなものになっているはずだ、
イメージで言えば、まさしく”剛剣”といったところだろうか、
まあ、魔法を知らないキミに補足するとしたら、魔法なんてのはイメージみたいなもんだから、そういうもんだと思って使えばいいだろう。」
時間があまりない関係なのか、説明が妙に適当だと感じたクラフォードとディスティアだった。
リファリウスはクラフォードのほうへと向き直って言った。
「流石は目利きだね、一番いいものを選んだみたいだね。
もちろん他が悪いわけではない、風自身が私の得意属性だから、ただの贔屓目だよ。
で、肝心の効果なんだけど、実戦で剣を敵めがけて振ってみればわかるタイプのものだからすぐにわかるだろう。
そういう意味でも私のお気に入りの効果だ、いいのを選んだね♪」
なんとなく、どういう効果なのかがすぐに想像できたクラフォードだった。
「最後にディア様だけど――流石にシェトランド一の剣の達人と言われたソードマスターなだけあるね、
実戦で性能をいかんなく発揮するんだったらディフェンダー・ロールで立ち回るといい、そんな効果だ。」
それに対してディスティアは首をかしげていた、どんな効果だ、と。
でもまあ、それ以上言わないというところを見ると、
それは自分たちの腕をある程度信頼して言っていることなのかもしれないと考え直した。
「まあそういうワケで。認識が一致したところで私はこれで失礼するよ。」
それに対してイールアーズは遮りながら言った。
「待てよ、俺の属性適正については突っ込みがあったが、この2人はどうなんだ?」
するとリファリウスは答えた。
「もちろんあるよ。
それに、それぞれ自分の適性を把握しているみたいだから、別に何も言わなかっただけだよ。
まあ、そういうことだから、後は好きなように使ってくれればそれでいいよ。」
そう言いながらリファリウスはいずこかへと去っていった。
「なんだよソレ、本当にお前ら、自分の適性を把握してるのか?」
イールアーズはもんくを言いながらそう言うと、クラフォードがまず答えた。
「把握しているもなにも、俺はあいつから直接診断してもらったこともあるからな、
それもしかも複数属性タイプで、いずれも”やや得意”っていう程度のものらしいから、
お前みたいな一点集中タイプとは違っているもののようだな」
ディスティアも答えた。
「私も複数タイプですが、クラフォードさんほどの多数タイプではなく、その分だけ強適正になるようですね」
イールアーズは言い返した。
「じゃあ、俺やリファの場合は一点集中の超強適正ってところか?」
しかし、クラフォードは首を振った。
「リファは一点集中じゃない。簡単に言えば土属性が”まあまあ”でそれ以外は得意、
中でも風は超得意という、エレメンタルに愛されタイプだそうだ」
なんだそりゃ――イールアーズは頭を抱えていた。
「個人差によるものなので一概には言えないということなのでしょう。
まあ、そうでなければ、あの人はあれほど多数の属性を操ることなどできはしないでしょうしね――」
と、ディスティアは付け加えた。
確かに、”まあまあ”だとしても、その効果まで武器に付与できるのだから、それもそうだろう。