エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

紡がれし軌跡 第3部 対決!ディスタード 第6章 連合軍の作戦

第169節 ラブリズの聖地

 ラブリズの里へ行く途中――
「今更だけど、こんなに大勢で押しかけてよかったの?  里に行くのはともかく、特に泉の使用だなんて、プリズム族の聖地なんでしょ?」
 フィリスがそう言うと、ララーナは楽しそうに答えた。
「今回は特別です。私の権限で泉の使用許可を得ておりまして、 里の女性たちには使用を遠慮してもらうように言っています。 他所の種族の女性が使用するなど前代未聞ですが、 里に対する良い刺激にはなりますから――今後もこういうことがあってもいいでしょう」
 外界からの刺激――閉鎖的なプリズム族としてはなかなか前向きな考え方だった。

 ラブリズの里に到着すると、一行は早速”ラブリズの聖地”へと赴いていた。
「これがその”しろゆめの泉”というものですか、とても強い妖気を感じますね――」
 フェラルがそう言うと、フィリスも話をした。
「そして、強い癒しの力も感じるわね。つまりはこれがプリズム族の女の力ってわけか」
 深い森の中、泉と呼ばれるそこからはそこら中に白くて鈍く光るものが湧き出ていた。 それこそがまさにプリズム族の力なのである。ララーナは頷いた。
「そうです、ここは数多のプリズム族の女性が自らの能力を集中し、 そして能力を高めるための修行の場として使用しています。 みなさんもまた、ここで意識を集中し、泉の力を感じ取ってください。 もちろん、この泉の力に身を委ねてお休みいただくのもよいでしょう。 それではみなさん、思い思いにお過ごしください――」
 すると、フィリスはその場で座り込んでいた。
「ホントだ、すごい! これ、即行で眠れるわね!」
 そんな中、すでにしっかりと眠り込んでしまっているものがいた、それは――
「リリアさん、お疲れでしたのね――」
 リリアリスが、アリエーラの膝枕でぐっすりと眠り込んでしまっていた。
「リリアはいつもいつも無茶しすぎだからね、 今日こそはしっかりとお休みいただくべきね」
 フロレンティーナがそう言うと、何人かは苦笑いしていた。

 フェラルは泉の様子を見渡していた。彼女は神秘的な雰囲気の光景に圧倒されていた。
「それにしてもこんな世界があるなんて、とても素敵ですね!」
「ありがとうございます! 私たちの世界に共感いただけるなんて嬉しいです!」
 ララーナは嬉しそうに答えた。
 そして、フェラルはフラウディアが泉の中で意識を集中している様子を見ながら言った。
「フラウディアも妖魔になっちゃったってワケね。 でも、それが彼女が選んだ道だというのなら、それはそれで――」
 それに対し、ララーナが話をした。
「なんだか申し訳ないことをしたみたいです。 一応、彼女の希望でしたので、その願いをかなえただけにすぎませんが――こうなるとちょっと心苦しいですね――」
 それに対し、フェラルは首を横に振っていた。
「いえいえ、そんなことはありませんよ。思い返すとフラウディアは、昔から女の子みたいな子でした。 つまり彼女は、こうなるべくしてなったのかもしれません。だから私は、今の彼女を応援してあげたいですね」
 ララーナは頷いた。
「お子さんの意思を尊重されているんですね!」
 フェラルは首を横に振ってこたえた。
「いえいえ、フラウディアは私の子じゃあありません、私の子が産んだ子ですから、私の孫ですね。 私の子はフラウディアが帝国軍に取られてから直ぐに亡くなってしまいましたが――」
「そうだったのですね。 それにしても、白銀の貴公子様ですか、私はそういったのには疎い方なのであまりよくはわかりません。 ですが、同じ精霊族の女性として、子を持つ親として、自分の子や孫が奪われた時の寂しさについてはわかる気がします。 私も、シェルシェルを奪われた時のことを考えると――いたたまれなくなることでしょう。 しかし、私にはプリズム族の長としての責任がありますから、落ち込むわけにはいかないでしょうね――」
 フェラルは頷いた。
「あなたも私も相手が自分よりもはるかに寿命の短いヒューマノイド系人種ですから、 最後は子供だけが生きがいなんですよね。 そして、それを取られた時の絶望ときたら――」
 それをララーナが遮るように言った。
「私たちは家族のようなものではないですか? 御覧くださいな、この光景を――」
 彼女らの周囲には、マダム・ダルジャンでやってきた女性陣が思い思いに過ごしていた。 そして、ララーナは続けた。
「特にリリアリスには大変お世話になっております。 私よりもまだまだお若いのに、他の女の子たちの面倒をよく見ています。 あの娘、不思議でしょう? どうしてそんなに他人のことを見ていられるのでしょうか、私はずっとそれを考えていました。 でも――その答えはすぐに見えたようです――」
 フェラルは頷いた。
「船の上でも話をしていましたね。 彼女には人を引き付ける魅力があります、本人は自覚していないみたいですが、 あの面倒見の良さが、彼女を放っておくことができない原因を作っているようですね。 そして、その面倒見の良さは――彼女自身が大変な宿命を背負っているからなのでしょう」
 ララーナも頷いた。
「やはり、あなたの目からもそう見えますか。 ええ、私もそうだと考えています、もっというと、それは彼女の過去にあった出来事に起因するものだと思います。 そのせいで、誰も失ってほしくはないということの表れでもあるのでしょう。 普通はそれで挫折し、絶望し、そして自暴自棄になるようなものですが、 彼女の場合は違います、絶対に諦めない心を持っているようですね」
 そして、お互いに顔を合わせると、ララーナから話をした。
「私たちもまだまだすべきことがありそうですね。彼女を見習って、自分のやれることを探す必要がありますね!」
「そうですね! お互い、すでに子供を産んでいるような間柄ですが、隠居するにはまだまだ早いということですか」
 こうして、ララーナとフェラルは意気投合していたのである。