エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

紡がれし軌跡 第3部 対決!ディスタード 第6章 連合軍の作戦

第172節 ガレア軍の兵器

 そして、各々思い思いの場所で時間を潰すことにした。 その一方で、気になった一部の男性陣は執務室に向かうと、 入り口の受付機の前には女性の兵士2人が行く手をふさいでいた。 彼女らはその場所に椅子を置いて話し合っているようだった。
「えっ、立ち入り禁止?」
 ティレックスが驚きながらそう言うと、兵士2人は立ち上がって言った。
「すみません。何か用事がありましたか?」
 いつもなら気軽に入れそうな執務室、今回は特別なのだろうか。
「ま、いいじゃないのよ。 あの3人がいないのならこの私が代わりに相手をしてあげるわよ。 それで、目的はなに? 見学?」
 と、その場所の近くにある部屋の中からフロレンティーナが出てきて一団にそう訊いてきた。 それに対してティレックスは少し狼狽えたような様子で言った。
「あ、いや、なんていうか、やることがないからどうしようかと思って。 こういう状況だから、なんか落ち着かなくってさ――」
 フロレンティーナは言った。
「というか、あんたはユーシィのもとに行ってあげたほうがいいわね」
 そう言われたティレックス、気持ちはなんとなくわからなくもなかった。 そこでティレックスはユーシィのところに行くと言い残してその場を去っていった。
「それで、あんたたちはどうするの?」
 フロレンティーナはそう訊くと、クラフォードがイールアーズの様子を見ながら訊いた。
「今更ウォーミングアップってわけでもないんだが、せっかくだから汗流すのにちょうどいい場所でもないかなと思ってな」
 それに対してフロレンティーナは楽しそうに言った。
「それだったらちょうどいい仕事があるわよ、やってみない?」
「んだよ、雑用だったらお断りだぞ」
 イールアーズは突っぱねるように言い返した。

 フロレンティーナと、彼女と一緒にいたフラウディアは男性陣を連れてその現場にやってきた。 そこには――
「? 何を運んでいるんだ?」
 クラフォードがそう訊いた。 そこには多くの木箱を船へと運んでいるわずかな数の男性隊員の姿があったためである。
「運んでいるのは刀剣ですね。 本土合戦では強力なミサイル・ガード発生装置を展開する予定ですので、 昔ながらの剣と魔法による戦いがメインになるのだと思います」
 フラウディアがそう言うと、イールアーズは訊いた。
「強力なミサイル・ガードってそんなに効果あるのか?  つっても、例のクラウディアスのシステムとやらでもその恩恵があったじゃねーかって言われても、 そもそもそのミサイル・ガードのメカニズムがまったくわからんのだが。 まあ、俺的には敵の銃撃にそれほど対策せずに済むっていうのであればむしろ好都合だからなんでもいいんだけどな」
 クラフォードが答えた。
「クラウディアスでの戦いでも展開したっていうあれな、 敵も弾を打つのを控えるほどだったって話らしいな、弾がもったいないっていう理由からだろうか。 今回もそれを使うってんなら効果のほどは間違いないとみていいだろう」
 さらにディスティアが話をした。
「でも、今回使用するミサイル・ガードは一人一人にかかるバリアのようなものではなくフィールド全体に及ぼす効果ですから、 影響はこちらにもありますね。 イールもどこかで経験していると思うけど、剣で放った衝撃波の類も例外なく効果減衰の対象です。 以前は風の力で弾かれてしまうという結構単純な効果がメジャーでしたが、 今ではそれも複雑化して遠隔タイプの攻撃の推進力を弱めてしまうというものみたいですよ?」
 そこへフロレンティーナがさらに付け加えた。
「だから効果としてはエーテルの……つまり、魔法は効果の対象外、 遠隔攻撃をするのなら魔法でってことになりそうね」
 それに対してイールアーズが再び指摘。
「銃使わせるのはダメなのにどうして魔法使わせるのはいいことにするんだ?」
 フラウディアが答えた。
「幸いにして本土軍には魔法の高尚な使い手がいないからです。 こちらには魔法の強力な使い手がいるではないですか?  それを制限してまで相手の魔法を制限する必要はない、ということですよ」
 イールアーズは頷いた、そういうことか、と。
「で、俺たちがすべきことってのは、あの積み荷を船に運んでくれっていうことでいいのか?」
 イールアーズはさらに続けざまにそう言うと、フロレンティーナは楽しそうに言った。
「そのとおり、大正解♪  ちなみになんだけど、どれもアール将軍様が急ピッチで市販の刀剣に手を加えたものだから、 ちょっと特別な代物なのよ」
 それを聞いたクラフォードはすぐさま反応した。
「なっ、リファリウスの……改造品?」
 ディスティアも同じく反応していた。
「それは興味深いですね――」
 そして、クラフォードは考えながら言った。
「なあ、俺らが使ってもいいのか?」
「いいんじゃないの?  数も品も管理しているけれどもストックも余分に用意してあるし、 どれも具体的に誰が使うのかまでは指定もないから、自由に使っていいみたいよ?」
 フロレンティーナにそう言われると、ディスティアは動いた。
「そういうことなら俄然、手伝う気が出てきましたね、そういうことですのでお先にー」
「待てよ、抜け駆けすんじゃねえ」
 クラフォードも焦って手伝いに行った。
「あいつの武器ってそんなにいいものなのか?」
 イールアーズは首をかしげながら背後を見ると、じっと見ていたアーシェリスは悩んでいた。 それに対してフェリオースは言う。
「使いたいんなら使わせてもらえばいいじゃないか、素直じゃないなお前」
 アーシェリスの心境は複雑だった。