リリアリスに言われたまま2人は城の外のほうへと向かっていった。
その間、フェリオースはティレックスに訊きたいことがあった。
「集まるのか? アルディアスだけで?」
ティレックスは答えた。
「実は、アルディアスは今の体制になってからたびたびリモートで会議はするんだけれども、
実際に会ったことってないんだよな。だから、後で大使館に行って顔合わせをしてくるんだよ。
なんなら一緒に来るか? そんなに大仰な催しでもなければ重要な会議をする予定もないからな――」
うーん、どうするか――フェリオースはとりあえず、一旦考えておくことにした。
そして、城門を抜けると、そこには大勢の人だかりがあった。
「クラウディアスの呼びかけに応じた人が大勢来ているのか、各国のVIPだけでなく、その関係者もだもんな。
こんなに賑わっている様を見るのは俺も初めてだな」
ティレックスはそう言うと、フェリオースも頷いた。
「確かに、エネアルドでもここまでの光景はないな。
にしても世界中の要人たちの集まる国ってのは流石はクラウディアスと言ったところだな。
クラウディアスって国は本当は昔からそうだったんだろ、あくまでラシルとかから聞いた話でしかないんだが――」
ティレックスは頷いた。
「ああ、そうらしい。言ってもラシル自身も別にそういう光景を見て育ってきたわけでもないみたいだから――
今回のこれがまさに初めて見る光景になるんだろうなきっと――」
と、2人が話していると、話題の人物であるラシルが近くにいた。ラシルと一緒にアーシェリスとスレアがいた。
「お前、どこに行ってたんだよ!」
アーシェリスがフェリオースに向かってそういうと、フェリオースは軽く悪びれた態度で応えた。
「悪い悪い、でも、ちょっと面白い光景が見れたからな――」
面白い光景とは? アーシェリス達はフェリオースに訊いた。
「さっき、ここを通った一団見なかったか?」
フェリオースはそう言うと、アーシェリス達はその一団を見たと言った。
それについて、フェリオースとティレックスは話をした。
「キラルディア帝国!? まさか、あの国の一団だったのか!?」
と、スレアはそう言った。
えっ、キラルディアって帝国なのか、フェリオースとティレックスはそう訊き返すと、スレアは答えた。
「帝国と言ってもどこぞの嫌われ帝国と違ってずいぶん真っ当な国家なんだがな、どことはあえて言わないが……。
帝国というから皇帝が国家元首のハズなんだが、あの国には長らく皇帝に座するものがおらず、
最後の皇帝の座を担った覇王キラルディア18世が最後なんだそうだ。
以来、覇王キラルディアこそが永世皇帝として君臨していて、
それ以後はあの国の実権を握るものは”大総統”と呼ばれるものが担っているんだそうだ」
それにしてもスレアは何でも知っているなと思った一同である。
そうか、それで大総統がうんぬんかんぬんと言っていたのか、フェリオースとティレックスはヴェラルドの言葉を思い返していた。
「にしても、あのレイリアさんがそのキラルディアの人だったとは――」
アーシェリスがそう言うと、スレアは意地悪そうに訊き返した。
「そういえばお前、あの人のことをずっと見てただろ?
確かにあの人、美人だもんな。お前が見惚れるのも無理もない」
そう言うと、アーシェリスは全力で否定した。
「違うって! そうじゃなくて、なんというか、どっかで見たことがあるような気がしてな――」
それに対し、フェリオースも意地悪く言った。
「へぇ、どっかで見たことがある綺麗な女の人か! お前も隅に置けないやつだな!」
「だから違うってば!」
そのままお昼ご飯を取るということで、男たちは適当にご飯を食べた後、
ティレックスが先ほど言っていたアルディアスの集会へと参加すべく、アクアレアのアルディアス大使館へとやってきた。
すると、そこには既に先客がいた。
「あれ? ユーシィとフラウディアさん、それからエミーリア姫とレミーネアさんもいたのか」
ティレックスがそう言うと、ユーシェリアは言った。
「せっかくだからね! そもそもこの集まりって別に大した集まりじゃあないんでしょ?」
別に大した集まりじゃないってはっきりというその物腰……それに対し、ティレックスは言った。
「でもさ、エミーリア姫とレミーネアさんがいるのは流石に――。お前も知ってるだろ?
アルディアスの連中、みんなクラウディアスさん――というかクラウディアス様によいしょしたがる連中ばっかしだし――」
それに対し、フラウディアが答えた。
「その考え方を改めようというのが今回の集まりの狙いですよ!
エミーリアさんもレミーネアさんも、普通の女の子です!
だから、よいしょするんじゃなくて、もっとフレンドリーに接してくださいねっていうのが狙いなんですよ!」
果たして、その目論見はうまくいくのだろうか――ティレックスとしては不安でならない。
一方、クラウディアス城の一室で会議をしていたクラウディアスの重鎮3人とキラルディア組と、そしてクラフォード、
互いに握手を交わしていたのだが、クラフォードは何故かずっと頭を抱えていたままだった。
「なるほど、レイリアが言うのならティルアもいい国なんだろうね!
じゃあ、今回の件が終わったらティルアにも行ってみないことには!」
そう言うヴェラルドに対してレイリアが言う。
「その前にルシルメアとルーティスが先ですわ。
そして、もちろんそれよりも先に、これから始まる会議で私たちのことを知ってもらう必要がありますね――」
「確かに、それが先のようだね。しかし、それにしても――」
ヴェラルドは態度を改めてリリアリスとアリエーラに向かって言った。
「あなたのようなとても美しい女性はそうはいませんよ――」
それに対し、アリエーラは全力で否定しながら言った。
「そんなこと! ここにいるレイリアさんのほうこそ、とてもお綺麗な女性ではありませんか!」
それにはレイリアも反論した。
「なっ、何をおっしゃるのです? 私なんてそんな、アリエーラさんにはかないませんよ!」
その話でクラフォードはさらに頭を抱えながら言った。
「なんだよこの茶番は――」
それをシャナンが諭していた。すると、ヴェラルドはクラフォードに向かって言った。
「では、こうしようか? キミにレイリアさんを預けることにしよう!」
それに対し、クラフォードは耳を疑いながら驚いていた。それに、レイリアが反応した。
「あら、私をクラフォード様のもとに、ですか?」
ヴェラルドは頷きながら言った。
「そうとも! 彼はどうやらキミのことが気になって気になって仕方がないらしい。
だから、今後のことも考えて、キミらは一緒にいることがベストだと考えたのだ、如何かな?」
それに対し、クラフォードが何かを言おうとするよりも先にレイリアが猫なで声ですぐさま答えた。
「まあ、クラフォード様ったら、私のことがそんなに気になるのですね?
でしたらこのレイリア、クラフォード様のためでしたら何なりと致しますわ――」
クラフォードはパニックになっていた。さらに、ヴェラルド追い打ちをかけるように言った。
「彼女はとても美人だが妖魔の類でもあるんだ。つまり、男を幸せにする能力があるんだよ。
どうやらキミはレイリアに気に入られているようだし、よかったじゃあないか!」
何がいいんだ、クラフォードはパニックを通り越して、もはや何をどうしていいのか判断ができなかった。
「うふふっ、クラフォード様、どうぞ、よろしくお願いいたしますわ――」
レイリアは丁寧な物腰でそう言うと、クラフォードは改めて頭を抱えていた。
その後、ティレックスたちとクラフォードたちはクラウディアス城の横庭でばったりと出会った。
ティレックスらは例の男性陣と女性陣で構成されており、クラフォードのほうはレイリアとアリエーラ、
そして、リリアリスも一緒だった。
「あれ? レイリアさん? さっきのキラルディア組はどこへ?」
ティレックスはそう訊くと、レイリアは答えた。
「ヴァドス様に連れられてクラウディアス内を見学に行っております。
私は、とりあえずクラフォードさん方について回るよう指示されましたので、
しばらくはみなさんと行動することといたしますね!」
それに対し、クラフォードは鼻で笑うような反応をしていた。
それが気になったティレックスは訊いたが、クラフォードは何でもないと答えた。
だが、それが返って気になるわけで――
「何を気にしているのよ?
クラフォード、あんたも訳の分からないこと言わないの、わかった?」
その場はリリアリスにそう一蹴されてしまった。
そうこうしているうちに、午後の会議の時間が差し迫ってきていたので、
一行は再び例の会議場へと足を運んでいた。既に何人かがその場へとついていた。
午前の会議とは違い、今度はキラルディア帝国の面々が付いていて、議場は驚いていた。
もちろん、何故彼らがいるのかについて問われることとなったが、
それについてはクラウディアス側とルーティス側から改めて説明をすることとなり、
今後のディスタード本土軍包囲網のための会議が改めて行われることとなった。
なお、キラルディアの到着については予定より早かったらしく、
今回の会議への参加についても元々予定になく、後日改めての催しをするつもりだったのだが、
せっかく到着したので、この際同時に紹介する運びとなったようだ。