さらに、ディスタード帝国・王国派と銘打って存在しているガレア軍とヘルメイズ軍が登場した。
まずはヘルメイズ軍よりグラント副将軍と側近であるメイローザ隊のリーダーであるベルメイアが現れた。
どちらも戦闘服だが、グラントは王国騎士由来の軽鎧姿、ベルメイアも例によって王国騎士由来の服装のため、正装という扱いでいいだろう。
「あれが噂のヘルメイズ軍か? また”副”将軍なんだな」
アーシェリスはそう言うと、やっぱりスレアが説明した。
「というより、むしろ、今もまだグレスト将軍が生きているというのに驚きだ。
グレストは旧王国時代の騎士団の一員でもあるからな。ほら、見てみるんだ――」
ベルメイアの後にフェラルが軽鎧の上にローブ姿で入ってきた。
「あれ、あの人そう言えばクラウディアス軍に交じってシャナンさんと一緒にアクアレア・ゲートを死守していた人だな、
ヘルメイズ軍の人だったのか?」
スレアが首を横に振って答えた。
「違う、あの人はディスタード旧王国騎士団のOGで帝国軍には一切関わっていないらしい。
俺はあまりよくわからないんだが、白銀の貴公子って呼ばれた名うての騎士らしいぞ」
「女の人なのに貴公子?」
フェリオースは驚きながらそう言うと、スレアはいろいろと複雑な事情があるらしいと言って話を切った。
続いて、ガレア軍の面々が登場した。まず現れたのはアール将軍とルヴァイス副将軍である。
アール将軍はロングなローブマント、ルヴァイスは軽鎧がそれぞれ正装らしい。
ただ――
「あれ!? どうなっているんだ!? なんでアールがいるんだ!?」
と、アーシェリスが言った。確かに、正体であるリファリウスはルシルメア側にもリヴァストとして登場している。
そのため、何がなんだかわけがわからなかった。
すると、スレアが気が付いた。
「なるほど、そう言うことか。
よく見てみろ、リヴァストのほうが小顔だ、だからあっちが替え玉だろう」
というが、アーシェリスは考えながら言った。
「えっ、そうか? というより、リファリウスって割と小顔な印象なんだが」
さらにフェリオースは言った。
「てか、それだったらアール将軍のほうも小顔だと思うんだが。
見ろよ、隣のルヴァイスの顔に比べて全然大きさが違うだろ?」
確かに、そう言われると、アールの顔もリヴァストの顔と同じぐらいであり、
スレアの思い過ごしだったようで、結局、どっちが本人なのか識別できなかった。
「変装術だかなんだか知らんが、とにかく反則臭い能力だな――」
スレアはそう言い捨てた。いずれにせよ、どちらかが替え玉であることは間違いないのである。
そして、アール将軍とルヴァイス副将軍に続いてラミキュリアとエイジが入場した。
ラミキュリアはいつもの露出の高い恰好ではなく、ビジネスフォーマルな服装で身を包んでいたが、
それでもやはり色気があるのは種族的な特性からだろうか。
一方でエイジはいつものラフで中性的な服装でリラックスした様子で臨んでいた。
最後に議長の登場である。
議長はクラウディアス側で用意することになっているのだが、今回はレイリアという人物に白羽の矢を立てたのだという。
彼女はビジネスカジュアルだかデート服だか、そのぐらいの可愛らしい服装で身を包んでいた。
「誰、あの人?」
アーシェリスはそう言うが、スレアは――
「さあな、いつの間にかあの人に決まっていた。俺もよくは知らん」
「クラウディアスで用意した人なんだろ? 議員とかじゃないのか?」
フェリオースはそう聞くが、スレアは答えた。
「少なくともクラウディアス議員ではないな、あんな人はいなかったハズだ。
とはいえ、リリアさんやアリエーラさんが選んだ人らしいから、そこは信用していいんじゃないのか?」
それでも彼女が何者なのか疑問は尽きない。
各国からの来訪者を含む多くの人たちが見守る中、各国の国家元首あるいはその代理の者と議長レイリアも着席、
そして、各々が落ち着いたところで話は始まった。
最初に口を開けたのはルーティスのナミス市長、発言は挙手をしてから行われた。
「まず最初にはっきりとさせておきたいのですが、この場にディスタード帝国の王国派がいるということは、
現帝国軍の皇帝と本土軍とは決別するという意思表示であると受け止めてよろしいということでしょうか?」
それについて、アール将軍がまず手を上げて発言した。
「そもそも私共の中ではディスタード帝国がどうのという考え方はありません。
我々としてはあくまでガレアであり、ディスタード本土軍とは関係ありません。
もちろん、ディスタード帝国・王国派というとおり、ガレアの意思はディスタード王国の意思に従います。
詳しい話についてはルーティスさんはもちろん、みなさんとも認識を合わせたとおりと思いますので、
この場では割愛させていただきますが、よろしいでしょうか?」
それに対し、ナミスが答えた。
「ガレアさんはすでにみなさんとも認識を合わせていたのですね、それなら言うことございません。
対して、ヘルメイズさんはどうでしょうか?」
すると、ヘルメイズの副将軍・グレストが着席する際に外した懐の剣を鞘に納めたまま前に突き出した。
そして、それと同時にベルメイアもフェラルも同じように剣を突き出した。
「我々はディスタード王国の騎士でございます。
そのため、ディスタード帝国とはそもそも考え方が異なります。
陛下を亡き者にした帝国軍とは敵対することも辞さない所存にございます」
副将軍のグレストは勇ましくそう言うと、ヘルメイズの面々はそろって着席した。
そして、それについて、レイリアが話をまとめていた。
「ガレアはガレアとして既に各国と連携を行っており、
そして体制としてはかつての王国の指針通りであるヘルメイズとも強調していく体制を取る。
ヘルメイズもかつての王国の指針通り各国とは協調した体制を取る。
ディスタード帝国・王国派のその考え方に対して賛同いただける方は拍手をお願いいたします!」
レイリアはそう言うと、会場中は拍手が巻き起こった。
「賛成多数のようですので、この件については承認とさせていただきます!
それでは、次の議題に移らせていただきます!」